« コラム更新に関するお知らせ | Home | 殿!新たな刺客が送り込まれてくるようですぞ… »
前回はキバキバ肉食魚のピラニアのことを書いたので、今回はカワイイヤツを紹介するさ。
あ、ちなみに、ピラニアは唐揚げが美味いらしく「フグとタイを足して2で割ったような味」らしい。やはり人間を食っている魚は味もスゴイのだ。ほんとかよ。
今日は、コソコソと隠れて繁殖させている魚を、なじみの店へ持って行った。殖えたのでおすそ分け、という夕飯のおかずを作りすぎた隣の奥様な感じなのだ。
持っていったのは「熱帯メダカ」である。「である」と言われても、はあ、そうですか、くらいの受け答えしか出来なくて困ると思う。それくらい知っているのだ。だから今から教えます。
正式名称は「シンプソニクティス・サンタナエ」という魚。なんじゃそりゃ。
飼っている本人ですら、覚えることが怪しい名前の魚である。前回紹介したピラニアが種類によっては50センチ以上にもなって筋肉モリモリのキバズラリのアゴをカタカタいわせているのに対し、この魚は5センチ以下の小型熱帯魚。南米出身です。
名前が意味わからんのは日本名がないからで、この意味不明名前は世界共通の学術的魚類名。
南米にはバケツ口ナマズやピラニアばかりいると思ったら大間違いで、湿地のちょっとした水溜りにはメダカのような宝石魚が結構いるのである。同じように、アフリカにもいる。これはその昔大陸がつながっていたことを物語っている。
彼らの特徴その1は、すんごくキレイな宝石魚なことだ。蛍光色ギトギトの大阪のおばちゃんふうの魚が多い。
そして特徴その2は、キレイな花は…というように寿命が短い。1年で死ぬ。これは、住んでいる場所が、雨季と乾季がある場所なので、乾季になると水が干上がりミイラ化して死んでしまうからだ。水槽の中では乾季はないが1年半ほどの寿命です。
そして特徴その3、この特徴こそがこの魚の最大の特徴であり、今回、このコラムを読んで一番あなたの頭の片隅の知識になる「お、スゲェな」と思えることである。
特徴2で「雨季と乾季のある場所に住んでおり、乾季になると水が干上がりミイラ化死する、と書いた。よく考えて欲しい。ミイラ化して死んでしまっては子孫繁栄できないのである。そもそも、魚なので水がないと生きられないのね。
とかいったって全部の水がなくなるわけじゃないんでしょお?どっかに干上がらない水溜りがあって、そこで平和に次の雨季を待つんでしょ?たいしたことねーよ。
っと思うのが普通だが、この魚たちは、干上がって確実に死ぬ。しかし、雨季の間に1日に数粒ずつ毎日産み落とされた「卵」は土中で乾季の間乾燥に耐え、雨季が来てまた水溜りができると、生まれるのである。
親が死んでも子供は残る。である。乾季の間、土の中でヒッソリと乾燥に耐える直径1ミリほどの小さな卵は、着々とその小さなカプセル(卵)の中で発生して赤ちゃんの形になり、雨季を待つ。次の雨季の水に刺激されて生まれるのである。卵は次の世代へつながる命のカプセルなのだ。
同じようなシステムの生き物に田んぼに勝手にわいてくるミジンコがいる。ミジンコも休耕田では死ぬが卵は土の中でひたすら田んぼに再び水が来るのを待っているのである。
熱帯メダカたちは、飼育化でも「人工的な乾季」が必要で、これがメンドクサイ。産卵床を準備して、定期的にこれを目の細かい網で掬って水分を取り除いた後で、袋などに入れて3ヶ月くらい乾燥放置するのである。この時、放置時の湿気がなさ過ぎると卵はさすがに干からびてしまうし、水気がありすぎても乾季の状態にはならないので、卵はカビてしまったりする。
さらに、種類によって住んでいる場所が違うため、その種類ごとに乾燥放置する日数が違うのである。早いもので3ヶ月放置、長いものは半年。半年<6ヶ月>も放置していると、放置したこと自体を忘れてしまう。
この放置する日数のタイミングが合わないと赤ちゃんは生まれないのである。そのため、そろそろかな?と思ったら、袋から卵を取り出して、虫眼鏡で観察する。小さな卵の中に赤ちゃんの眼が出来ていて、こちらと視線が合ったならゴー!である。水に入れて100回くらいかき回してやれば(雨季の水が来たよ!の再現)、赤ちゃんが生まれる。
この魚たちは、そんな普通に生活している人たちからしたらゼッタイに関わることのないだろう特殊な生態を持っている。そんな魚がいるなんて知らなかったでしょ?
卵の放置を利用して、この放置期間中に卵を郵便で送ってマニアたちは交換をしたりしている。封筒に詰めて送ればいいのだから、生きている魚を梱包して送るよりずっとラクなのだ。国際間での交換も盛んである。