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2011/05/18

5月は天候がよいので一年の中では比較的やる気があり、残りの11ヶ月はまるでダメな逆5月病、フィルコです。こんにちわ。
女子車椅子バスケットチーム『GRACE』の取材レポ、続きます。

が、

その前にお知らせ!!

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GRACEは 5月22日(日)に東京都リーグの初戦を迎えます。

 試合会場:国立障害者リハビリテーションセンター体育館(所沢市)
      http://www.rehab.go.jp/index.html

 開始時間:11:30

 対戦相手:東京スポーツ愛好クラブ (日本で最初にできた車椅子バスケチーム)

 
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お近くの方は、ぜシ!!
 
ではレポートです。 
  

■いきなり試合出場!?

 
≪AM 11:00≫

「ファイト~!!」と高嶋キャプテンの声が響く。

ここからの練習メニューは、より実戦を意識したものとなります。
 
 
まず「8の字」というメニュー。これは車イスバスケ独特の練習?
 
ゴール両脇に車椅子を置いて、それらの周囲を8の字を描いてダッシュ。2人組になり、前のひとはゴール下でシュート。後ろのヒトは追いかけながらリバウンドを取って、前のひとにパスします。これを決められたシュート数が決まるまで連続で頑張ります。シュートが入らなかったり、リバウンドを取りこぼしたりすると、後列のひとがダッシュで取りに行かなければいけません。

 

車椅子バスケは、味方の壁を使って相手ディフェンスをブロックし、スペースを作ったりシュートまでもっていく「スクリーンプレー」が非常に多いのが特徴。この練習の動きは実戦でもかなり使うそう。さらには『疲れたとき』=『試合終盤の勝負どころ』でもシュート、リバウンドを確実に行うための体力と精神力を養うことが出来る。キツイけど、とても効果的な練習だと思いました。すごいなあこれ、健常バスケでも応用できる。
 
 
もちろん、私は見学でしたが(笑)。

  
≪AM 11:20≫

少し休憩して、2メンでの速攻練習と、いよいよ3対3での実戦練習

 
  

代表の多智さん、田中さんを中心に、プレーの一つ一つを丁寧に確認しながら攻守のポイントを練習。健常バスケも車椅子バスケも5人対5人で試合をしますが、実際の攻撃の時は全員が全員いっぺんに動いてるわけではなく、局地的に2対2か、3対3の形にして仕掛けることがほとんどです。

だから3対3がキッチリできるチームは、5対5も強い。
 
3対3練習の様子

GRACE20110501
 
イスの幅は変えられないので、スペースを作るための動きが健常バスケよりもシビア。動き出しからの「駆け引き」の要素がすごく大きい。
 
細かい話になっちゃうけど、たとえばスクリーンプレーひとつとってもそう。「車イスの、どの面でスクリーンを作ってディフェンスをひっかけるか」は、次のプレー展開でどの方向に進むか予め想定しながら決めなきゃいけない。相手とぶつかり合いながらでは、イスが引っかかるので急にターン出来ないから。

しかしディフェンスもそこは読みながら来るので、スクリーンの直前までは、気づかれないように別の方向を向いておいて、、タイミングを見て、、死角に入って、、どっちにスクリーンをかけるか、味方とアイコンタクトで決めて、、素早くイスの角度を操作して一気に仕掛ける!などね。

しかもこのような局地ごとの駆け引きも、全体としては「チームでどう攻めるか、チームでどう守るか」の戦略を実行する一部であって、全体は全体でチーム同士の駆け引きとなる。3次元的な動きに制約がある分、きっと平面での戦略・戦術性がより大事になるんだよなぁ。これはすごく面白いぞ!

 
などと、ブツブツひとりでつぶやきながらカメラを構えていると

 
高嶋CAP 「フィルコさーん、4対4で試合をするので入って下さーい」

フィルコ 「あ、はーい。・・・って、え゛ーーー!?ワタクシがでございますか!?」

高嶋CAP 「です。もう大丈夫でしょう。楽しいですよ~!」

フィルコ 「・・・や、やらせていただきます!」
 
 
すみません。本当は試合出たくてウズウズしてました(笑)
 
 
≪AM 11:45≫

ということで、いきなり試合!!

私はGRACEレギュラー組の相手側チームに混ぜてもらいました。

皆さんのスピードには全然ついていけないし、せっかくもらったチャンスで渾身のシュートもあさっての方向に。でも負けたくないから声だけは元気に出しました(笑)。楽しかった~!!

