« | Home | »

2014/08/11

山形16:40

気圧の変化か10月末だというのに
とても、蒸し暑い。

小雨が降り今回の旅は
雨の山形めぐりとなった。

着ていた服が暑くてあつくてジャングルのようだ。
香里は山形に着くといつも立ち寄る喫茶店「ウエダ」に
向かった。
店に入るなり香里は「わたしのこと、覚えていますか?」と
店の店主に聞いた。「ウエダ」の店主は、初め、キョトンと
した顔をして香里を見た。

「はい、はい、覚えていますよ。東京から来たあの方ですよね」

「そう!あの席にいつも座ってた・・・今日もひとりですか?」

そうか、あの時の「ひとり」と今回の旅の「ひとり」は
違うのだけれども少し苦笑した顔で香里は「はい」と頷いた。

香里は目に見えないものに物語をつけて、それを本物のように
考えてしまう癖があった。
時々、それが本当なのか虚実なのか自分でも分からなく
なることがある。今、何に自分は反応していたのか、
何が原因で心がそうなってしまったのか、わからなくなるのだ。
そして結果的に自分が予想していた結末になりコトが終わる。

人は自分がイメージしたものしか現実に出来ない。
いいかえると、イメージ出来ないものは現実には
ならないのだ。
そう考えると今回の旅だって以前から計画しこの季節に行こうと
イメージしていた香里だった。
ただ、山形で何をするかはイメージしていなかった。
わざとしなかったかもしれない。
イメージして本物なのか虚実なのかわからなく自分を混乱させない
ためでもあるし、イメージしないことによって何が起きるか
わからない旅を楽しむといった考えもひとつあったからだ。

喫茶店「ウエダ」の店主は香里の顔を見るなり、こう言った。



「今日は笑ってないね。」


笑いたくても笑顔でいたくてもそういう心境にならず
自分を痛めつけるようなそんな香里がそこにいた。

 

2014/08/11 04:28 | shiho | No Comments