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2012/02/20

JunkStageをお読みの皆さん、こんばんは。
先日、2011年のJunkStageアワードが発表になりましたが、ご覧になって頂けましたでしょうか?(まだの方は是非こちらからチェックしてみてください!)
本日はこちらの受賞者の中から、一人の稀有な物語作家の方を紹介します。

■vol.7 物語作家・細川亮さん

――ブロックをジッと見ていると、どうも家に見えてきて仕方ないんです。
  以後、様々な物を見ては、これは小さい人ならこう使うんじゃないか?
  こんな事もできるか!ってな感じで毎日を過ごしています。(細川亮)

26歳から絵を描き始める。オリジナルのイラストに物語をつけた創作作品「小さい人シリーズ」を連載公開。
http://www.junkstage.com/hosokawa/

 

 

*  *  *

こちらに掲げたイラストには小さい人がわらわらっと出てくる場面が描かれていますが、これ、どこから出てきているかお分かりになりますでしょうか?
なんと、描かれているのはコンテナに作られた小さい人たちのための町役場なのです。

細川さんの手掛ける「小さい人」シリーズには、こうした小さな人たちの暮らしや時には冒険譚が丹念に丹念に描かれています。
主人公の「私」も当然、小さい人。
画家志望の吉田さんの絵から逃げ出して住所不定となり、スポンジの家にときめき、ティッシュ箱の高層マンションの住人に驚愕し、杓子のお風呂に入ったりしながら旅を続けています。その間にも匂い調査団の一行と遭遇したり、素敵な老夫婦に脅かされたり、プラスチックカップの糊の池にはまってしまった人を救助したり。それだけでなく毛糸の家に住む小林さんと交流を深めたりと、「私」の周囲にはたくさんのドキドキが溢れているのです。

もちろん、この物語の魅力は物語だけではありません。
細密画のように緻密に描かれた小さな人たちの世界。丁寧に塗られた色彩やそこに佇む小さな人たちの姿は驚嘆の一言。
今年、細川さんから頂いた年賀状もものすごくきれいな手書きイラストが添えられていて、元旦から「すげえ!」と感動させていただきました。
このイラストは物語と勿論一体であるものであるわけですが、それをずっと、定期的に描き続ける、というのはよほどの情熱と愛がなければ続かないのではないでしょうか。

この連載に登場する「私」のドキドキは、読むわたしのドキドキでもあります。
まるで子守唄のようにどこかノスタルジックで温かい、細川さんの世界は眠れない夜にひっそり楽しむのに最適な物語です。

*  *  *

 

先に引用したとおり、細川さんは26歳のときに、本格的に絵と物語創作を始めました。
イラストも物語も書くというのは一見簡単そうに思えるかもしれませんが、それを隔週で続けるとなるとほとんど驚異的なことだとお分かり頂けるのではないでしょうか。
しかも細川さん曰く、物語を付けるのは苦手なのだとか。
だからこそ、「私」の旅は続いているのでしょうし、その一つ一つが丁寧で愛にあふれたものなのかもしれません。

細川さんはメールでよく、「読んで頂けるように頑張ります!」と仰います。
もっと読んでほしい、とストレートに。それに返す言葉は、わたしたちの力不足ですいません、という言葉です。だってこれは沢山の方に読まれるべき物語であると思うからです。

煽情的な情景も言葉もなしに、淡々と紡がれる細川さんの物語世界。
眠れなくて寂しい時に、寒くて凍えそうな夜に、ホットミルクみたいなこのコラムを是非読んで頂けたらと思います。
緻密なのに温かい色合いと「私」たちの過ごし方が、読むものをほっとさせる、このシリーズはそんなぽかぽかしたお日様のような連載なのです。

2012/02/20 12:04 | sp | No Comments