実際に中に入ってみると、意外にも自分に出来ることが結構あった。声を出すこともだけど、リバウンドをがんばることや、速攻を出されないようにディフェンスで一生懸命戻ることなど、もちろんGRACEの皆さんに気遣って頂いてのことですが、それでも初心者なりに楽しくプレーできました。

それもそのはずで、考えてみたらひとによって障がいの度合いや、現れかたは様々なわけで、それぞれにあわせて楽しくプレーできる間口の広いスポーツなんだよなぁと。しかも「持ち点制(※)」という独特のルールを採用することで、制度的にも公平にプレーできるようになってる。

(※)「持ち点」ルール。障がいの度合いによって選手は1.0~4.5点の持ち点が割り振られる。障がいの度合い軽いほど持ち点が高い。「コート上でプレーする選手5人の合計が14点を超えてはいけない。
  
これは、もっと沢山のひとにやってみて欲しい!障がいをもつ方も勿論ですが、そうでないひともゼヒ体験してみることをお奨めします。実際、女子の場合(各ブロックによりますが)健常者も選手登録可能とのこと。男子でも、公式戦には出られないものの健常者だけのチームまであるそうですよ。トレーニングとしてやっても相当いいもんなぁ。とくに腕、肩、背中、握力など上半身強化には本当にもってこい!
 
しかし、、分かってはいるけど、やっぱり試合でシュートをバンバン決められてしまったのは悔しかった~(笑)。とくにキャプテンの高嶋さんにはいったい何点決められただろう。
  

■「キャプテン 高嶋さん」

2月、ニュージーランドで発生した大地震で、倒壊した建物の中から救出された少年が、救助のために足を失った。某テレビのインタビュアーがその少年に対し「もうスポーツできませんよね。」と、本当にデリカシーのカケラも無い、酷いインタビューをして話題になったのですが、その事に対してツイッター上でサラッと突っ込んでいる人がいました。
 
 「できるっつーの。」
 
それがGRACEのキャプテン、高嶋さんでした。

実は、高嶋さんは東京アパッチブースター。実際にお会いしたことはなかったんですが、ブースター同士ということでツイッター上ではフォローしていたのです。その後、4月に行った「アパッチブースターお花見会」に参加して頂くなどでお話する機会があり、「ぜひお願いします」と申し入れて今回の取材をさせて頂いたのでした。

彼女が本格的にGRACEに参加したのは2009年から。
 
車イスバスケとの関わりは長くもう10年以上となるが、そのキャリアの前半は、実は選手ではなくボランティアや、強豪チームのマネージャー、都選抜チームのトレーナーなど、スタッフとしてのものでした。それもそのはず、高嶋さんの職業は理学療法士であり、コートを降りれば今でも「支える側のひと」なのです。

高校生まで、バリバリのバスケ少女でした。

股関節に疾患を発症したのは理学療法士になってからのこと。自身の病気についてはごまかしながら仕事と車イスバスケのサポートを続けていた。2009年、症状が進んだため、長く続けていた男子車イスバスケチームの強豪「東京ファイターズBC」のマネージャーを退任し大きな手術を敢行。退院、職場復帰後に、以前よりちょこちょこプレーしていた東京グレース(現GRACE)に本格参加しました。

障がい者手帳を持っているが、それは「とにかく選手として公式試合に出たかったから取った」のだそう。(実際はいろいろとあるのだと思うが)明るくチャキチャキと行動する彼女の姿に、いわゆる「障がい」の印象はまったく無い。


 
練習中もとにかく元気。どんな練習でも先頭を切って声を出し引っ張る。自身の選手としてのレベルは「超庶民クラス」という彼女だが、背負っているものの自覚は小さくはないようです。

「GRACEの伝統を守りたい。」

若手も、ベテランも、初心者も無理なく続けていく事ができるチームでありたい。とにかくGRACEとしてバスケを続けていきたいのだそう。

「女子」チームであることも大事に考えている。彼女のプレーは、スピード感だけでなく、ビジュアルでも目を惹きつけられる。彼女の愛機はキラキラしたラメ入りの華やかなピンク。「ピーチ姫」と名付けいつも一緒だ。練習着もとてもおしゃれ。

おしゃれや可愛らしさというのは、こと近年の女子スポーツには欠かせない要素。そういう女子ならではの楽しみ方という意味でも、背中で引っ張る存在として高い意識を感じる。

