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現在知られている海水魚類の中で、ハゼという魚がもっとも種類が多く生息数も多い魚になり、その大半の大きさが10cmほどのサイズでさらに小さいものでは2cm以下の種も存在して、生息場所もほぼ全世界に分布するこのハゼ科の仲間たちは、生息場所もサンゴ礁や砂底、岩礁、藻場、マングローブ、干潟といったあらゆる環境や淡水域までも適応して拡散しています。
そのハゼがはじめて出現した時期は、イギリスで始新世後期の3540〜3860万年前の地層からハゼ科の骨格の化石が見つかって、これがハゼとわかる最初の化石とされハゼの起源といわれています。
多くのハゼの繁殖は雄雌ペアで孵化するまで世話を行います。卵は大体、沈性付着卵で付着糸によって生み付けられることが多いです。孵化した稚魚は一定期間の浮遊生活後、適当な場所で定着して生活していきます。浮遊時期に海流に乗って日本に流れていく物も多く、ここセブで見られるハゼが日本近海でも生息し、さらにそこで生まれた稚魚が水温の冷たい北の環境まで流れ着いて、そこの環境に適応しさらに進化していき、その環境でのみしか見られない種などもいたりかなり奥の深い世界なのです。
ダイバーになじみの深いハゼ類は、ハゼとテッポウエビが同じ巣に共生で生活するタイプで、お互いメリットデメリットをうまく利用して生きている姿はなかなか面白いもので、エビは一生懸命巣穴の拡張のため、穴の中からハサミの部分を使って砂を外に運び出していますが、エビは盲目であるため外敵が来たとしても気が付かないのをハゼがカバーする役目を負っています。エビが穴から出てくる時は必ずハゼの体に触角をつけています。もし外敵が巣穴に近づいたりした時にはハゼは体を震わせてエビに教えてお互いに巣穴の中に逃げ込みます。ところが、お互いの性格もあるのかもしれないのですが、ハゼのことなどお構いなしにハゼを退けてまで外に出てくるエビやエビよりも先に逃げ込むハゼなどなかなか楽しませてくれる世界です。
この共生生活もちょっと変わっている面もあります。全ての生物は子孫を残すことに懸命です。エビは子孫を残すために相手と出会うまで巣穴を広げていきます。出会えたら巣穴を広げることは終わり、巣の修復のみになります。その時にハゼも一緒に出会えればお互い問題はなく共生生活を続けていきますが、出会えないときには、それまでの巣穴を捨てて新しい巣穴を探しに行ってしまい、今までの巣穴はエビのみとなる時もあります。ハゼ、エビの種類によって共生出来るタイプもあるらしく、大半は同じ種類のもの同士がペアになっています。この広い海の中で10cmほどの生物が、よくペアになれるのが不思議な世界です。
今回の写真:レッドマージンシュリンプゴビー
海外では多くみられるハゼでハゼ観察入門編にはもってこいの種です。
The Gobioid Fishes of Philippines