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2011/06/25

Dedicated to the memory of Junko B T.

ペネロピ
【PENELOPE】2006年
日本で初めて転職した年。
仕事が嫌だったわけではなく、手のひらにない見えない何かを求めた、というコト。

子役で売れると、薬やお酒に溺れることなく大人になるのは、
何故かアメリカの俳優界は難しいようで、
1991年の“アダムス・ファミリー【THE ADDAMS FAMILY】”の娘役で
すっかり有名になったクリスティーナ・リッチ【Christina Ricci】も危なっかしかった。

いろいろな役柄に挑戦するけれど、背伸びした印象がなかなか抜けない。
“ペネロピ”はそんな彼女を、唯一安心して見れるようになった
最初の映画かもしれない。

先祖にかけられた呪いから、豚の鼻と耳を持って生まれた少女ペネロピ、
呪いを解くためには、“one of our kind” ・・・同じ“種”が彼女に永遠の愛を誓うこと。

娘を思う母親は、呪いを解く資格のある同じ“貴族出の花婿”探しに懸命になる。
その度に“拒絶”される娘の心の痛みを知らず、ただただ、“元”に戻ること願って。

その秘密を探る記者レモン【Lemon】、潜入捜査の為に、ちょっと落ちぶれて、
お金で協力してくれそうな“花婿候補”に適した貴族の青年をカジノでスカウトする。

+++++
レモン: 『待ってくれ』
マックス: 『誰だ?』
レモン: 『あんたを探して ここへ来た』
     『たった数年で 一族の財産をスッたようだな』 
     『待てよ 損はさせない』
マックス: 『人違いだよ』
レモン: 『5000ドルの話だぞ』

Lemon: Hey, pal, wait up.
Max: Do I know you?
Lemon: No, but I know you. Did a little research.
     And it seems in a few shot years you’ve managed to gamble away
     the fortune your famjiliy spent generations building.
     Hey, hear me out. I’ll make it worth your while.
Max: You got the wrong guy.
Lemon: Five thousand bucks worth your while?
+++++

“You got the wrong guy.” は文字通り、人違いだよ、、っていう意味もあるけれど、

何か無理なコトや、都合の悪いこと、はたまた興味がなくて断りたいときも
悪いけど、頼むヒトを間違っているよ、という意味合いで
“You got the wrong guy.” と返事する。

浮気現場を見られたり、犯人と見破られそうな時にも、
そいつは俺じゃないね、ヒト違いさ、っていう意味で 
“You got the wrong guy.” と返事する。

つまりだいたいが本人なワケで。

うさんくさいレモンに声をかけられ、最初に相手にしなかったマックス
でもカジノ通いですっからかんの彼に、5000ドル【Five thousand bucks】、
日本円だと50万円ぐらいの大金に、結局引き受け、
ペネロピに会いに行くことになるわけだ。

ネタばれになるので、これ以上は・・・・だけれど、
この “You got the wrong guy.” は後になってキーワードとなり
このシーンが再度リプレイされる。

この映画は全体的に人間の自分勝手な願望と、思いこみと、欲望のるつぼである
その中で、豚の耳と鼻を持つペネロピだけが
自分の気持ちを偽らず、まっすぐに向かい合う。
何故って、きっと、人と違う耳も鼻も、どんなに瞬きしても消えないから。

*****
“ペネロピ”の“クリスティーナ・リッチ”はちょっぴり私の友人に似ている。
友人の奥さんで、友人となった、10歳まではいかないけれど割と年下の友人。

このコラムを書く為に“ペネロピ”を選んだのは、少し前のコトで
たまたま木曜の夜中2時に、映画の中で街へ出ていろんな発見をするペネロピを見て
ああ、誰に似ているのかと思ったらジュンちゃんだわと、ふと思った。

きらきらした目は、新しいことを少しも逃す気はなくて、
何より、しぐさや動きや後ろ姿、ビビッドな柄の襟巻きを選ぶあたりに
共通の雰囲気を見たのだと思う。

翌日朝9時に、そのジュンちゃんが亡くなったとのメールが来た。
2年ほど前から入院生活をしていた。

お通夜に行って、別の友人ふたりが不思議なコトを言う。
“昨晩の夜中に電話してた時に、ジュンちゃんどうしているかって話してたんだよ”と。
そして、はっと気がついた。
ちょうどその時間に、ペネロピって彼女に似ているなって、そう思っていたわ、と。

superstitiousなコトは、ただ起こるモノだから、特別意味を持つとは思っていないけれど
昔遠方でじいちゃんが亡くなった時に、夢で最後のさよならを言いに来たときから
大事なことはヒトの心が呼び合うことかもしれないと、そう思い、
あの日はその瞬間のひとつだったのかもしれないと、そう思う。

2011/06/25 04:14 | masaki | No Comments