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地球の舳先から vol.340
チベット(ラダック)編 vol.5
さて主要な観光地も巡り、車は一路ラマユルへ。
途中休憩を取った小さな村であたたかいチャイを飲んだ。
クソがつくほど暑いが、ここは一応インド。生水系は避けるべし。
ふと呼吸が軽くなったのでガイドに聞くと、レーより200mほど標高が低く
このあたりは「Lower Leh」と呼ばれているらしかった。
ふと手の届く範囲にイヌがいた。
だらりと垂れさがった脚は片方に麻痺がきていて、よだれを垂らしている。
まさに狂犬病の「こんな犬を見たら近づくな」の特徴を完璧に備えている。
いきなり噛んできそうにはないが、噛まれたら死ぬのかと思うといただけない。
車は山というか崖道を登りつづけている。相変わらず結構なスピード。
なんだかとんでもないところへ行こうとしている気がしてきた頃、
とうとう「月世界」と称されるラマユルへ着いた。
大昔は湖だったのだそうで、確かにクレーターだらけの月面を思わせる。
「ラマユルゴンパへ行くぞ」とガイドが指さす方向を見て、
また崖登りか…と隠れてため息をつく。
どこかしらSF的な光景の中お参りを済ませると宿泊するゲストハウスへ。
外観もゴンパを模したのかこのあたりの住宅はこういった外観なのかわからないが
部屋も小ぢんまりとして綺麗だった。
家族経営のゲストハウスらしく、牛の散歩へ出かけていた男の子が
帰って来たり、お姉ちゃんが甲斐甲斐しくお茶を入れてくれたり。
かまどのある土間ではお母さんが今日のご飯を炊いている。
ラダックに来て初めてアルコールを取る。銘柄はGODFATHER…甘ったるい。
食事が終わるとお父さんとお母さんはリビングにやってきて、
話をしながら交代でマニ車(お経をとなえる行為と同等とされる)を回している。
ここは日本人代理店御用達のゲストハウスだったので、
滞在者は3組とも日本人だった。
屋上にビールを持ち込んでしばし歓談。
そのうちの1組のご夫婦は、考えられない距離を歩いてきたらしい。
前日が満月と、空の明るい日だったが、それでも結構な星が出ていた。
客室とは別に、シャワールームの隣にはお姉ちゃんの個室があった。
とはいっても、小さなデッドスペースに、ブルーシートをロープで吊ったテント状のもので
ホームレスの段ボールハウスを思い浮かべてもおかしくないモノである。
ちらりとのぞく中には寝具と、本やおもちゃの類が並べてあった。
懐っこい笑顔。貧しさなど、微塵も感じるわけがなかった。
どちらかといえば思い出したのは、小さいころ空き地に秘密基地を
建設しようとしたあの感じである。
そういえば、今回の旅で非常に重要なことがあった。
わたしは、突如英語が喋れるようになったのである。
いや、今までは、頭の中で文章を完璧に作って発話しないと通じないと思っていた。
それが、日本語英語色々混じったルー大柴英語で喋るようになると
異常なまでにラクになり、何も気負わずペラペラペラペラ喋るようになったのだった。
当然、ブロークン以前なわけだけれども、語学なんて気の持ちようだと実感した。
しまいにはガイドに「日本人は英語が喋れないのになんであんたは喋れるんだ?」
と聞かれるほど。確かにラダックへ行く日本人は年配の方が多めだろう。
「Old personはshyですからthey know English but not speak
but young people speak ですよしかもso fluent
まーI’m not so youngなのでso soっていうかso littleですけどねーハハハハ」
↑こんなもんである。何か文句がありますか。
今までもわたしは外国へ行くと(しかも英語が通じない国も多かったので)
頑なに日本語を喋り続けそれでも旅ぐらいどうにかなっていたのだが、
なにかしらひとつ視界が開けたような感じがしたのは、言うまでもない。
何事も、心ひとつの置きどころ。