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-還るという選択肢
その道を一つ逸れた場所で起こったこと-
感じたことを感じたままに
目の前で起こったことをそのままに
視たことを視たままに
そのままで道を往こうとする
まるでそうすることが当たり前だったかのように.
在る地点まで進めたときに想う
自分の居場所、立ち位置に対する、不安や苛立ち、焦り.
どうしても進んで来た道を確かめようとしてしまう.
それが決して歪まず、真っ直ぐな道ではなく
湾曲し、抜け道と裏道の連続だったことを
そしてそれが一度ならぬ裏切りの道であったことを
よく知っている.
かつて願った、白く光る真っ直ぐな道
それをほんの少しだけ逸れたところの道で
そこで待っていたもの、視たもの、知ったもの
そして喪失したもの.
果たして今、自分がいる場所を想い
やがて「還る」という選択肢とその道が現れる.
その「帰り道」を思い浮かべてしまうとき
そこで思い起こされる、一度は辿った想いの道程
引き返しながら思い出さされ、炙り出される、
かつてそこに在りしものたち.
それでもなお、その帰途で描き出されるものへ向けて
今度は戻ろうとする.その元へ帰ろうとしている.
今やただひたすら眩しく光る道と、
その先に見えるものを以前より少しだけ近くに臨みながら
そこから一つ逸れた場所で全てに向けて振り返ろうとする.
やがて以前よりもずっと静かに「帰り道」がはじまる.
写真展「帰還者」/展示冒頭文草稿より.
写真展「帰還者」のギャラリー掲示用にする予定の
ポスターと、展示冒頭に持って来るキャプションの第一稿です.
コラムを草稿代わりにするのはとても申し訳ない気がしてて
ほんとはもっと早く4月中には書く予定だったのですが
そんなこんなで5月に入ってしまいました.
これを原文としてあれこれ錯誤しながら
完成文にしたいと思っています.
今回の写真展はほんとにかみ砕いて言葉にするのが難しくて
「想いの往きと帰り」…大変なとこに手を付けてしまったな..と
感じているところです.
感じたものをそのままにカタチにして進む
その中で誰しも一度ならず自分の居場所というものを確認しようとする.
ただそれだけのことに安心したりひどく不安になったりもする.
自分が思っていたより多かれ少なかれ、
道を逸したところに来ていることを知ったとき
そこで「還る」道を選んだ者の、その「帰路」で想い感じること.
往く先ばかりではなく、そしてただ失うばかりではなく
得たものを抱えて還る場所もまたその目的地なのだから.
それがこの写真展の、「帰り道のはじまり」です.