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ぼくのコラムタイトルの下の説明に、「〜市民オーケストラまで幅広く参加〜」とありますので、今回はその「市民オーケストラ」がどのようなものなのか、ということを説明させていただきたいと思います。
そのオーケストラとは『即興』市民オーケストラなんですよ。
プロ・アマ混合のオーケストラで(大半がアマです)、アマは一般公募で集められています(ぼくも一般公募で参加させていただいております)。
一般公募に関しては、演奏のキャリアはまったく不問。音が出せればそれでいい、のです。
どのような楽器でもOKです(PA設備を必要とするものだけは不可)。極端な話し、鍋やフライパンでもいいのです。実際、いらっしゃいます。
もちろん譜面はありません。指揮者の方が数種類の合図を出します。その合図に従って、メンバーがある程度自由に音を出します。
一体、これで音楽が成立するのでしょうか…。
成立するんですよね。
以下は、ぼくなりの解釈です(主宰する方の意図とは違う可能性もあることをお断りさせていただいて…)。
これは、ジャンルで言えと言われるならば、フリージャズです。
指揮者が「フリージャズ奏者」、そしてオーケストラが指揮者にとっての「楽器」として機能します。
キモは、「楽器からどんな音が出てくるか、奏者をしても分からない」というところだと思います。
通常のフリージャスでしたら、その瞬間に発せられる音は、あくまで演奏者の意志による音であり、演奏者によってコントロールされている音、だとも言えますが、この「即興市民オーケストラ」においては、流れはコントロールされていても、瞬間瞬間の音そのものは、誰にもコントロールされていないのです。
ある意味、究極のフリージャズなのではないでしょうか。
せっかくなので、指揮者が出す「サイン」とはどのようなものなのか、軽く説明させていただきますね。
●人差し指を示して腕を振り下ろすときには、短音を(合図の度に音程を変える)。
●手の平を広げて腕を振り下ろすときには、長音(ロングトーン)を(合図の度に音程を変える)。
●グーのときは、好き勝手に(激しく)。
●指を4本出して腕を振り下ろすときには、Cのコードの構成音(ド、ミ、ソのいずれか)を長音で。
まずはこれが基本合図です。さらに、
●両手を合掌して、その手を広げていくに従ってそれまでやっていたことを崩していき、手を近づけていったら崩した演奏を元に戻していく。
●3本指を出して振り下ろしたときには、簡単なリズムパターンやフレーズを演奏(この場合は、まず人を指さして、さされた人だけが行う場合がほとんどです)。
さらには「それを真似しなさい」という合図、「いまやっているフレーズをキープしなさい」という合図、「音を出している人は出すのをやめ、出していない人は音を出す」という合図、あと「指さされた人だけが音を出す」という合図、大体、こんな感じです(あと、「メモリー」という合図もあります)。
もう一つのキモは、大人数であること、だと思います。ぼくはこれまで計5回参加させていただいていますが、最大の回では、200名を超えていたと思われます。
人数が多いほど、どんな音が出て来るのかが分からなくなり、かつ、量のパワーが増大するわけです。とは言っても100人を割るようなときには、大人数のときよりは個々に任す部分が大きくなり(ある程度の人数で同時にソロをとらせたりして)、それによる混沌が生まれ、それはそれでスリリングになります)。
とりあえず、これを観ていただけると一目瞭然です(最初からこれを出せばよかったんですが…)。
この映像は、昨年の8月15日に、福島市内で行われた、『プロジェクトFUKUSHIMA!』というイベントでの演奏です。
(このイベントが何なのかは、このリンクを参照してください)
ちなみにこの映像では、オーケストラメンバーと観客が一体化していますので、ちょっと分かりづらい部分もあるのですが…(演奏者と観客の境目がなく、オーケストラ自体の規模というか全体像が見えにくいんです)。
このオーケストラを主宰しているのは、音楽家の大友良英さん。
ちなみに、大友良英さんとは、NHKの「胡桃の部屋」をはじめ多くのテレビドラマや映画音楽などを作曲されていらっしゃる作曲家です。そしてかつ、『即興』が得意分野の演奏家でいらっしゃいます。
ちなみに、このオーケストラで用いられているサインのかずかずは、フリージャズミュージシャンがもう結構前に編み出した方法論のようで、それを市民オーケストラでやってしまおう、というのは、大友さんのアイデアによるものだと思われます。
大勢で、そのときにしか起こらない音を造る、というのは、演っているほうにとってもとてもスリリングで、かつ、一体感を感じられ感動的ですらあります。
昨日(3月20日)は荒川の河川敷でこのオーケストラが披露され、ぼくも参加させていただきました(昨日のオーケストラは、「オーケストラFUKUSHIMA!」ではなく、「千住フライングオーケストラ地上部隊」。詳しくはこちらを)。
ということで、淡々としてしまいましたが、こんな音楽もあるということを紹介させていただきました(なんかすごく中途半端なようにも思いつつ…。今回はとりあえずのご紹介ということで…)
そんなこんなで、今日もぼくは、ラッパを吹いて暮らしております。