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2010/10/19

地球の舳先から vol.192
チベット編 vol.3

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閑話休題。

ブラピこと、ブラッド・ピット主演の映画「Seven Years in Tibet」のDVDを見た。
チベットに行ったときから、帰国したら見ようと思って取り寄せておいたものである。

“身勝手から家族を失った冒険家が戦禍のなかチベットに行き着き
 チベットでの生活を経て大事なものを取り戻す”的なストーリー説明から、
桃源郷チベット大好き西洋人のつくったブラピのための作品のような
もうすこしヤワな映画を想像していたのだが
かなり歴史的かつ社会的メッセージが強い映画で驚いた。

ブラピ演じるオーストリア出身の世界的冒険家ハインリヒ・ハラーがヒマラヤ挑戦の途中で
英国とドイツの戦争により捕虜として収容所送りとなり、脱出してチベットへと向かう。
そこでチベットの人々の欲のない生き方や、まだ幼いダライ・ラマ14世との親交に触れつつ
チベット政府内での裏切りや中国の侵攻をリアルに描いた作品。

まだ幼いころのダライ・ラマ14世が、ブラピと戯れるシーンがたくさんあるのだが
ダライ・ラマ14世の自伝(ユーモアがあって大変おもしろい。全然カタくなかった)を
読んでいたわたしとしては、茶目っ気があって好奇心旺盛なダライ・ラマの人となりが
自伝の内容ととてもリンクして、すんなり入ってきた。

ダライ・ラマに映画館を作って欲しいと頼まれて建設監督の座に就くシーンで
建設中に土から出てきたミミズに、殺生を禁ずる仏教の教えのためおろおろする人々に
「これは前世であなたの母親だったかも」と言われて返す言葉に困るブラピ。
随所にチベット仏教とチベット人の生きる信条が散りばめられていて、とても精緻。

なごやかなチベットの描写が比較的長く続いて、
今はなきチベットの姿として一番の見所なのだが、中国の侵攻シーンでは
“自分の国も、弱いものを攻撃する狭量な中国と同じ事をしていた”
と戦争を普通のこととして捉えていた自分に対する回想や、
砂の曼荼羅を踏みつけて宮殿にあがり、「こいつより下の席には座らん」と言う
中国の役人に「わたしが下りよう」とにこやかに言うダライ・ラマの幼い姿など
ちくり、ちくりと中国共産党批判がつづく。破壊シーンも凄まじい。

    中国の侵攻で100万人のチベットの民が死に
    6000の僧院が破壊された
    1959年 ダライ・ラマはインドに亡命
    今も中国との和平に努力している
    1989年にはノーベル平和賞を受賞
    ハインリヒ・ハラーとの友情は今も続いている

このエンドロールで、実話をもとにしていたと初めて知ったわたし。。
気になって調べてみると、この映画に猛反発した中国により(当然だわな)
撮影はカナダとアルゼンチン、モンゴルで行われたのだという。
さらにすごいのは、主演助演級のキャスト4人以外は、
全員チベット人の素人を使って撮影したということ。
何百人もの僧侶を南米に連れて行ったというのだから、すごい。
合成なのだろうがポタラ宮の風景と馴染んでチベットの空気感を蘇らせている。
(変わってしまった今のチベットより外国で撮る方が当時らしい絵ができるのかもしれない)

ラストシーン近く、ブラピがチベットを離れる際、
「大切な人が旅立つときにはお茶を入れるもんだ」と言うかつての戦友が
バター茶は苦手だからもういいよ、と言うブラピに「しきたりだ」と机に茶器をのこし、
「そして、旅人が戻るまでそのまま置いておく」という美しいシーンも見もの。

チベットの歴史をよく知らなくても、ヒューマンドラマとしても、とても沁みる作品です。

2010/10/19 08:11 | ■チベット, ■チベット(中国) | 2 Comments

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Comment & Trackback

これ、確かNZに行ったときに持っていった本だった。
異国で異国に思いを馳せていたのを覚えているわ。

正直、宗教って、東京近郊に住んでいると特に薄くて(実は結構生活の中に当たり前として取り入れられてもいるけど)、よくわからないというか。
その宗教の考え方をまるっと取り入れるっていうのなんか特に、理解しがたいんだけど。
なんかでも、宗教って、ある、と感じる時が私もある。

原作本も良いですよ。私も映画見てみよ。

Posted at 2010.10.27 10:09 PM by 水野晶子

>akikoさん
原作本あることをそもそも知らなかった!
ぜひ探して読んでみます。

Posted at 2010.11.2 2:27 AM by admin
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