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2013/08/30

■古賀英樹写真展「深入り」図録
A判変形210×280/中綴じ/モノクロ16ページ.

今回のコラムがもしかすると個展前最後の回に
なるかもしれないですね.そのつもりで書きます.

作品プリント、先行フライヤー、ポストカードと来て
最後の制作物になる写真展図録も到着しました.
ブログの方でも書いてますが、僕自身としては初の物販…
少し複雑な気持ちしてますが、会場での限定で申し訳なさそうに販売します.

先着順になりますが、特典として2Lプリントを封入します.
何が入っているかは開けてからのお楽しみ…
喜んでもらえるかどうかは、わからないですけれど…

ひとつネタバレですが封入されてたプリントが
今回の写真展の作品ではなかったら・・・
それは今までも、これからもおそらく作品化することはない
「レアプリント」だと思ってください.

そんな展示前、これはいつになっても変わらないのですが、
どんなに冷静になって準備を進めて把握とか、コントロールという言葉を
使ったり、そうしようと意識してギリギリまで抑えようとしていたとしても、

そこから来る高揚感と焦燥..理想と現実、仕事と生活、理性と衝動、作品創りとが
綯い交ぜぐちゃぐちゃになって、生活や思考のリズムそのものが
狂い始めているような感覚はずっとあったりします…

ほんとのところ、これが僕的には写真展前の本来の姿というか…本性のようなもので
そこまで行けばもう小賢しい写真論とか芸術論などは何処かへ吹っ飛んでしまっていて
そこから先は本能のみというか…正直そのときの自分は
ちょっとどうかしてるかな…と自覚もあったりするのですが

情緒不安定や不安、不眠とかも伴うのだけれど
そこから延々出て来るエネルギーみたいものが
今「生きている」ってことを強く実感させてくれているような気もしていて、
そういうのって、つくづく救われ難いものだなーと思います.

それでもいつかみたいに、今生きてるのか死んでるのかも
解らないまま、なんとなく芸術しているような気になってるよりはずっといい.
創り、伝えるということをやってる以上「どうかしている」のも
それはそれで良い気持ちの加減なのではないかと.

それで、いつも僕は個展の時は作家肖像と
一遍の詩文を書いて作品と共に展示して来てました.

この写真は僕の前回の個展…12年前になりますが
「自己嫌悪病棟 case1夜来るもの」での肖像写真です.

この個展のときの作品で僕的には直接的で直情的に
「抉る」という指向を持った作品としては出し尽くしたかな…
という感触がありました.制作も心身共に相当キツかったです.

だから、自分自身を撮る肖像用の写真ももう出せるところまで出す
というか晒せるところまで出してしまおうと…そんなふうに
思ってこの写真を創りました.

「創った」というのは適切ではありませんね.
これに重ねてある精神科の「診断書」は作品用に意図的に
出されたものではないし、当然ながら公開しようとして
保管していたものでもない…

気持ちや想いの絶えず行き交う場所に身を置いて
撮り続けて来た自分が、それを作品にして世間、外へ向けて
展示をしようとするとき、それは作家である僕自身もまた
自分だけが無傷でいられるものではないのだと、
そう伝えたかったのもきっとあっただろうと思います.

この個展の詩文で僕はこう書いています
〜(前略)求める心を止められないまま
自己嫌悪の病棟は夜にそびえる〜
今となっては・・・な言葉だと自分でも思いますが
このときも結局は「解ってもらうこと」を「求める」ことからは
離れられないでいる自分がよく解ります.

その時の自分を否定するつもりはないし、仕上げた作品は
今でも行き着くとこまでは行けたという自負はそれなりにあって.

だけど直接に刃そのものを突き付けて、本物の病名を使って
ほら痛いでしょう、切ないですよね解りますよね..解ってください…
それは表向き、想いと向き合って撮られた作品です、キツい思いして創りました..
という体裁は整うのかもしれない.

だけどそれは同時に自分の「求めているもの」と同じものを
観る側にも「それ」を要求しているのと同様で…ご丁寧に解説までつけて.
それはやっぱり作者側のエゴ..というより僕自身の甘えだと思うから.

そういうところからは離れたい気持ちもあって
今回の写真展では肖像も詩文も添えません.

結果として返って来るものは自分の望んだものではないかもしれない
後に手にするものは求めているものとは違うかもしれない
かつて自分の方から切りつけていくようなものから
逆に何処からか刃が突き付けられることに変わるかもしれない.

でもそれは、ほんとはその場所こそが、絶えず想いの行き交う
そういう場所なのではないか…

もっとセンスや才能ある作家ならとっくに辿り着けていた場所に
僕はそこに行き着くのに12年かかって..まだ届きそうにも無い…
そういうことなのだと思います.

思いも寄らぬ方角から来て、予想外のとこに突き刺さるもの…
むしろそれこそが、ずっと残り続けるものになるのかもしれません
必要なのは覚悟…それは作家側にとっても、観る側にとっても.

2013/08/30 12:22 | hideki | No Comments