« ごらいじょう ありがとうございましタ。 | Home | しばらくお休みします。 »
ヒョウガ君は、今僕の家に居候しているドラゴンですが、生まれたのは大阪です。
もともと、彼は僕が中学時代から書いていた剣と魔法の世界の小説に出ていた脇役キャラクターでして、彼を、僕のジャグリングのサイト、「ドラゴンの挑戦」のマスコットに採用してから、僕にとっては妙に愛着が湧いてきました。
そんな彼が、「仲間の魔導師の『ワープ』の魔法の失敗で」この世界に迷い込んだのは、僕がJJF2002に出場し、しかも、大学生として、バイトやら実験のレポートやら就職活動に忙しくなり、こんな僕でも「少し」ジャグリングから離れていた時期のことです。
そもそもですが、僕は着ぐるみというものの存在にかなり興味がありました。
「なんで?」と聞かれるとすごく返事に困ってしまうのですが、幼少時代、むしろ逆に、着ぐるみという得体の知れないものは怖くて嫌いだったように思います。
多分、何かのきっかけでそれが逆に好きになったのか、きっかけは覚えていませんが、高校時代には、もう既に「大学に入ったら着ぐるみのバイトをしてやるんだ!」とずっと思っていたくらいです。
大学に入り、ジャグリングサークルに入った後も、バイト誌で着ぐるみのバイトを探したりしていましたが、基本的にバイト誌にのっている着ぐるみのアルバイトって、「●●レンジャー」みたいなヒーロー戦隊ものの募集だったりするんですよね。
一度そのバイトもやってみましたが、やっぱり、そういうのではなくて、遊園地とかにいるファンシーな着ぐるみのほうがやってみたくて、
イメージと違ったのですぐにやめてしまったと思います。
割と巨漢な僕だったりしますが、こういうファンシーなものにあこがれたりしているんです。
見るからにいけいけなにーちゃんがびっくりドンキーでメリーゴーランド(パフェ)食っているのと同じくらいギャップがありますが、事実なんだから仕方ないです。
ところが、インターネットで探してみると、やはり同じ思いの人はごく少数ながらも存在しまして、(その存在を知れただけでもうれしかったのですが)運よく割と近くにそういう人がいたので、オフ会などで顔を合わせたりなんかをして、どうやったら着ぐるみを作ることができるのかの話をしていたものです。
その彼は、市販されている着ぐるみを参考に、自分でも着ぐるみを作ってしまうくらいの達人でしたが、さすがに僕は自分では作る気も起こらず、(というか、「できないだろう」と思っていた)どうやったら自分の着ぐるみを持つことができるのか、ということを妄想しているだけでした。
そんなある日。
「ドラゴン」をテーマにしたとあるコミュニティがあったのですが、その中で、一切着ぐるみには興味がなさそうだった人が、「実はドラゴンの着ぐるみの自作をはじめまして・・・・・・」というコメントがありまして、その言葉に、なぜか奮い立たせられた記憶があります。
僕のほうがその人より前から着ぐるみが欲しい欲しいと言っていながら、一切行動を起こしていなかったことへの後悔と、欲しいと思っていながら自分から行動しないで、後から来た人のほうが先に僕の欲しいものを手に入れてしまうことへの嫉妬だったんでしょうか。
今考えてみてもよくわからない動機ですが、「欲しい」と思うだけだったものが行動に移ったのだから、これってひとつの転換点ですよね。
そして、ここで頼りになったのが、実はジャグリングだったのです。正確には、ジャグリングで培った人脈です。
大学のサークルで、月に2回ほど、近くの小学校でジャグリング教室を行うというものがありまして、そこを主宰されているお母さん方に
「実は、着ぐるみを作りたいんですが、誰か裁縫に長けた方はいらっしゃいませんでしょうか」
と聞いてみたところ、
「ほな、私の知り合いに業務用ミシンを持っている人がいるから、その人に頼んでみよか?」
という話に。
なんとありがたい!!
