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地球の舳先から vol.366
八重山 編 vol.1
旅をしたい、と思うことが、ほとんどなくなっていた。
行きたいところには、ほとんど行ってしまった。
残っている行きたいところは、だいたい今行くべきでないところだった。
そして、ばかみたいに、同じところへ何回も行くことも増えた。
たぶんそれはもはや「旅」ではなくて、ただの「用事」だ。
早くに夏休みを取って向かったのは、またしても海のある場所。
海でレースには出るくせに、自然はあんまり好きではない。
暑いとか流されるとか刺されるとか、なんかしか「ヤラレる」ことが多すぎる。
だから、ほとんど名前しか知らない「小浜島」に降り立ったとき
わたしは、とにかく「あれ、どうしよう」と思った。
船着場を降りたらば、草がボーボーで、ほかには何もなかったから。
海外へ行く時はあれだけ調べて本も読み漁るのに
行っても帰ってもカロリーを使う「旅」とくらべて、
国内の休暇では、なにもしない。
ソンをしている部分もあるのだろうが、たぶんトクもしている。
「あれ、どうしよう」と思った後、
「別になにもしなくていいんだ」と思い直し、
自分で何もしなくていいホテルを選んだことも、同時に思い出した。
ホテルの看板を持ったおじいちゃんに導かれてバスに乗り込むと、
ここが古く「ちゅらさん」の舞台となった地だということを知る。
それから、八重山諸島でいちばん星が見える島だということも。
そして、今年はカラ梅雨で、異常に暑いということも。
梅雨だというから、室内のアクティビティがあるところ、
そして、ホテルにこもっていても十分快適なホテルを押さえていた。
それなのに、鬼のように、晴れていた。
その暑さは、東京のあの薄気味悪い暑さとはぜんぜん違って、
ストレートなだけに攻撃性も高い。
いつだったか、どこの国か忘れてしまったけれど砂漠地帯の国で
だんだんと頭がもうろうとし、具体的に言うと
だんだんと数が数えられなくなったりするあの感覚を思い出す。
あれは、暑すぎて脳細胞がだんだん死んでいくのに違いない。危ない。
スコールでも降って落ち着くかと期待したが、気温は上がり続ける。
冷房をまわして、抵抗する。
その駆け引きの結果、わたしの一眼レフは結露した。
ゆるんだ思考にも、これは相当な打撃だった。
とんでもないところへ、来てしまったようだった。
つづく