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2011/08/01

 

あなたが私に差し出した2個の小瓶、

山小屋の窓際で朝日を浴びて奇麗よ、

今でも小瓶の中に何が入っているか見る事が出来ないけど、

とても奇麗に輝いているわよ、

昔し僕は10個の小瓶を持っていた、

総ての瓶に素晴らしいものを詰めて僕は生まれて来た、

いつの日にか、

強い荒波に手を取られ小瓶を1つ手放した、

誰かの為にどうする事も出来ずに小瓶を1つ差し出した、

絶望の中の自分を救う為に小瓶を1つ踏み台にした、

自分が気付かないうちに人混みの中に小瓶を1つ見失ってしまった、

何か大事なものと引き換えに小瓶を1つ渡してしまった、

自分の欲望を満たす為に小瓶を1つ壊してしまった、

自分の時間を守る為に小瓶を1つ見捨てた、

君と出会う為に小瓶を1つ空に投げ入れた、

僕が君にあげられるのは、

たった2つの小瓶しか今は残っていないけど、

これだけはどうしても手放せなかった、

僕は両手に2つの小瓶を握りしめ、

どんな事があってもこの瓶だけは離さなかった、

君に会って気が付いたんだ、

僕には10個の小瓶は多すぎたんだって、

君に会って気が付いたんだ、

僕の手の中から滑り落ちた小瓶は、

きっと僕には最初から必要なかったんだって事を、

今君に会って分かったんだ、

僕たち2人には、

この2個の小瓶さえあれば十分だっていう事が、

僕の握りしめていた2個の小瓶、

君に見せたかったんだけど、

今では汚れ傷つき、

外から小瓶の中を見る事が出来なくなってしまった、

あなたが差し出してくれた2個の小瓶、

今でも小瓶の中を見る事が出来ないけど、

窓辺で日の光に照らされて奇麗に輝いているわ、

私には分かるの、

私にはきっと素晴らしいものが入っているって分かるの、

あなたが生まれた時に持っていた10個の小瓶、

あなたが私に渡してくれた2個の小瓶、

私には見えるの、

だから何も心配しないで、

私には見えるから、

ほら、窓の外を見て

庭でジャガイモの花が、

奇麗に咲いているわよ。

 

2011/08/01 06:25 | watanabe | No Comments