日本の映画界では洋画離れ、字幕離れがよく話題になります。理由はそれなりに分析されていますし、対策も考えられたりしています。
でも決定打はない。まあ、当然です。映画館に映画を見に行く習慣が全くない人に、いくら「映画は映画館で見るのが一番」と言ったってしょうがない。行ってさえくれれば「また何か見たいな」と思う可能性が出てきますが、問題は恐らくそれ以前の状態でしょう。
そこで話題作りをする。レッドカーペットイベントに舞台挨拶。これも対策のうちでしょう。テレビやネットでその模様が流れれば「あ~、話題になってるんだ」と認知はする。でも、そう思った人が映画館に足を運ぶ確率が上がるというほどでもない。こうしたイベントは実際に行く人、行った人にはインパクトが強いわけですが、行けない人、行かない人には芸能ニュースの小ネタになるだけです。
そこで考えました。知的好奇心をくすぐる作戦です。字幕版を2種類作って同じシネコンの中でA版とB版の字幕で上映する。A版は従来の字幕でB版は字数増量気味だけど、A版では泣く泣く落としてしまった情報を入れる。要するにA版は1秒=4文字目安の字幕、B版は1秒=5~6文字目安といった具合ですが、1回見ている人が見る字幕であれば、それでも追えるのではないでしょうか。(「やあ」「おはよう」といった字幕は文字数を増やす必要はないわけで、あくまで泣く泣く落とした情報を詰め込むわけです。)場合によってはさらに情報増量版のC版まで作って上映する。(C版は無茶かな…)
実際、A版だけしか見ない人の方が多いでしょう。映画はリピーターを生みにくい商品です。時間をかけて、お金を払って、物理的には何も残らない商品だから仕方ありません。特に「時間をかける」というのが現代では大変になります。
だからこそ「時間をかけて」見に来てくれる人を大切にする。映画の場合、「大切にする」というのは「楽しんでもらう」ことです。A版を見て「楽しかった」という人の中に「それで終わり」ではなく「また見たい」という人も出てきます。そういう人達が2回目に見るのにちょうどいい字幕版がB版です。
この場合、字幕をフィルムに焼き付けず、演劇のようにLEDで表示する方式をついでに考えればコストを節約できるでしょう。吹替え版を何種類も作るのは大変ですが、字幕ならそれほどかかりません。
リピーター割引をしてもいいでしょう。こうしてA版とB版を見ると、同じ作品1つでもムリなく、より深く理解できる映画鑑賞になります。DVDやブルーレイでも字幕を2バージョン入れるのは簡単だし。
単なるアイデアですが、実行不可能でもないだろうし、こうした「話題作り」の方が知的好奇心をくすぐるものではないかと思ったりします。
こんな話をすると「お前の字幕、いつも欲張りすぎだから、こんな事を言ってるんだろ」と言われるかな。でも、やってみたっていいんじゃない?ただメディア露出を増やす話題作りより、ひとまずは話題になるだろうし。
この件は、「スニークプレビュー」とか「explicitとclean」といったキーワードにつながるのですが、今回は、ひとまずここまでにします。
2011/1/13(木)午前6:30@WOWOW(初回放送2010/10/5(火)深夜0:50)
THE ROLLING STONES Live at the Max @IMDB
またまたストーンズです。「ザ・ローリング・ストーンズ・アット・ザ・マックス」としてソフト化されているライブですが、どうやらソフトの方は字幕無しっぽいです(未確認)。監督は音楽ビデオの世界で評価され劇場用映画に進出するパターンの走りの1人、ジュリアン・テンプル。(彼の監督作ではセックス・ピストルズの「グレート・ロックンロール・スウィンドル」も、過去に翻訳しています。)
といっても、このライブの見どころは監督の演出ではもちろんなく、元気なオヤジ達。当時のミック・ジャガーは48歳か49歳。チョイ悪オヤジどころかスゴ悪オヤジです。ステージに巨大な風船で作られた犬が登場するかと思えば、その犬のオスの部分を妙にしっかり作ってあったり(別に見苦しくも何ともありませんが)、遊び心が半端じゃありません。時代の反逆児の面目躍如といったエネルギッシュなライブです。
このライブはIMAX上映用に撮影され、実際に日本でも新宿の東京アイマックス・シアター(1997年11月公開)などで上映されました。
字幕はメンバー紹介程度のMCがほとんどで80枚弱でしたが、パワー全開のステージに引き込まれました。未見の人は是非、一度は見てほしい作品です。