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2014/05/14

 

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春の雨が去り

春の風が訪れると

満開の山桜が風に身を委ね

旅たつ季節

 

春の風に乗り

どこからともなく歌声、

遠くの松林の中の小道を、

春の日差しを浴びて、

キラキラ光りながら、

大声で歌いながらママが歩いて来ます、

私の前まで来ると、

採りたてのワラビを差し出します、

 

『向こうの林には,

取りきれない程ワラビが出てるよ、

フキもあるしコゴミも出てたよ、

それじゃ今夜は,

山菜パーティーね!!』

 

山小屋の中に入ると、

早速にママは鍋にお湯を沸かし、

火を止めた鍋の中に灰を入れ、

よくかき混ぜながら採リたてのワラビを鍋の中に、

ワラビが一瞬綺麗な緑になると、

鍋にフタをして、

後は待つだけと言いながら、

自宅から持ってきた、

干しぶどうから作った天然酵母と、

ネットで取り寄せた粉の封を切り、

パン作りを始めます、

出来上がったパンの生地は、

ステンレスのボールに入れられ、

薪ストーブの前に寝かせ始めます、

今回の酵母菌はちょっと時間がかかるの、

そうね、

発酵が終わるまで4時間かくらいかな、

すべてが終わると、

ロッティーと外に出て、

森の中の庭の散歩が始まります、

ママの山の一日は、

何とも早く過ぎていきます、

 

『みんな偉いよ』

ママが庭の草木に声をかけます、

『あなたも偉いよ』

ママが枝の折れた桜の老木に、

声をかけます、

あれほど辛い季節だったはずなのに、

春の山に風が吹くたびに、

森の中に桜の花びらを、

旅たたせています、

水仙が咲き、

ムスカリが咲き、

雪柳が白い花をつけ、

庭中を埋め尽くしています、

山の春はまだまだ始まったばかりなのでしょうか、

霜が解けて柔らかくなった地面からは、

球根類が、

春の風を感じようと、

一斉に芽を出しています、

裏の小川では、

柔らかな雪解け水が、

春の日差しを浴びて、

気持ち良さそうに流れています、

 

又、

遠くの山から、

春風が吹いてきました、

山で過ごす一日は

それまでの日々の、

辛かったこと、

悲しかったこと、

総てを一瞬だけでも、

忘れさせてくれるかのように、

彼女のささくれだった思いを、

春風が撫でつけています。

2014/05/14 10:49 | watanabe | No Comments