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2011/05/30

――あなたって、いつも青い鳥を探している人みたいだよね。
インスタントに恋に落ち、その結果として失恋を繰り返している私を、そんな風に親友は評してため息をついた。目の前のテーブルにはワインの空き瓶が既に3本。別れる度に泣きつかれる彼にはいい迷惑だろうと思いつつ、私は枯れた声で「だって…」と繰り返す。

「だって、思ったのと違う人だったんだもん」
「当たり前だよ。100%あなたの理想通りの男なんているわけないんだから」
「分かってるよ。でもさ、でもどっかにいるかもしれないじゃない、そういう人が」
「馬鹿だね。いないから毎回うちで潰れることになるんでしょう」

手厳しい言葉だけれどその通りだったから私は黙って酒を煽った。この光景も何回目だろう。最初は全くアルコールを受け付けなかったはずの彼が涼しい顔でワインをあけているのを眺めていると、自分の成長しなさぶりに泣けてくる。今年に入ってこれでもう2回目だ。勝手にのぼせて付き纏って1回か2回デートして、終わり。ありふれた話ではある。でも、私は毎回必死で、この人なら、この男ならって思っていたから、それなりにダメージは残る。一人ではとても耐えられない。その自覚はちゃんとあるので、容認してくれる目の前の彼の存在はとても大きく有難い。

「いい加減に近くに目を向けなさいよ」
「近くって、例えば?」
「俺とか」
「ないよ、ないない。あったらこんな風に毎回へべれけになってない」

確かに、と彼はわざとらしくため息をつき、私は茶化すように笑う。このやり取りもお決まりのことだ。彼が恋人がいる間だけ、私も恋を差し控える。軽はずみに誰かを好きにならないようにヨガに行ったりピラティスをしたりフットサルに励んでみたり、彼に迷惑がかからないように、泣いても大丈夫な状態になるまで、私は酷く慎重になる。

「青い鳥だってきっといるよ。まだ気づいてないだけなんだよ、きっと」
「いるかな。そんな風には思えないけど」

彼は首を傾げて新しいワインの栓を開けた。今は大丈夫、彼はフリーだ。私には泣く場所がある。
そのことがなぜかとても嬉しくて、私はまたお酒を煽る。
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花言葉:旅人の喜び
*今回の画像は「Photolibrary」さまからお借りしました。

2011/05/30 12:59 | momou | No Comments