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引き続き、東京国際映画祭のコンペティション部門の問題作。
『ビューティフル・ボーイ』
公式サイト
http://www.beautifulboythemovie.com/
ストーリー
倦怠期を迎え離婚の危機に直面する中年夫婦。
ぎくしゃくした毎日の中、大学生の一人息子が
大学で銃を乱射して無差別殺人を引き起こす。
夫婦はたちまち奈落の底に突き落とされる。
二人は世間やマスコミの目を逃れるため逃亡生活を余儀なくされ、
皮肉にもそれが壊れかけた夫婦の絆を結び付ける役割を果たすのだが…
ショーン・クー監督は両親の母校バージニア工科大で
2007年に起きた銃乱射事件にショックを受けた。
犯人の親は住んでいた町から姿を消して隠遁生活を送っていたという。
無差別殺人犯の親という絶望の雲間から見えるのが
ラブストーリーであってほしい。
そんな想いが胸にこみあげ、犯人でも被害者でもなく、
犯人の親側から事件を見つめたくてメガホンを執ったと語る。
ショーン・クー監督
撮影に際して監督はカメラにパーソナリティを与えるようにした。
ドキュメンタリーを撮っていたところで予期せぬ事件が起きた時、
居合わせたらカメラはどうとるのか?
感情をカメラに与えることで、
単なる撮影ツールを超えて場の空気と共鳴できるのだ。
両親はニュースで息子の通う大学で起こった惨事を知って、
自宅から息子の携帯にかけるがいっこうにつながらない。
自宅に現れた警察に身構える両親。
息子が死んだことを告げられても両親は「平常心」で涙を流す。
十分に予期しうることだから。
しかし、銃乱射したのが息子で自殺したことを付け加えられると、
静止していたカメラが揺れはじめる。
そして感情を爆発させる母親。
真実とはこんなふうに突然ナイフを
のど元に突きつけられる残酷さをはらんでいる。
このぶれ方は恐いくらいリアルだ。
絶望する両親のわずかな心の揺れもカメラは見逃さずに共鳴する。
そのワンショットが不意にきたとき私の鼓動も両親と同じ速さに達するのだ。
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