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2011/05/01
今週はアートのお話はちょっと置いておいて、オランダの話題をひとつ。
日本でいう天皇誕生日のようなものですね。
この日は、国中で無礼講のお祭り騒ぎ。
というのもじつはこの日、
「誰でも、何でも売っていい日」なのです。
国中がフリマになります。
誰でも道ばたで店を出していいのです。
この日の売り上げは、税務署もノータッチ!
■街ごとに違うルール
ユトレヒトなどは伝統的に4月29日の夕方から街中フリマになり、
オールナイトで繰り広げられます。
かれこれ10数年前、ユトレヒトに住んでいた時には、
友達と一緒に夜中まで寿司を売ったこともあります。
食べ物は、けっこう粗利大きいんですよ。
みんなビール飲みながら歩くから、つまみが欲しくなるのです。
ほんとは衛生法とかの関係で、食べ物売るのはいけないと思うんですが、
そこはお祭り、警察のオジサンも買っていってくれました 。
ロッテルダムのフリマは4月30日の朝から始まります。
■フリマにも上層階級と下層階級とがある
今日は、近所の広場に行ってみました。
10時に着いたときにはもう人とモノでごった返ししてました。
モノ、モノ、モノ。
服や靴、ビデオや本。
家具から便器まで。
子どもも自分のオモチャで「店」を開き、子ども同士で値下げ交渉したりするんですよ。
中には、「金魚すくい 1回1ユーロ」的なゲームをじぶんで考え、
売り歩いてる子もいます。
私が住んでいるエリアは、トルコやモロッコからの移民が多く、
階級でいうと低い方です。
ですので、売られてるものも、一見「ゴミの山」。
スノビッシュな人は、北の方の高級住宅街のフリマに出かけていったりしますが、
アーティストはひねくれものなので、
「じゃあそのゴミの山の中から、いかに掘り出しものを探せるか」
と燃えるのです。
■今日の収穫
私は、モロッコ系のお母さんから、手編みのショールと、キャミソール? を買いました。
計19ユーロ。値段交渉はせず、言い値で買いました。
トルコとかモロッコのようなイスラム圏からの移民女性は、
女性の社会進出の激しいオランダにあっては、異色の存在です。
ただ家にじっとしているだけの存在ですからね。
イスラム教の文化圏では、女性は一歩も外に出てはいけなかったり、
出歩くとしても全身真っ黒のブルカというケースが多いです。
この国でのイスラム系移民は、そこまで厳格ではないにせよ、
なるべくその慣習にそって暮らしています。
オランダ語を喋れないままという女性も多いです。
この手編みのお母さんも、オランダ語はカタコトでした。
ここのマーケットでこんな手編みのものをけっこうたくさん見かけたのは、
そんなイスラム社会が背景にあるかと思われます。
つまり、ずっと家にいて、暇なのです。
■19ユーロの価値と意味
さてこのお母さんは、これらを編むために、いったい何時間、
家のソファーに座り続けたのでしょうか。
私も編み物を趣味としてるので、
どれだけの時間がそこに存在したかわかります。
それで19ユーロなんて。
時給になんて換算できません。
たかが19ユーロでも、
仕事を持っていない(正確にいうと持ってはいけない)彼女にとっては、
かけがえのないお小遣いなのかもしれません。
いや、お金じゃないのかもしれない。
私がありがたく大事に使い、楽しむことこそを、
彼女は最も望んでいるのでしょう。
そう見たときに、お金はハートを換算するものではない事に気づきます。
どこかアートと似てるな、と思いました。
■日本にもこんな日があったらいいのにな
オランダの子ども達は幸せです。
「価値」と「意味」が違うという事を
直接の値段交渉を通して体で学ぶ機会が毎年与えられるのですから。
商業と貿易の国・オランダ基礎は、こんなところで鍛えられるのですね。
2011/05/01 03:23 | maki | No Comments