型紙は、着ぐるみの知り合いから借り受けた市販されている着ぐるみを参考に作ってもらいます。
布地は「ちょっと鱗っぽいから」という理由でシープボアという素材を選択。
「ただ、胴体はこれでできるけれど、頭はできへんで?」
「あっ、じゃあ、頭はこっちで何とかします!」
頭の部分は、着ぐるみ仲間にどうやって作ったらよいかということをアドバイスをもらいました。
50cm×50cm×50cmの立方体の発泡スチロールを削って形を整え、その上にシープボアを貼りつける。これで完成と。
まあ、部屋は発泡スチロールまみれになりましたが、逆にいつもより掃除を熱心にしたりしたりしていまして。
頭が完成間近になった頃、胴体も完成、バランスも確認します。
(ちなみに、わけあってその後に別の着ぐるみを作ったのですが、これは別の手法で作っています。)
「せやけど、なんで着ぐるみなん?」
胴体を届けにきたときに聞かれました。
「それは、まあ……これでジャグリングやったら面白いじゃないですか。」
「ああ、せやったら、今度大阪の箕面でイベントがあるから、それに出てみる?」
まだ、頭が完成していない時期だったのですが、早速の情報に飛びつきまして、頭を仕上げる前にジャグリングサークルの友人を巻き込んでこのイベントに出演が決定しました。
本音を言うと「ジャグリングを彩るための着ぐるみ」なのではなく、「着ぐるみをしたいがための口実としてジャグリング」だったわけですが、いずれにせよ、当時こんなことをやっていたのは周囲には僕しかいなかったし(※プロの大道芸人さんの中にはいました)
ショーの内容としても子供に人気だったので、よかったのではないかなと思います。
ただ、そういう邪(?)な思いがあったとはいえ、当初から「自分の着ぐるみがあるなら、それでジャグリングができたら面白いな」と思っていたのは事実なので、ジャグリングができるようには工夫するつもりではありました。
着ぐるみでジャグリングをやることの障害になるのは、視界の確保と動作性。
動作性については練習で何とかするとして、視界というのはジャグラーの命ですから、広ければ広いほどいいのです。
普通の着ぐるみの場合、視界は「目」ですが、「口」を視界に選んだのはより広く視界が確保できるからです。
そのため、この着ぐるみを使って演技をする場合、僕が正面を見てしまうと、キャラクターは上の空を見てしまうので、普段はなるべく僕の視線は下目になるようにし、着ぐるみの目が正面になるように心がけています。
やってみるとわかるのですが、ジャグリングはもとより、音響機材の操作・道具の出し入れなど、普通のことをやるのにも人間の生身でやるのと感触が違います。
言葉を口に出さないのが一般的な着ぐるみですから(別にしゃべっちゃいけないというルールがあるわけではないですが)コミュニケーションはスケッチブックにあらかじめ言葉を用意しておいて、それをめくってコミュニケーションをとります。
しかし、そのスケッチブックの紙をめくることでさえ、着ぐるみにはままならないのです。
そういうことも含めてですが、人間の状態で練習することはほぼ意味がありません。せいぜい、どういう順序で技をやる程度の確認くらいにしかなりません。それゆえ、練習するときは、着ぐるみフル装備です。
動きがどうだったのか、などは確認するすべがありませんから、ビデオで自分の練習を撮影しておき、後で確認するということもやっています。 (ちなみに、このビデオを撮影して後で確認、というのは普段の練習でも必要なことです。 ただ、それに気がついたのは、着ぐるみでジャグリングをしていたからこそ。)
僕が作った着ぐるみの頭部は発泡スチロールで作られていましたが、最近の主流は違うようです。
最近、ネット上のコミュニケーションが僕が着ぐるみを作ったころよりもさらに盛んになっているので、「着ぐるみを自作しよう」という、作り方を掲載しているサイトもあったりして、自作するにせよ、他の人に作ってもらうにせよ、個人が「マイ着ぐるみを持つ」ということ自体はあまり珍しいことではなくなってきたようです。
着ぐるみを見せる機会というのも、コスプレイヤーのイベントに乗じて、など、意外とあるみたいですね。
(そもそも着ぐるみ自体がコスプレの延長だとも思うわけですが。)
さて、ヒョウガ君の誕生について語るつもりでしたが、延々と着ぐるみのことについて話してしまいました。
おかしいな、なんでだろう。ヒョウガ君は着ぐるみなどではなく、れっきとしたドラゴンですからね。
ヒョウガ君は先ほど誘われた大阪の箕面のイベントの3日前に「こちらの」世界にやってきまして、そのイベントが初出演だったのですが、先程までの話とは全く関係ありません。関係ないといったら関係ないのです。
今でも僕の部屋に居候していますし、もちろん口から見ている筈もなく目から見ていますし、当然のことながら中の人なんかはいません。
次回は、多分JJF(Japan Juggling Festival)の感想になりそうですが、その後、イベントの観点から着ぐるみについて語りたいと思います。