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2016/07/08

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宛て処のない「帰り道」を思い浮かべながら
一度は辿った想いの道程と帰り道、
引き返しながら思い出さされ、炙り出される、
かつて自身が「痛み」と呼んだそこに在りしものたち。
それでもなお、その帰途で描き出されるものへ向けて
今度は戻ろうとする。その道を一途、還ろうとしている。

今やただひたすら眩しく光る道と、その先に見えるものを
以前より少しだけ近くに臨みながら、そこから一つ逸れた場所で
全てを抱えたままで振り返ろうとする。

かつて「想い」に向けて踏み出した者の、往きと帰りの物語は
やがて以前よりずっと静かに「帰り道」がはじまる。

確かさと不確かさ、ただ失うばかりではなく、
得たものを抱えて還る場所もまたその目的地なのだから。

「帰還者」展示冒頭文より

写真展「帰還者」、始まってしまえば早いもので
もう二週目になりました.

昨年の写真展「化身」では、初日に作品を構成する
一翼である被写体のケイさんに来場していただけたけれど
もう一つの翼であるところのえりかさんには
残念ながらご来場いただくことが叶いませんでした.

もちろんそこには、いろんな事情があったのだけれど
来場できなかったことを誰より悔しく感じていたのは
他ならぬえりかさん自身でした.

そして今年の写真展で、ようやく
えりかさんにご来場してもらえて、自身を写した
作品と共に撮ることが叶ったのでした.

自分が残した想いのカタチ、それを観ることを
誰よりも望みながら、身体が、心が動かない.
そんな忸怩たるものの中で、彼女にとっては
ギャラリーWALDへの道程は、果てしなく遠いもの
だったのかもしれません.

作品の前に立つえりかさんからカメラ越しに
伝わって来るのは、今日ここに立つまでに
日々感じ、考えたであろう、いろんなものが
綯い交ぜになった、強い想いそのものでした.

脚を運び、再びかつての自分が残したものと
対峙すること..「あのとき」の「あの時間」へ
還って「視る」、という決断をしてもらえたこと.
何よりそのことが、今回のこの「往きと帰り」の写真展に
すごく相応しいような気がして、僕自身胸が一杯になりました.

来た道をもう一度辿ってみる..
そこで感じられること、得られるものは、
帰り道だからこそのものでもあること.
それを教えてもらえたような気がしました.

作品としての区切りが、ひとつ付けられたような
今はそんな気がしています.

2016/07/08 10:05 | hideki | No Comments