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岩手県陸前高田市を訪れた。
リアス式海岸の入江に位置している陸前高田市は大津波により壊滅的な被害を受けた。
砂浜に立ち並んでいた景勝地「高田松原」の松林は姿を消し、その残骸が痛々しく内陸深くに
積み重なっていた。
高台から町を見降ろすと、無数の瓦礫の向こうに海が見えた。
その穏やかな表情から、あの日の荒れ狂った姿を想像することは到底できなかった。
海岸線を北上していて驚いたのは、想像以上に津波が山林の地域まで押し寄せていたこと。
山林の地域では大抵が川の浸食が形成する谷間の低いところに集落が作られている為、
海と離れた地域でも容赦なく津波は上ってきて集落を飲み込んだ。
メディアでは大きな町の状況ばかりが取り上げられがちだが、実際にはリアス式海岸の入江
ごとに小さな集落が点在し、そのほとんどが壊滅の状態に追い込まれたことはあまり伝えられて
はいない。
そして、そのような小さな集落では未だに行方不明者の捜索や救済の手が届いてはいないのが
現実だろう。
町の郊外を歩いていた時、瓦礫の中に「小さな希望の光」を見つけた。
大きな板に張られた布に、町の住人達の励まし合う声が寄せられていた。
「この町にまた笑顔の花が咲くように・・・。」
「みんなの力を合わせれば必ず乗り越えられる・・・。」
「みんなで一緒に生きよう・・・。」
人影が見えなくなったこの町のどこかで、みんな必死に立ち上がろうとしている。
僕は町を出る前にどうしても”もう一度”見ておきたいものがあった。
それは川岸にポツンと取り残されていた一軒の家。
きっとどこからか津波で流されてきたのだろう。
既にボロボロになった家の壁には、大きく「壊さないで!!」という文字が書かれていた。
長い時間をたくさんの思い出と共に過ごしてきた大切な家。
そこには持ち主の強い想いが込められているような気がした。
僕はここを去る前にどうしてももう一度その姿を見ておきたかった。
そして家の前に辿り着いて驚いた。
「壊さないで!!」という文字が赤い×印で消され、「さよならわが家」と書かれている。
それはほんの数時間の間の出来事だった。
辛い現実を受け入れ、諦める決心をしたのだろうか・・・。
これを書いている時の家族の心情を思うと、とても心が痛んだ。
今回の災害でどれだけたくさんの人達が大切なものを失っただろう。
その本当の痛みは、災害を経験していない僕には知る由もない。
今はただ、もう少しの時間を乗り切ってほしいと願っている。
どんな時も辛い気持ちを落ち着かせ、自分を冷静にしてくれるのは「時間」だ。
たとえ明日が見えなくても、とにかく一日一日を頑張って乗り越えてほしい。