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2010/09/24

地球の舳先から vol.182
パリ(2010)編 vol.2

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ちゃりん。
キレイに磨き上げられた床に、コインが落ちる音が響く。
プランタンの食品売り場で、落とした老夫婦よりも目ざとく10セント玉を発見して、拾った。
「Merci」「Je vous en prie」このくらいの会話なら寝ててもできるのはミヒャエル先生のおかげか。
「どういたしまして」という日本語が非常に出没頻度が低いのは、日本人はなんでもかんでも
「ありがとう」のかわりに「すいません」と言うからだとおもう。
席を譲ってもらっても「すいません」、モノをもらっても「すいません」。
わたしは付き合った相手に口癖や言葉遣いが似てくる人間というのは好きじゃないのだが、
ウェイターにもコンビニの姉ちゃんにも「ありがとう」と言うのがうつったのだけは、
19歳の頃の恋人に感謝している。けして、手羽先の身をほぐしてくれたから惚れたのではない。

脱線。パリに来るとむかしの恋人の話が多くなる。だってそういう国なんだもの。

ラ・ファイエットというでかいデパートへ行って、クツを2足買った。
今日はフランスのストライキ日。そして、アパルトマンへの移動日。
メトロが止まるといわれていたのを思い出したのは、両手に紙袋を抱えて店を出たその瞬間。
スーツケースにこの紙袋たちを提げて、ここから3キロは確実にあるそこへ歩くことを想像して
日本にいたら考えられない自分の無計画さと頭の弱さにむしろうっとりする。
「まじかよ~ あ~ お~」とつぶやきながら、信号待ちで足の裏が振動をとらえる。
すぐ下はメトロ。「お?」どうやら動いているっぽい。間引き運転かもしれないが。

メトロが動いているのに気を良くしたわたしは、なぜかロダン美術館へ向かった。
スーツケースを引き、デパートの紙袋を提げて、小雨降る中。
わたしは、美術館をはじめ、寺とか城とかいわゆるそういうものに興味がない。
のだが、ロダン美術館は庭園がキレイでお茶でもするとよい、という触れ込みにつられた。
たしかに、バラが咲き乱れちいさな池のある庭には地獄門や考える人の像が無防備に展示してあり、エッフェル塔やナポレオンの墓と軍事博物館のあるアンヴァリッドという建物も見える。
美術館とセットだと6ユーロだが、庭園だけなら1ユーロで著名な作品が楽しめ、
カフェではランチくらいにはなる軽食とケーキもあるので結構おすすめである。
で、わたしはといえばスーツケースをガラガラして数時間で手にマメができたことを言い訳に
6ユーロのチケットを買ったのに庭でぼーーーーーっとして出てきた。もったいない。

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(エッフェル塔を背負う、考える人。)

午後3時、ようやくアパルトマンへ到着。
パッシーという16区にある高級住宅街…とは聞いていたが、想像を超えていた。
メトロを降りるとそこは、別の国に来たよう。
お金持ちのオーラを全身から発するお洒落マダムに、全身シャネルの働きウーマン。
わたしがパリに来る前のイメージまんま。一般的なイメージが、これかもしれない。
ジャンクフードの店もなく、観光客もいない。
アパルトマンはとっても素敵。見た人にしかわからず恐縮だが、映画のだめカンタービレで
のだめがコンヴァト留学時代にみんなと暮らしていたアパルトマン、といったところ。
中庭を挟んでロの字型に部屋がならび、中庭は大きくないのと窓が縦長に大きいので住民のようすが見える。
窓があいていればテレビではないゆるやかな音楽がかすかに聞こえてくる。
夜が来る頃にはクルマの音も人の足音もしないのだが、漏れてくる光が人の気を醸し出す。

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(天井と窓の2面採光。張り出しているので、2階にして最上階。)

本当に静かに使ってくれる方にしか貸せないとエージェントの方が言っていたわけがわかった。
かたいヒールで廊下を歩かない/夜は洗濯をしない、などの注意事項はわかるのだが、
きわめつけは「夜のあいだはトイレの水も流さないほうが無難」とのこと。
わたしはもともと家にいてもテレビもつけなければ(というかない)音楽もかけないタチなので
それが苦になることもなく、ひとの気のある静寂さに浸かる。

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(はしごをのぼって、屋根裏のベッドルーム。この奥にまた天窓が)

5分も歩けば、エッフェル塔の最高のビュースポット、シャイヨー宮。
小高いその場所からは、パリ中心部の見慣れた光景も、パッシーも、
デザインが個性的すぎて無秩序状態のタワーマンション群地域も見渡せる。
うつくしく区切られたその場所は、パリのほんの一区画。
パリっ子はきっと、「こんなボロっちぃ家じゃなくて、タワマンに住みたいの!!!!」とか思うんだろう。
まあそりゃそうだわな、と思う一方、あきらかに異質な現代高層ビル「モンパルナスタワー」は不人気だというのだから、そのあたりの感度はやはり独特のものがあるのだろう。

日本は、六本木ヒルズができたとき、どういう反応してたっけ。
今じゃ東京タワーと六本木ヒルズはセットで東京の夜景の代名詞だが、
エッフェル塔とモンパルナスタワーはどうにも相容れる気がしない。

寄り道をしながらそんなことを思っていたのは、
せっかく意気込んでバレエスタジオへ行ったのにシューズを忘れてくるという
いまどき小学生でもしない凡ミスのせいでとぼとぼ歩いて帰ってきたからである。

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(アパルトマンの外観。これまたきれい。)

あしたへつづく。 

2010/09/24 05:56 | ■パリ , ■パリ(3rd/2010) | No Comments

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