« 「再生不能」リハビリテーション | Home | JunkStage第3回公演出演者撮影レポート/momo »
アクシデントをハプニングに変えられる人は稀少だ。
それには高度な大人力が必要だから。
子供パワー隆盛の世の中で、
そんな絶滅危惧種のような大人になろうと少女が奮闘する様が
『ジュノ』では描かれている。
主人公のジュノは16歳の女子高生。
キュートな外見からはうかがい知れないほど内面は老成している。
友達のポーリーとの初体験で望まない妊娠をしてしまっても、
取り乱さずジョークを交えてポーリーに報告する。
ただ、そこはまだあどけなさが残る16歳。
少女に不釣り合いなパイプをくわえ物々しい肘掛椅子にふんぞり返って
無理に「大人」度を高めているのがほほ笑ましくも痛々しい。
このパイプは生む決心をして里親を探すときにもしっかりとジュノのサポーターとなっている。
パイプやサングラス、頑丈な椅子。
無理をしてタフにふるまおうとするとき、
ジュノはこれらで武装し、「大人」に変身する。
念願かなって理想のカップルを見つけ出すが、
養父候補のマークといつしかただならぬ雰囲気になっていく。
妻のヴァネッサと別れるといいだすマークを懸命になだめたり、
お腹が大きくなっていく自分とポーリーとのズレの中で心が揺れ動いたり、
ぐずる子供たちに懸命に背伸びして「大人」の対応を模索しているうちに
自分を見失いがちになる。
そして苦しみながらもついに自分の正直な気持ちに気づくジュノ。
いつの間にか変身道具は消えている。
なぜならファンデーションを塗りたくってわざわざ「大人」に化ける必要はなくなったのだから。
ごてごてした変身道具のかわりにギターで自分の想いを伝えるジュノは
もうカギカッコのとれた正真正銘の大人だ。
周囲に流されず自分らしく。
ただし自分の足で毅然と立って。ピンチにはユーモアというスパイスを少々。
アメリカの十代の妊娠問題を超越して、
人生という料理を美味しく味わうためエッセンスが
ジュノという一人の女の子の生き様にいっぱい埋め込まれている。
混沌とした未来も『ジュノ』というレシピがあれば飢えなくてすみそうだ。