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2011/03/19

 地震のあった3月11日(金)14時45分頃、私は青山のスタジオでCDの
ジャケット&宣伝用写真の撮影の最中でした。 スタジオはとてもしっかりした
造りの半地下で、それ程の被害とも思わずに最後まで撮影を終え、暢気に
スタジオを出たら…。
 渋谷方面に向かう無言の人、人、人…。交通機関はすべてストップ。コンビニ
には非常食を求める長蛇の列。 携帯はメールは通じるけれど、通話はダメ。
「帰宅難民」という言葉が頭をよぎり、焦りました。
たまたま今日都内の本社勤務だった夫と、公衆電話で何とか連絡を取り、
本社でホテルを取ってくれたというので、外苑前から芝大門まで歩きました。
 iPhoneのマップのナビ機能が本当に助かりました!それでも不安な道のり。
PHS同士は何とか通じるようで、札幌の実家と連絡をとり、励まされながら
歩きました。

 一夜明けて千葉県の自宅に戻るため、大混雑の山手線で上野駅に辿り
着いたら常磐線に乗る人たちの列が何千人も!半ばパニック状態だったので
ここに居るよりはマシ、と判断し、歩いて北千住に向かいました。そして
無事自宅行きの常磐線に乗り、やっと夕方帰宅しました。

 ドアを開けた途端夫が「ああ。。。やっぱり。。。」とため息。玄関の置物など
が割れて散乱してました。入ってすぐの寝室はタンスが倒れてドアが開かず。

 居間に入ると台所の食器が散乱、ほとんど割れてます。CDラックも全倒。
ピアノの部屋に入って唖然。グランドピアノが動いて横の壁に突き刺さり破壊。
譜面は散乱して足の踏み場なし。自宅はマンションの11階なので下の階より
揺れがひどかったのでしょう。

 疲れと被害の大きさに、しばし立ち尽くしましたが、少しづつ片付けをはじめ、
日曜あたりにはやっと家の中も落ち着いて、地震前の状態に戻りました。

 週明けの月曜は楽器店でのレッスンの予定でしたが、全店休講。
ここから怒涛の演奏キャンセルラッシュが続きました。

 あの金曜から1週間後の昨晩、地震後初の演奏仕事でした。お客様が
「忘れてた日常を取り戻せた感じ」と言って下さって、ハッとしました。そうなんです、
演奏するのも、聴くのも、日常。日常の中で少し非日常に行ける扉のようなもの。。。

 実は地震後1週間ほとんど音楽を聴ける精神状態でありませんでした。自分から
音楽に向かえない。でも昨晩演奏した後には、もっともっと演奏したい、やっぱり演奏
しないと元気に生活できない、と前向きな気持ちになれている自分がいました。
 これからも、自分のできる範囲で、自分の演奏で忘れていた日常を取り戻せる
人たちが少しでも居てくれたら・・・と思いました。

 仲間のジャズミュージシャンやお店の間ではライブをすべきか、中止すべきか、
ということで今も悩んでいる方々が沢山います。休んでしまうと生活が立ち行か
なくなってしまう、、、でも世間は自粛ムードだし、計画停電で営業の見通しも
立たない。。。

 結論から言うと、出来る状況にある人はやったほうがいいのだと思います。
日常生活を送れる人は日常を、送れない人は無理をしない。
「いまミュージシャンがすべきことは」とか大それた問題じゃなくて、
日常を送れる人が当たり前に送ることが、復興への希望になり、ひいては
全体の生活や経済活動が一日も早く健全になることにつながるのだと思うのです。

 「自分のできる範囲の日常を精一杯送る。」私はこの姿勢で
やっていきたいと思います。

2011/03/19 07:48 | toyama | No Comments