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2014/02/17

地球の舳先から vol.308
ミャンマー編 vol.6

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ミャンマー人のしゃべる英語がわからない。
自分がしゃべる分には、わたしはたいがいどこの国へ行っても日本語をしゃべりつづけているが
身振り手振りと相手の好意(他力本願)により、疎通がはかれなかったことはほとんどない。
が、聞き取ることがまったく出来ないとなると厄介だ。

2日目のパガンでは、気球に乗って遺跡群を空から見ることにしていた。
気球のチケットを出し「明日これに乗るんですけど集合時間はワッ タイム バス」(←ほぼ日本語)
と聞くと、フロントの人が「ボキ?」と言う。
「ぼ、ボキ?」と聞き返しても、「ボキ」だという。 …「booking」だった。
「ホッカッ?」としきりに言ってくるコンシェルジュも、「Horse Car」(馬車)だった。
ミャンマー訛りというか、揮発音が強めに出るのかもしれない。ふむ。

出発は5時40分だという。「ソー アーリー?リアリー?」と言うとノートに同じ時間を書かれた。
そんなわけでまたしても5時に起き、ツアー会社の差し向けた窓のはまっていないバスに乗る。
極寒かつ真っ暗闇の中、屋外であたたかい紅茶を出されてまた闇の中のティータイム。

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今まで乗ってきたバスに気球をくくりつけ、職人工が火を入れ始める。
気球を組み立てるところを始めてみた。なんだか理科の実験みたい。
どこかの国で気球が落ちていたが、この高級ツアーは3万円もしたので大丈夫だろう。
操縦士だけヨーロッパ人。乾季しか気球ツアーはないらしいので、出稼ぎに来るのだろうか。

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気球というのは上下運動しかしないらしい。
風向きを見ながら上下運動だけで目的の場所へ進めるのだ、とは、そんな解説(英語)がわかるわけもなく、秋の気仙沼の旅を偶然ご一緒した気球士に聞いた話。
くるくると空が表情を変えていく。
紫色にけむる朝もや。眼下にひろがる雲の薄膜。朝日が照らす褐色の乾燥地帯。
やがて無数の、まさに無数の仏塔や遺跡群があらわになる。なんだこれは。スゲー。

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この一帯の観光地化政策により、居住していた多くの人が離れたニューパガンに移住させられたというが、ところどころ、ほんの少しだけ小屋のような民家が残っており、毎日のことだろうに地上から子どもたちが気球を追いかけてくる。
約1時間ほど空の旅を楽しむと、気球は見事に空き地に着陸した。が、操縦士の英語がよくわからないわたしは、伏せるのが遅れて後頭部から大木の枝の合間に突っ込んだ。
ヘルメットをしていたので怪我はなかったが、その日は一日中後頭部からレモンバームか何かの香りがしていた…。英語大事。すこしだけ改心する。

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(力仕事をするミャンマー人たち。我々は柵の中で朝食…)

気球の着陸をどこで見ているのか、お土産売りがわらわらと数人集まってくる。
気球から降りたあとは朝日の中でシャンパンを飲むのがこのコースのハイライトなのだが、
テーブルを囲んで丸く縄のようなものがぐるりと張られ、
お土産売りはそこから中に入らないという子どものような決まりごとがあるらしい。

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帰りがけ、控えめに言っても塗り絵以下のレベルの絵葉書を手にバスの下まで近づく子ども。
買う気にはならないので、クッキーを渡すともうひとりが「私は?!」と見つめてくる。
…や、友達じゃなかったのかよ。分け与えようよ。仏教でしょ。
いや、分け与えるのはキリスト教だったか?半端な知識に自分が混乱しつつ、
その子にも同じだけ渡すと、ふたりは飛び跳ねながら消えていった。
あ、その絵は、もういいんだ…そうですか・・・と、どうせ買う気もないのに微妙な気分になる。

まだ朝食を提供している時間にホテルに帰ってきたので、ミャンマーへ来て初めて、
どこのホテルもたいがい豪華だという朝食ブッフェを食べることが出来た。確かに豪華だった。
エッグステーションでオムレツも焼いてもらった。

その後、ホテルでタクシーを手配してもらい、これまたパガン観光の「仕様」といってもいい定番中の定番、ポッパ山へ。

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(あれに登る)

こちらも参道をあがった山の上にある寺院(?)なのだが、心惹かれることはなかった。
お札をべたべたと貼り付けた展示物、アントニオ猪木さんそっくりの仏像など
あまり有難味はない別の見所はあるのだが、とにかくいろいろと品がない。
「掃除をしている」といって喜捨を要求する人(ミャンマーにもいた!)は人が近づくと掃除のふりを始める。
汚れた参道や廊下には、バカづらの猿が大量に走り回り、観光客で溢れる頂上は窮屈だった。
「拝金寺院」という単語が思い浮かんだ。完全に観光の順序を間違えたのだ。
あの清廉なるマンダレーヒルへ上った直ぐあとでは、すべてが俗っぽく見えて仕方なかった。

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(お札が貼ってある。賽銭なのだろうがなんとも下品)

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(ガラが悪すぎて有難味がない何かの像)

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(間抜けな顔の猿の軍団がバナナに歓喜)

ただ、運転手はいい人だった。
車を止めて麓の喫茶店のようなところで待っていたのだが、わたしが思ったよりも
ずっと早く帰ってきたために、「ちょっと待ってくれるか?」と聞いてくる。
見たことのない果物や、安全祈願のためなのかフロントミラーに飾る花などを買い出してきた。
ようやく日差しがあたたかいと感じられるくらいの昼過ぎに、そそくさとポッパ山を出た。
帰り道には思わぬお楽しみがついていたのだが、それはまた次回。

つづく

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2014/02/17 08:00 | yuu | No Comments