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2012/02/28

私の好きなアーティストのなかで、ミシェル・シオンという方がいる。1947年フランスのクレイユ生まれ。批評家、研究者であるとともに、ミュージック・コンクレートの作曲家であり、映画やヴィデオの作家(監督)。パリ第三大学で教鞭もとっている。著作活動は、本書のような映画と音・音楽との関係を考察したものから、映画作家のモノグラフィ、ミュージック・コンクレート関連、交響詩や交響曲についての論考までと実に幅広い。著書に『映画における声』(1982)、『エレクトロアコースティック・ミュージック』(1982)、『映画にとって音とはなにか』(1985、邦訳 勁草書房)、『ジャック・タチ』(1987)、『穴のあいたスクリーン――映画における話し言葉』(1988)、『オーディオヴィジョン――映画における音と映像』(1990)、『デイヴィッド・リンチ』(1992)、『音楽・メディア・テクノロジー』(1994)、『ロマン派の交響曲――ベートーヴェンからマーラーまで』(1994)など多数。

 

ミシェル・シオンに会いに行った。3年前だっただろうか。横浜にミシェル・シオン来日!という言葉をネットで見つけ、一番乗りといわんばかりに一番前の席に座ってその時を待った。場内は暗く客席の後ろと横に幾つかのスピーカーが並び、小型のアクースモニウムのようだった。私はミシェルさんの音楽を聴きに行ったのだが、今覚えていることはその音楽を聴いたときに見えた映像しか覚えていない。音楽を聴きに行ったのに大変失礼な話だと分かっているが、本当に音楽を聴いたときにみた頭の中の映像しか覚えていないのだ。それと声。何かの言葉。私は言葉と音楽に大変興味がある。なのに不思議なもので映像だけが見えてしまって仕方がないのだ。あの音楽は物語だ。ミュージックコンクレート/アクースマティック。すごいなぁ。そればかり。終わった後も目を閉じたまま物語の中から、なかなか覚めずにいた自分がいた。

ミシェルさんのインタビューも興味深いものが多々あった。もっと話してほしい、もっと音楽を聴かせてほしいと思ったけど、目の前でミシェルさんの話と音楽が聴けて本当によかった。やはり、音楽はライブにかぎる。ただしライブといってもアクースマティック・アートの場合、アクースモニウムという多数のスピーカーを使って音を操り聴くのが一番、いい。目を閉じてじっと音を聴いてみよう。あなたにはどんな映像が見えただろうか。

2012/02/28 06:08 | shiho | No Comments