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あたしは秘密というものが本当に苦手だ。
問い詰められると、いつもすぐに白状してしまう。何もかもが分かりやすいのだそうだ。そして面白がって話題にされているうちに撃沈、というのは非常によくあるパターンである。
というわけで、毎回好きな人が出来る度に今度こそは隠し通そうって決意する。バレるのも時間の問題だと思うけど、今回こそは、ぜひとも実らせたい恋なんである。
というわけで、必要以上に張り切らない、しかしさりげないお洒落を心がけて出社した。
――が。
「あ、今日デートなんだ?」
おはようの次の言葉がこれだ。違いますよ、と否定しつつ、視線をたどると昨日塗り直したばかりの爪に止まっていた。先端にごく薄いラメを掛けた上品な仕上がりにするために昨日2時間ほどムック本と格闘したことまでは勿論言わない。
「いいね、俺そういうの好き。かわいいね」
その人はさりげなくあたしの髪を撫でて会議室のほうに消えて行った。なんかすごいチャラいけど、やっぱり格好いい。徹夜明けだろうよれよれのシャツもたまらない。
あーもう好き!と既に見えなくなった背中に視線で念を送っておく。
そのあたしの背後でくすくす笑いが聞こえているが、ここで耳を貸しては一巻の終わりなので素知らぬ顔をして席に着く。
あたしの仕事は営業事務で、さらに言うなら派遣である。
つまり正社員のお姉さま方(気持ち怖い)に比べると格段に彼との接触率は低い。ここは居心地のいい会社で一回は更新してもらっているが、社員になれるのは夢のまた夢だ。つまりあたしに残された期限はあと3カ月ってとこである。
それまでに何とか、彼の連絡先ぐらいゲットしたい。付箋に書いて机にでも貼っておくか。いやそれはダメだろう。じゃあ資料を渡すタイミングってのはどうだ。いやそれも邪魔だろう。悶々としながら手元の資料をまとめ、ファイリングする。これがもう一週間ほど続く、目下のあたしの悩みなのである。
でも今日はとりあえず、爪に気づいてもらったから。
声を掛けてもらったから。
お気に入りの手帳には、ハートのマークを書いておこうと思う。
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花言葉:恋の予感
*今回の画像は「Photolibrary」さまからお借りしました。