この写真を撮るためにカメラを構えたとき、正直に言うと私はすっかり見とれてしまっていました。

私の好きな言葉に「居住まい」というのがあります。居住まいが綺麗な人は、とても精神が充実しているひとです。車イスに乗ったひとを見て綺麗だと感じたのは初めてで、それはきっと、高嶋さんの居住まいから、車イスバスケ、そしてGRACEにかける思いの強さと覚悟を感じたのだろうと思う。

普段の「とても元気でラフなお姉ちゃん」な印象とのギャップも関係あるかもしれないけど、本気であることは、男女に関わらずひとを美しくするものだと改めて思った。
 

■バスケ馬鹿
 
≪12:00≫

円陣を組んで「GRACE Fight!!」と声をかけ練習終了。
 
皆でコートにモップ掛けし、急いでコートをあける。次の児童レクリエーション枠でもう子供達が待っているので、私も手をプルプルさせながら焦って片付けました。多摩スポーツセンターはとても人気が高く、ロビーは利用者でごった返していました。まあただ、人気が高いと言うよりは、障がい者を対象としたスポーツ施設が少なすぎるのでしょう。
 
皆さんの着替えを待っている間、改めて車イス(バスケ車)をまじまじと見たのですが、とても個性があってどれもカッコイイ。ほとんど全てがオーダーメイドで、デザインをいろいろアレンジできるんだそうです。

その個性を決めるのは「好み」だけでなく、「車イスを見れば、そのひとの持ち点(障害の度合い)が分かる」と代表の多智さんが教えてくれました。

例えば、腰から上の自由が利く場合は、ほとんど背もたれが無く動きの自由度も高い。自由が利くのが胸から上の場合は、体幹を固定するので背もたれと両脇のガードがしっかりしている。他にもポジションによって、座席の位置を高くしたり、イスの幅を小さくしたり、様々。

「おしりが大きい外国人選手は、半分ぐらいしか乗ってないひともいるよ」と言って多智さんは大笑いしていた。
 
片づけが終わると、練習参加メンバーで近くのファミレスに向かい、皆で昼食を食べます。多摩スポ練習の時はいつものことだそう。今回はずうずうしく私もお邪魔させて頂きました(笑)。

スポーツチームではあるが、そこは「女子」。お昼を食べながらガールズトークに花が咲きます。迫力に圧倒されそうでしたが、負けじといろいろと車イスバスケのお話も伺いました。女子だけのチームは全国に8チームしかないこと。「持ち点」は認定会のようなものがあり、それは大会ごとに東北や関東など各ブロックで行うが、一箇所でしか出来ないので大変なこと。認定員には専門の資格がいること。車イスは床への負担が大きいので、練習させもらえる体育館が少ないこと。選手を募集していること。
 
などなど話しているうちに、話はいつしかバスケのことに。


 
なんだかんだ言っても、やはりこの話題が一番熱が入る。練習の意味合いや、ディフェンスの動き、オフェンスパターンの復習、選抜チームでの意識の持ち方、他チームの分析、などなど作戦盤を持ち出して盛り上がります。その空気は私にとってあまりにも自然で、ふと気がつくとすっかり話しに入り込んでしまっていました。取材で初めてご一緒させて頂いているという事を忘れてた(笑)。

それはきっと、GRACEの皆さんが本当に気さくで、明るくて、何よりバスケが大好きなことが自然に感じられたから。「バスケ馬鹿」同士は匂いで分かる(笑)。いいチームだなぁ。

本当に楽しかった~!!
 
間違いなくひどい筋肉痛になるからって、多智さんがこれをくれた(笑)


 
お店に入ったのは13時前。時間を忘れて話し続け、気づけば16時になろうとしていました(笑)。

GRACEの皆さん、いきなり訪れた紫アフロの怪しいオッサンを受け入れて下さり、本当にありがとうございました!これに懲りず、また宜しくお願いします!!
 
 
 
GRACEは5月22日(日)に東京都リーグの今季初戦を迎えます。

 試合会場:国立障害者リハビリテーションセンター体育館(所沢市)
      http://www.rehab.go.jp/index.html

 開始時間:11:30
 対戦相手:東京スポーツ愛好クラブ (日本で最初にできた車椅子バスケチーム)
 
 
くしくも歴史あるチーム同士の対戦となった初戦のカード。
 
素晴らしい試合になることを祈ります!
 
 

GRACE Fight!!

2011/05/18 06:19 | filco | No Comments