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去る、12月5, 6日の二日間、
「幸福度に関する国際カンファレンス」なるものが、
政策研究大学院大学という、大学なのか大学院なのか、
なんのこっちゃかよくわからない場所で開催された。
(実際には、学部を置かない大学院だけの大学のこと)
「幸福」を指標化しようという動きは、いま世界中で活発化している。
指標にならなければ、政策に反映できない、というのがその根拠だ。
それ以前に、世界がそんなに「幸福」に飢えている、ということでもある。
これまで国際社会は、GDPに代表される経済指標の他に、
さまざまな社会発展の度合いを測るための指標を開発してきた。
例えば、国連のHDI(Human Development Index)では、
GDPに加えて、教育と健康(平均余命)を指数として導入した。
また、民間企業や団体も、独自の基準で幸福を測ろうと試行錯誤している。
イギリスの環境保護団体は、HPI(Happy Planet Index)を考案し、
アメリカのギャラップ社は、毎年、世界幸福度調査を実施している。
いずれの指標でも上位に来る国もあれば、
指標によっては順位が大幅に変動する国もある。
ちなみに、日本は後者の典型的な例だ。
そんな中、昨今のブータンブームに乗って、いま、注目を集めているのが、
ブータンのGNH(Gross National Happiness)という考え方。
国民の97%が幸せな国、なんてワイドショー的な文句を、
どこかで耳にしたことがある方も多いのではないだろうか。
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先のカンファレンスの冒頭、基調講演に立ったのは、
ブータンのGNH委員会長官、カルマ・ツェテーム氏。
氏は、GNH政策を、
「40年も前から、意図的に他の国と違う道を選択してきた」と語る。
その言葉通り、ブータンのGNHへの取り組みは、
先代国王が即位した直後、1970年代初頭まで遡る。
あまり細かいことを書くつもりはないが、
ブータンのGNHは、大きく、4本の柱と9つの重点課題から成る。
まず、4本の柱とは、次の4つ。
「公正で持続可能な社会経済発展」
「伝統文化保全とその促進」
「自然環境保全」
「良い統治」
実は、GNHの考え方が生まれてからしばらくの間は、
この4本の柱のほかには、GNHを測る指標のようなものは何も無かった。
近年、ブータンでも、国民の幸福度、あるいは、豊かさを測る指標、
といったものが必要、という趨勢が強くなり、
2008年から、9つの重点課題を設定することになったのだ。
「暮らし向き(Living Standard)」
「健康(Health)」
「教育(Education)」
「コミュニティの活力(Community Vitality)」
「良い政治(Good Governance)」
「時間の使い方(Time Use)」
「文化の多様性(Culture)」
「生態系(Ecology)」
「心の健康(Psychological Wellbeing)」
これら、9点について、それぞれ、指標化するための質問項目があり、
それらを踏まえて、国民の「幸福」を測ろうという試みがはじまっている。
参考文献:
枝廣淳子 et al.(2011)『GNH(国民総幸福): みんなでつくる幸せ社会へ』
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そんな中、日本国内でも、「幸福」を測ろうという動きが起こっている。
先だっては、法政大学の坂本先生を中心とした研究チームが、
47都道府県の幸福度ランキングなるものを発表した。
様々な社会経済指標で得点を付して、作成されたこのランキング。
実際中身を見てみると、幸福度を測ることそのものよりも、
ランキングを作ることが目的、かのように自分には見えてしまったのだが…
ちなみに、1位は福井県、以下、富山、石川と北陸の県が続く。
一方、最下位は大阪府で、東京都は38位だそうだ。
自分が住んだことのある宮城、鹿児島はそれぞれ36位、35位。
偶然にも、東京も含めて、随分と近いところに固まっている。
全くの余談だが、北海道に、その名も「幸福駅」という駅がある。
そして、この土地は、幸福度1位の福井県からの移住者が多いそうだ。
関連があるのかないのか、そのあたりは不明だが…
70年代ブームの幸福駅、人気再燃│asahi.com(朝日新聞社)
さて、日本政府も本腰を入れて、指標化の取り組みをはじめている。
内閣府が組織した、幸福度に関する研究会は、
大阪大学の山内先生を中心に1年に渡って会議を重ね、
先日のカンファレンスに際して、その研究会報告が公開された。
中身をまだ読み込めてはいないが、
社会経済状況、心身の健康、関係性、を3つの柱として掲げ、
それらを下支えする要素として、持続可能性を考慮しているようだ。
また、地方自治体単位での動きもある。
東京都荒川区では、GAH(Gross Arakawa Happiness)という、
冗談のような本気の取り組みを進めている。
それぞれ、リンクを貼っておいたので、
興味がある方は、是非、各々で中身を参照していただきたい。
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と、ここまで書いてきていまさら言うのもなんだが、
正直、筆者は、たしかにブータンの研究をしているものの、
ブータンのGNHの研究をしているわけではない。
それは、そもそも「幸福」という極めてあやふやなものを求めて、
かくも右往左往する人々の姿に、少し冷めてしまっているから、
かもしれない。
ひとつ、勘違いしてほしくないのは、
「幸福」を測ろうと努力することと、これからも「幸福」であることは、
必ずしもイコールではない、ということだ。
「幸福」は、果たして「見える化」してしまってよいものなのか。
そこに、本当に「幸福」の正体があるのか。
それは、誰にもわからない。
さて。
今日はクリスマス。
聖夜に「幸福」について考えを巡らせることは、
果たして、「幸福」なのかどうなのか。
答えはきっと、神のみぞ知る、といったところだろうか。