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地球の舳先から vol.339
チベット(ラダック)編 vol.4
色黒にパンチパーマ的髪型に黒のグラサン。
どこのチンピラかと見まがうドライバーが運転する車のアクセルには
クマのぬいぐるみがぶら下がっていた。
これから2泊3日をかけて、ザンスカール方面に西、下ラダック地方へ。
車で楽ちん、と思っていたのは最初の一瞬だけだった。
とにかく、鼻歌を歌いながら、飛ばすのである。
その飛ばしっぷりが、軍隊の車列を追い越し車線しては軍車両の
間に無理やり入ったりだとか、車1台通れるくらいの崖っぷちを
普通に40キロオーバー(彼にとってはかなり徐行なのだろう)、など
冷や汗をかくものばかりである。
しかし当たり前だけれど慣れていた。
わたしが運転していたら、あの道はたぶん30回くらい死んでいるだろう。
そしてこのチンピラ風、軍隊の車両の間に突っ込んでいくときも窓を開け
相手のドライバーに「ジューーーーレーーーイっ」と手を振る。笑顔で。
(ラダックの言葉で「ジュレー」はあらゆるあいさつに使える便利な言葉)
クラクションも鳴らさず、苦笑で手を振りかえす軍人。
相変わらず、のどかなのか物々しいのかわからない人たち。
1本しかない舗装された幹線道路は、軍の拠点どうしを結ぶ軍事道路の
ようなもので、小さな村と軍施設が点々とする道路を駆け抜けていった。
途中のサスポルという所に洞窟があるというので車を降りると、やっぱり崖のぼりだった。
もう、ラダックへ来てから崖のぼりしかしていない気がする。高地トレーニング。
目以外の顔中をタオルで覆うという日除け技を身につけ、炎天下をゆく。
上りきったところにあった洞窟には一面に壁画が書いてあり、また涼しかった。
(瞑想するガイド(ここまで敬虔ではない。サービスショット)と、ドライバー。)
ガイドとわたしで先に出てまた道なき石の道を下って行くのだが
いつまでたっても出てこない人1名(ドライバー)。ガイドも心配した次の瞬間、
サーフィンでもするかのように斜面をショートカットで滑り降りてきた。
ブッダが力をくれたそうです。あ、そうですか…。
次に立ち寄ったのはラダックの中でもかなり大きな観光名所のアルチゴンパ。
しかしこのゴンパよりも、その直前に立ち寄った小さな町が非常に素晴らしかった。
門番がわりの仔馬に出迎えられ、民家に入っていったガイドがおじいさんを
連れて出てくる。おじいさんは鍵をあけてごく小さいゴンパを見せてくれた。
人が来た時だけ開けて見せているらしい。本当に敬虔でずっと何か唱えていた。
家の壁沿いを伝って村内を探検し、農作業中のおばあちゃんの笑顔にも出会う。
わたしの見たかったラダックが、そこにはあった。
そしてたくさんの、アンズの木。ラダック名物でもあり、また、旬でもある。
ガイドはおいしいアンズの木がわかるらしい。
レーに帰ったらアンズを買いにマーケットへ行こう、というような話をする。
車に戻ると例のやんちゃなドライバーが「あんずが食べたいか」と聞く。
なにとはなしに、うん、と答えると
ちょっとあんたらwwwwwwwww
わたし、そんなつもりで言ったんじゃないですからー!
すみませーん!あんずどろぼういますー!
そこへ、民家のおばあさんが通りかかる。
この難局(?)も、彼は塀の上からとびきり笑顔の「ジュレー!」で乗り切ったのでした。
旅は続く。