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「深入り-tokyo-」ポストカード.
両面カラー/アラベール スノーホワイト200kg/1000部
5月.
先行して制作したフライヤーに続いて、
ポストカードも完成しました.
フライヤーとポストカード
これで東京展示用告知1セットになります.
新宿Place Mを中心に都内ギャラリーなどで
設置していただいて、配布開始になります.
さて、ポストカードについては昨年のときも
ちょっとこだわって作ったりしたので
今回もその辺りのことを書いてみようかなと思います.
まず、”アラベール スノーホワイト”という紙ですが
僕がいつもお願いしている印刷屋さんでとても人気の高い
非塗工紙です.
表面はマットで、沈み込むような黒を再現しつつ
画用紙のような凹凸感で、前回使用した
“ハイマッキンレー ディープマットスノー”と同じマット調でありながら
前者の「冷たさ」より少し「暖かさ、柔らかさ」を
感じられるような仕上がりになっています.
「深入り」という作品が、印画紙で構成されている…
ということを意識して、このアラベールを選択しました.
ずっと前から、使ってみたかった「勝負紙」はイメージ通りの仕上がりとなり
ぜひ手に取って触れていただければと思います.
と、出来たてのポストカードの紹介と
もう少し深く、「東京の」ポストカードについての話を…
写真展「自我の灰色-Tokyo Edition-」
片面カラー/厚手マット紙/500部
こちらは今ではもう、スクラップブックの中に残るのみと
なってしまった、1999年の僕の東京での
初個展のポストカードです.
現在のように手軽にデザインして印刷…というにはまだまだ
いろんな手間がかかる時代で、入稿から色校正
仕上がりの色やトーンを探りながらの作業で
紙のセレクトなどに気を回せなかった時代です.
カラー印刷もコストや敷居が高く
写真のトーンに気を配ることが精一杯で
きちんと管理できる色はただ「赤」くらい…
そんな感じでデザインしていたのを覚えています.
そんな稚拙なりに試行錯誤して出来上がったこの
「自我の灰色-Tokyo Edition-」のポストカードは
写真のトーンも、「赤」も予想以上の仕上がりで.
普通はその写真展が終われば、かなりの量の残りがあるものなのですが
その後の個展、イベントなどで配布していく中で
一番最初に在庫が無くなったのは、このポストカードでした.
このポストカードには僕が初めて東京で写真展をするために
イメージしていたトーンも望んだ色も、
紙の感触も全部入っていました.
それと一緒に、失うはずのなかったものもまた、そこに写っていて.
叶ったはずの新宿での写真展と、その準備のための制作物を
創ることは、そのまま失ったものや、途絶えたり終わってしまった事を
再確認してく作業にも繋がっていて.
その想いに応えるために、互い笑顔で迎えられるために、
目指したはずの夢や憧れを、自らの手で躙り曇らせてしまったこと.
このポストカードの「赤」は今でもはっきりと
鮮明に、強く印象に残る色になっています.
そういう色でなければならない理由も…
ずっと残っている色.
忘れてはいけない色.
1999年から2014年.
今回ポストカードを制作するにあたって
ふたたびこの新宿、四谷界隈の地図を描くことや
地名、店名を描き入れることの意味…
ギャラリーMoleとPlaceMの位置関係とを
あらためて感じたりもして.
僕はどうしてもあの日の「赤」を
始まりでもあり、終わりでもあった、
あの日の色を、この新しいポストカードに使いたかった.
7/19と7/14…日程が近いのも
これは偶然ではありません.
致命的な過ちの末に全部を失いながら、
曇ったり、濁ったりを自覚しながらなお強行した
初めての新宿を、僕は早く追い越してしまいたかった.
たったそれだけのために、これだけの時間と
遠回りが必要になってしまったこと.
このポストカードの「赤」はあの日の色.
そんな意味の「赤」でもあります.
取り返しのつかないものってきっとあって
それでもまだ、あの日の自分..というものに
追い付き、越えて行ける、そんな機会を得られること.
歳を重ねるにつれ見えなくなって諦めたり、
見失ったままでいるよりはずっと良いのかもしれません.
希望から始まって、絶望と裏切りで終わったことと
絶望が始まりでも何かへ、誰かへと繋がっていけることと
今はその両方を知っているから
だから望んだのはあの日と同じ色…
ここまで来れたから言えることでもあります.