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2014/05/14

地球の舳先から vol.318
パリ2014編 vol.2

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パリへ行った。

飛行機を降り、顔をあげる。
真っ先に飛び込んでくるのは、あらゆるところに張り付けられた広告たち。
外国へ行ってもこんなもんばっかり気にしてる、と思いつつ
広告の仕事を捨てたいまのわたしにとっては、その性癖も
「ワーカホリック」ではなく「ただの趣味」にすぎないはずだった。

今では世界中で見慣れた、某・新進気鋭の企業のロゴマークに、
とある友人のことを思い出した。

なんでこんなときに、と思う。
ある種の不愉快さをもって。

パリへ行く、ということはわたしにとって、
それ以上でもそれ以下でもなく、ただ行くことだけが目的だったりする。

いつものようなやること見るものがハッキリしたお勉強のような旅でもなく
現実というか、それだけじゃなくすべてからの逃避であって
パリでの滞在中は一切のことをあまり考えたくないし、
日本にある一切のことを思い出したくない、と思っている。

それは別に、日常のいやなこととか不安なこととか
そういうマイナスなことばかりではなくて、
楽しいことも、ワクワクすることも、大好きなモノやヒトのことも
なにひとつ忘れていたい、と思うこともあるのだ。

なにかが足りない、だからパリへ来たがったのだし
その「なにか」の正体も、行く前から十分にわかっていた。

何の山も谷もない生活を(このわたしが)1年近くもしていた。
毎日が平坦である、ということすらもはや認識しなくなり
そんなはずはないのに、明日も明後日も1年後も
なにもなくおんなじ日々が続くのだろう、という安定感は、ときに絶望にもなる。
それもあくまで平坦な、感情の起伏をけして伴わない絶望感。

だから、パリへ着いた途端に感じた
胸を刺す痛みと、ある種の不愉快さに、
一瞬で情感のもどった自分にやや驚く。

やはり、わたしにとってはパリはそういうところだった。

ここへ来ると人格が変わるんなら、
間違いなく本当はそっちが主人格というか本能なのだろう。
ここで感じたことが、きっとわたしの本心なのだ。

気の休まらない旅になりそうだな…
いろいろな感情が一気に溢れて、深い溜息が漏れた。

3時台のパリは当然真っ暗で、しかも気温は7度だった。
コートしか入っていないスーツケースを転がして、
ガラス張りの建物から街へ。

 

2014/05/14 01:30 | yuu | No Comments