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自分がどのような電子音楽を作ろうかと決めたら音素材が必要だと言った。
世の中には音があふれかえっている。音楽の音は器楽の音だけではない。風鈴の音、足音、拍手の音・・・。前回、自ら録音をしに出向くと言ったが、録音する前に、フィールドワークするのもいいかもしれない。
人は聴こえてくる音を自然に選別している。聴こえてくる音と聴きたい音とは違う。
ひとりでじっくり自然の音に耳を澄ますのもいいだろう。そこでどんな音に出合うのかはあなた次第。街や森のなかでみつけた音のなかに自分が「いい響きだなぁ。この音、好きだなぁ」とおもう音がひとつ、ふたつあるだろう。その音のところへ近付き、音をじっくり聴く。またひとつの場所からどのような音が聴こえてくるか記してみる。いろいろな場所に行ってフィールドワークし録音してみるのもいい。
もしかして意外な音に出合うかもしれない。
これがフィールドワークの醍醐味だ。
どのように録音するかというと、必要な具体音にレコーダーを近づけ、その音、その音に適する録音レベルに合わせ、音が割れないか、それとも小さすぎないか調節して音を録音する。その時、一番大事なのは、自分の耳にモニター(ヘッドフォン)をつけて録音するということ。モニターを付けずに録音すると、本当にほしい音の素材と一緒に他の音も拾ってしまう可能性がある。モニターをつけて、例えば、風鈴の音が一番よく響く音をモニターを通して録音する。これが大事。
電子音楽を作る上でモニターをつけてレコーダーを持ち音を録音してくるには、結構、勇気がいる。最初のころはドキドキしたものだ。街中でその格好をしモニターから聴こえてくる音に耳を澄まし録音している姿を想像してみよう(笑)「あの人、なにやってるのかしら?」と怪しい人に間違えられるかもしれない。
街中でフィールドワークしてみたらどうだろう。お天気の良い日にパンパンと布団をたたく音、自転車のチリンチリンとベルが鳴る音、隣に立っている男性の声、スーパーからきこえてくるモノ売りの声も聴こえるかもしれない。音素材は他にもたくさんある。動物の鳴き声、音具を用いて発した音、シンセサイザやコンピュータによる電子的な音、突発的、偶発的なノイズ、電子的に変調された音、すでに録音された音楽や音、ラジオやテレビの音楽や音などこの世に鳴り響く全ての音が対象となりうる。
そしてメディア上にそれらが録音された時、初めて作品の素材となる。私たちの住む世界から聴こえてくる音を使って音楽を作るということはなんてすばらしいことだろうと思う。ひとりぼっちな夜に虫の声や夜泣きそばのラッパの音が聴こえる。パソコンに向かうとキーをたたく音、今まではそんなに気にもしなかったのに冷蔵庫のジーと鳴る音や時計の音も聴こえてくるかもしれない。もうそれだけで音楽だ。気に入った音はその音が一番よく聴こえる音のレベルにして録音する。なるべくノイズがはいらないようにする。これが大事だ。あなたはどのような音が好みなのか。好みだったはずの音と一緒に意外な音のほうが好きになるかもしれない。
これから一緒に音を探しに出かけようではないか。