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2012/04/25

たまには好きな音楽の話しでも。

ぼくごときがマイルスのことを語るのは、ほんとにほんとに、100年早いとは思いつつ…。

さて。

一番好きなトランペッターは誰ですか? と訊ねられたら、ぼくは迷わず「マイルス」と答えます。

ちなみに、トランペットが上手い人になればなるほど、もっとも好きなトランペッターは誰かと訊かれて、「マイルス」と答える人は少ないと思われます。

マイルスがすごいのは言わずもがなで、それをいの一番に挙げてしまうことはちょっと恥ずかしい、という風潮があるように感じています。トランペット吹きの中では。

とにかく誰の目から見てもマイルスは、トランペッターとして、ジャズマンとして、音楽家として、人間として別格です。

例えばこんな話しもあります(急に、ローカルな話しになるのですが…)。

大学のジャズ研に所属しているころ、同級生のトランペッターが、マイルスのソロをコピーしていました。

それを見た(聴いた)先輩は即座に言いました。

「お前はバカか。マイルスをコピーしてどうする。マイルスはマイルスで、マイルスがやるからマイルスなんだ。お前がやっても意味ないだろ」

ジャズ研生にとってコピーは基本です。先輩には常に、もっといろんなフレーズをコピーしてこい、と口を酸っぱくして言われます。しかし、マイルスをコピーすることだけは、ナンセンスなんですね。

この理由をちょっと深追いしますと。

マイルスのフレーズには、難易度の高いフレーズももちろんたくさんありますが、難易度よりも歌心に妙がある場合が多く(こう言ってしまうと薄っぺらいんですが…)、技術的なお手本的ではない場合も多いんです。

さてさて。

ぼくがマイルスをもっとも好きな理由は、『常に新しいことをやっていた』というところがまず第一。

第二には、『じーさんになってもカッコ良かった』から。

子供みたいな理由でお恥ずかしいです。

しかし、この2つの理由には、マイルスのすごさがすべて含まれていると思っています。

なので、ぼくは晩年のマイルスがもっとも好きです。

どの時代のマイルスも好きですよ。もちろん。

しかし、晩年以前のマイルスの音楽は、すべてマイルス自身が決別してきた音楽です。同じ事はもうやらなくていい、と考えられた過去の音楽です。

なので、最後のほうのマイルスがもっとも好きなんです。

何かあったら聴いてしまうアルバムは『You’re Under Arrest』(1985年)。

マイルスが亡くなったのは、このアルバムが発表された約6年後。それまでの間にも、4枚のアルバム(ライブ盤を除いて)が発表されていますが、このアルバムには、その後マイルスがライブで演奏し続けた「ヒューマン・ネイチャー」と「タイム・アフター・タイム」が収録されているからです。

この2曲は、前者がマイケル・ジャクソン、後者がシンディ・ローパーのヒットチューンです。

この2曲でのマイルスのラッパは特に、ほんと、ぼくの心に染みちゃいます…。

すごくベタベタな、何のひねりも何の発見もない、当たり前なマイルス論でした…。

そんなこんなで今日もぼくは、ラッパを吹いて暮らしています。

2012/04/25 10:59 | ohta | No Comments