« 浜岡原発停止「要請」について | Home | 電力と命の関係 »
みなさまこんにちは。
女子部でも好き勝手し続けるmomoこと桃生です。
私はコンテンツ担当者としてライターの方と直接お話をさせて頂く機会が多いのですが、そのなかで「これは私一人で知っているのは勿体なさすぎる!」というエピソードが多々ございます。
それはほとんどコラムには現れない些細な出来事だったりするのですが、実はそういう部分にライターさんのお人柄や性格、考え方などを感じたりするのです。
というわけで、そのようなエピソードも含めつつ、今回から不定期でJunkStageのライターの皆さんへの公開ラブレターを綴っていきたいと思います。
■vol.1 女流演出家・スギタクミさん
――走り続けることの強さと脆さ。
だからこそ、私は成長し続けて行きたいと思ってる。(スギタクミ)
「女性性」をテーマにした作品を手掛ける女性演出家。演劇にとどまらず、映画・ラジオドラマ脚本、プロデュースなど活動は多岐にわたる。劇団「危婦人」主宰。
http://www.junkstage.com/sugi/
* * *
2010年3月。
スギタクミさんが、JunkStageにメールを送ってくださったのは、今からちょうど一年と少し前のことになります。頂いたメールには、ご自分のご経歴や劇団の内容を含めた丁寧な参加希望がしたためられていました。
スギさんはスカウト組が多いJunkStageのなかで、自ら参加を表明してくださったライターさんのお一人です。
ところでJunkStageではライター応募者の方にかなり厳しい要求をしております。コラムのコンセプト、タイトル、内容。気軽に応募頂いた方には非常に厳しい、と思われるような部分も含めたお話合いをしていく中で辞退される方も少なくはありません。
そんな中、スギさんはサンプルとして提出してくださった文章から既に抜きんでた面白さを放っていました。演劇のセリフ回しにも通じるリズミカルな文章、そして「ある!ある!」と思わず笑ってしまうような共感性。
「常にゴロゴロいる、無意識にダメな方たちを観察したり、考察したり。そして、自分の経験談を盛り込んだりして!?創作活動を通じて感じる、人々の悲喜こもごもを綴っていきたいと思います。」
十数通に及ぶメールののち、スギさんはそんな風にご自分の連載を方向づけてくださいました。
そうして始まったのが、あの「女流演出家のだめん列伝」です。
* * *
――JunkStageに応募してくださったきっかけはなんですか?
先日そうお伺いしたところ、スギさんは少し考えてから、「このままだと、幅が狭くなってしまうと思ったから」と答えてくださいました。
スギさんといえば演出家としてだけでなく、脚本・衣装・音響・制作・役者などオールマイティな活躍をなさっていらっしゃいます。ご自分が主宰されている劇団「危婦人」以外にも、外部劇団の制作やご自分でもプロデュース公演を手掛けるマルチな才能の持ち主が口にしたその言葉は私にとって非常に意外でした。
「気が付いたら、わたし、演劇しかやってなかった。小劇場ってとっても狭い世界だし、これでいいんだって思ったら楽な方へ楽な方へ流れてっちゃうのね。それはそれで居心地がいいけど、成長も止まってしまう。それが嫌だったし、このままじゃ自分の視野がどんどん狭くなっていっちゃうと思って…」。
だからコラムを書いてみようと思ったのだ、とスギさんは穏やかに言いました。
* * *
そもそも、スギさんと演劇の出会いは高校生の頃。
友達に誘われて観劇した鴻上尚史さんの「ビー・ヒア・ナウ」やつかこうへいさんの「飛龍伝」に魅せられて演劇の世界に足を踏み入れたのが、きっかけでした。
「演劇ってやっぱりエネルギーがすごいでしょ? まだ子供だったから台詞の意味なんか半分も分かってないんだけど、でもとにかく凄い!ってことは伝わったんだよね。ものすごいことがあそこで起こってて、それがもうぶつかってくるような感じで。それで、これ、やりたいって思ったんだよね」
その夢を追って、大学在学中から本格的に待望の演劇漬けの日々を送りだすことになったものの、なりゆきで書いた脚本がスギさん曰く「うけちゃって」脚本・演出も手掛けることに。その後の活躍は前述のとおりですが、だからこそ、コラムを書くことで自分の視野を広げたいのだとスギさんは教えてくれました。
「おんなじ時間使っても、器用な人は二つ三つ同時進行で出来るけど、わたしは出来なかった。ひとつのことしか出来ないのって、それがダメになるとすごく脆いでしょ。わたしはもっと成長していきたいし、今からでも新しいことを始めることで強くなりたい。」
不器用と言えば不器用なんだけどね、と言いながら、スギさんのはにかんだような笑顔がステキでした。
* * *
そんなスギさんは今年、また新しい試みとしてJunkStageの舞台イベントの総合プロデュースを手掛けられることに。
劇団ともプロデュース公演とも違う、雑多な、でも輝かしいライター陣をどう料理してくださるのか、今から楽しみでなりません。
コラムを書くこと、そしてJunkStageをひとつの物語として読者の方に届けること。
スギタクミさんの挑戦は、これからも続きます。