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去る6月8日、東京でステージの仕事をしました。私が所属するベリーダンス・スタジオ Ruhani Bellydance Arts のイベントでした。香りとベリーダンスという、もう想像しただけでムンムンな組み合わせ(笑)。でも、それをアートとして昇華させる試みに、スタジオリーダーのノーラさんと挑戦したのでした。
補足をすると、こういうふうに香りの視点から作り込んでいったシアターやダンスのステージって、世界的に見てもほとんど無いんです。できる人がいないから。それだけ香りをコントロールするのは難しいので、リスクが高い。なので、今回は私にとっても実は大きな挑戦でした。
ベリーダンスは、私にとっては趣味であり生き甲斐であり。嗅覚のアートは仕事。仕事が趣味に生かされるなんて、なんてラッキーなのでしょうか。
結果からいって、大成功でした。東京青山にある会場は、開場時から列ができるほどで、満席! そして、みなさん笑顔で大満足で帰っていかれました。
すべてが上手くいった。できる限りの事をし、最高の効果があった・・・最近はそういう風に思える仕事ができるようになってきました。トラブルも不確定要素も、逆にそれを利用してしまう姿勢が確立したのか、それとも諦めが良くなったのか(笑)はたまた経験値や判断力がついてきたのか。
でもこれだけのステージを作る道のりはもちろん単純ではありません。
まずダンスと香りの接点を考え、それをインスピレーションとしてダンス作品に仕上げていったわけですが、制作時間は実質2ヶ月。ダンサーの練習時間や衣裳制作までを考えると、これは非常にタイトなスケジュールでした。
でも時間をかけたからいいものができるとは限らないのです。私が東京から遠い石垣に住んでいるのもひとつのネガティブ・ポイントでしたが、だからこそフェースブックなどでダンサーと綿密に連絡を取り合う努力も怠りませんでした。そして、あとはノーラさんのセンスとリーダーシップを信頼しきりました。
石垣は仕入れに東京の数倍の時間がかかるので、それも頭が痛い問題でしたが、すぐ近くの自然にもたくさんの香る素材があるのだから、それを積極的に利用して準備をしました。つまり、時間と距離の制約は、ほとんど無視 して突っ切った(笑)
今回の会場での薫香は、リハの時間が実質30分! ほとんど全てがぶっつけ本番。なのでまず事前に、空調の位置の確認と、通風口の位置、スモークの流れの目視から空間特性を把握しました。お客さんがフルに入った状態で、奥の方や上まで香りが届くだろうか・・・といった懸念はありましたので、サーキュレーターの強度は「最強」の設定にしました。
読めなかったのは換気のパワーです。足りなかったら、香りの微細な変化を描くことができません。そのため、上演直前の決断でしたが、ステージ上のエアコンもONのままにすることにし(それまではOFFにしてくれと頼んでたのです)、ライティングとスモークの組み合わせで生じる「質量のある空気に包まれている感」といった視覚的効果を利用するためにスモークもたいてもらうことにし(それまでは、スモークは香りを邪魔するから焚かないでくれと頼んでいたのです)、そのかわり香料もマックスに投入して焚くことにしました。
この最後の決断が功を奏しました。
会場側もヒヤヒヤするほどの、予想以上の客の入り。2階の後ろの方はおそらく、ほとんどステージが見えなかったかと思うのですが、それでも「香りは届いた」という声を聞きました。作家仲間からも、「香りの切り替えがハッキリとわかった。混ざってしまうかと思っていたら・・・」とのコメント。
「香りがあると、その世界に入って行きやすい」「異次元にトリップした」そんな声もたくさん聞きました。
薫香は私ふくめスタッフ3人でやりました。タイミングを合わせる事が重要なので、綿密な打ち合わせをした上で。彼女たち無しには成功しなかったこと。
ダンサー達も、リハの時よりずっとずっとスゴかった! ダンサー達には、事前に香りをしたためた「小道具」を渡してあり、それをどう使うかはダンサー任せでした。「香りをむさぼるように楽しんでくれるお客さんを見て、ノリノリにテンション上がった」とも聞きました(笑)
ふと客席を見渡すと、明るかったんです。光量の問題ではなくね。みんな、優しい顔をしていて、優しい光に包まれていたんです。会場側も「通常なら閉塞感や不快感が生まれるはずの人数が入ってたのに、それが全くなく、むしろ心地よかったのは、香りのおかげでしょう。」とおっしゃってくださった。
香りは、みんなを元気にするんです。やわらかい光で包むんです。幸せにするんです。私自身も、始まる前は疲労感で手足も冷たかったのに、ステージが終わるころにはポカポカ。元気をもらい、浄化されました。まあ、高価な香料を大量に焚いたので、ほんとに贅沢な空間だったんですよね。
常に火加減に集中しなければいけなかったので、ほとんど踊りを楽しむ間は無かったのですが、あっという間に7つのステージが終わってしまいました。最後のシーンになったとき、「あれ?! これが、もう最後???」みたいな感じで・・・
そんな中、香りつきの紙吹雪を撒いた瞬間に、会場の感動がクライマックスに達したのを感じました。みんな、泣いていた。私は火加減に集中していたのできわめて冷静でしたが、会場からその感動を受け取って、涙がツツーと流れてくる、そんな不思議な状態でした。
ダンスを見て涙するなんて、あまりないことです。やはりそれも、香りの悪戯でしょうか?
スタンディング・オベーション。
ステージ開始前の挨拶。
詳細は、私のブログを参照して下さい。
http://witch-lab.blogspot.jp/search/label/%5BPerfumum%3A%20捧げる踊りと香り%5D