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ぼくが『多摩川園』駅のある街に住んでいたのは、大学を出てからの約2年半。
丸子橋のたもと近くで、毎晩、ラッパの練習をしていました。雨の日は、橋の下で練習をしました。できることなら、橋から外れたところで練習をしたかったんですけど。
橋の下は、まるでお風呂場で練習しているかのように音が響きます。これは練習環境としては望ましくない状態です。自分の音を客観的に聴くことができませんから。
河原は面白いですよ。時間帯によって、いろんな人が、何かしらの練習に訪れます。
夕方は吹奏楽部とおぼしき中・高生。夜が深まってくるとジャズマン。日付けが変わるころにはヘビメタのボーカリスト。そして明け方は浪曲を練習されるご老人…。
ヘビメタの兄ちゃんとかち合うと、げんなりしたものです。
彼は、橋の下で練習するのが好みのようで…。奇声がうるさい…。
さて。
前回のお話の続きです。
密かに(あからさまに?)恋心を抱いていた、小柄で、賢く、突っ込みがするどく、そしてつれない彼女とのその後です。
ぼくの風呂なしアパートでの、なぜかK谷くんも交えての食事会から数日経ったある日、普段はなかなか鳴ることのなかった部屋の電話が、またも唐突に鳴りました。
ガチャ「はい、おーたです」
「あ、おーたくん?」(うぉー!!! 彼女から電話が来るなんて、初やでぇ〜!!」
「どしたの?」
「うん、実は聞いておきたいことがあって…」(うっわー、なんだろこの低いテンション…)
「なに?」
「友達にね、おーたくんの部屋に遊びに行ったことを話したのね。そしたらその子にこう言われた…。『彼はあなたのことが好きに違いない。その気がないのにアパートに遊びに行ったりすることは、彼を傷付けることになる』みたいな…」
彼女は言葉を選びながら、ゆっくりと続けました。
「もしおーたくんの気持ちが、友達の言うとおりだとするなら、私はもう、おーたくんとは遊べない…。おーたくんの気持ちを教えてほしい…」
つらい電話でした。
それを言ったらすべてが終わるという状況の中で、ぼくは彼女が好きであることを伝えました…。
「まあ、それはそれとして、また時間が合ったりしたときは遊んでやってよ♪ ただ遊べたらそれでうれしいし。だから、元気出そー」
…。
元気を出したいのは、おれ自身や……。
さて…。
それ以後も、2、3度くらいは、彼女の家に電話をかけてみたと思います。
そして、大学を卒業して(バイトでも会わなくなって)2か月後くらいにやったぼくのバンドのライブに、彼女は一人で観に来てくれました。
出番が終わってから、六本木の喫茶店で軽くお茶をして、就職した会社のこととかを話したと思います。
それが、彼女と話をした最後になりました。
その場所でかかっていた、シンプリー・レッドの「If You Don’t Know Me By Now」を聴くと、今でも彼女のことを思い出しますね。
…。
そんなこんなでぼくは、今日もラッパを吹いて暮らしています。