テレビの撮影で「イケメン俳優さんが2日間でアシカと友達になってショーに出演する」というのを引き受けた。
TV撮影会社は、どこの水族館に問い合わせ、協力をお願いしても、
「アシカは警戒心が強く、場合によっては噛み付く。しかも2日間で仲良くなってショーに出るなんて絶対ムリだ、できない。」
と言われて、しかたがなくウチの館に連絡をしたらしい。
あ、えっとね、警戒心が強くなくて、場合によらなくても噛みつかなくて、2日でショーに出れるアシカ、ウチ、おるで。
ということで、引き受けた。
できるのは現在ショーで活躍中のアイ(♀、7歳)以外、日本中になかなかいないだろうなぁ、と思った。
カメラや撮影スタッフの人数や、その状況に慣れれば、なんとかイケルかなぁ、と思っていたが、初めから常時7~8人のスタッフに囲まれてカメラを向けられてもアイは全く動じず、むしろ通常よりも動きは良く、いつも目が半分しか開いていなくやる気のない顔なのだが、撮影時はパッチリと目が開いてなんだか、かなり嬉しそうにしている。
1日4回あるショーの合間々々にイケメン俳優と交流させてアシカと関わる上での注意点や種目の練習などを行った。
休みナシでほぼ1日中撮影とショーに出ていたが、なんだかアシカは新鮮らしくてやる気満々である。ステージ上で打ち合わせをしていると、勝手にカメラマンと音声さんの間を通ってプールに入って泳ぎ、出番まちをしていて、段取りが決まって撮影が始まる前に呼ぶとプールから上がってきて、きっちりとスタンバイする。
オマエは女優か。
本来、アシカというのはこんなんじゃないんです。もっと普通の人がかかわるのは気難しく、大変なモンですよ、と必死にスタッフの方へ説明をした。
番組的にスムーズに行きすぎです。予定したスケジュールよりも早すぎです。
と言われた。もっと苦労しないと番組にならないらしい。
2日目も朝からショー出演のための俳優との合同練習と何度も何度も撮影がショーの合間に続いた。
アイは、新鮮だった撮影や俳優とのかかわりに昼ごろからは慣れてしまい飽きてしまったらしく、いつもの半目やる気なし状態に戻ってしまった。ハイハイ、また撮影ね、あれ思ったより面白くないんだよね、疲れるし。めんどくせぇよ。と半分しか開いていない目が言っている。
慣れるの、飽きるの早すぎだろぉ。
アシカによっては、カメラや撮影のため知らない人が何人も来たら怖くて一目散に逃げてしまうか、警戒して部屋から出てこないのが普通だと思う。だからどこの水族館も断ったのだ。
いつもやっているショーの人の服の色が変わるだけでとか、ショーに使う道具が変わるだけで警戒するアシカだって世の中にはいるのだ。
通常のアシカならカメラや撮影に慣らすのに時間がかかるが、アイは慣れるどころか2日目にして状況をすべて把握して飽きてしまった。ウチのアシカのことだから、2日目になれば、よほどか状況や人に慣れて撮影できるだろう、と思って引き受けた仕事だったけど、それは逆で、2日目には完全に飽きてしまったのだ。
それでも2日目の3時からのショーに俳優と出演しなければいけないので、休憩を取りつつ、練習させた。
飽きて機嫌が悪くなったアイの休憩中は「アイさん待ち」の状態になり俳優も撮影スタッフも全員無条件で待たされる。休憩が終わり少しリフレッシュすると「アイさん入りまーす!」とスタッフに言われてエラそうに登場する。
オマエは女優か。
ボクと一緒に普通のいつもやっているショーにも出演しなければいけないので、休む暇があまりなく大変。それでもいつもやっているショーをはさむと、やはり、いつもと違う撮影という状況が新鮮に思えるらしく、今度は何やるの???っと喜んで出てきて撮影が進む。
しかししばらく撮影が続くと飽きて動かなくなる。これは練習したらますます状況を把握してしまって慣れてしまいかえって逆効果になる、新鮮なままいきなり本番にのぞんでしまったほうがうまく行くな、と思った。
本番は、ボクはお客さん側にいて、俳優とアイの2人きりでステージに出て15分ほどのショーをやることにした。ボクが一緒にショーステージにいたらアイはたぶん安心して悪いことを考えるからだ。俳優さんと2人にしておいて緊張感を高めたままかたづけたほうが、いい結果になるかなと思った。
俳優にセリフや段取りを覚えてもらったり、アシカの状態を見極めてエサの量を調節したりで忙しい。
そんなこんなで、イケメン俳優さんとアイちゃんは無事ショーが出来たのか!?
放送は、10月18日の夜7時からフジテレビ系で予定!です。