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地球の舳先から vol.178
ブータン編 vol.1
※構成上の諸事情により、一番最後に訪れた国ながら、先にブータンのことを書きます。
2010年8月12日。
成都・ラサ・カトマンズを経由してのブータン入り。
ブータンといえば、欧米諸国の「発展」を必ずしもよいものとはせず、
GNPに対抗してGNH(GROSS NATIONAL HAPPINESS)つまり「国民総幸福量」という概念を打ち出し、経済発展イコール幸福ではないという強烈なアンチテーゼを顕した。
日本との関係も深く、皇太子即位の際に各国の国賓達が駆けつける中、民族衣装を着たとても若くてハンサムな“国王”の姿が記憶に残っている人もいるかもしれない。
そんなブータンは独自の発展ペースを守るため、観光には制限が加えられている。
政府の定めた公定料金(1日200ドル)を払えば、原則としてホテル、車、ガイド、3食の食事、観光にかかわるすべての料金を勝手にアレンジしてくれるというものだ。
1日200ドルというのは高価に思えるが、諸税をさしひくと原価90ドル程度でアレンジをしているという説もあり、結果、至れり尽くせりな旅となる。
いかくしていまだ王政をとり、国民にも絶大な人気を誇る第5代国王の統治するブータン王国へ、足を踏み入れたのだった。
片側2列の小さな飛行機はカトマンズからほぼ定刻でブータンのパロへ。
空港の建物は伝統建築で、歴代国王の写真がでかでかと飾ってある。
公の場―学校や職場でも着なければならない民族衣装をまとったガイド・JELLYとドライバーに出迎えられる。
これからの3泊4日をともにお世話になるのだが、このときはまだ、ここまでベタ付でお世話になるとは思っていなかった。
車は第一目的地、首都ティンプーへと向かう。
山道を走る光景は、息を呑むばかりに青々として美しい。
絶えない緑と、伝統建築の家。
この国は国土の72%が森林で、うち60%までしか開拓してはならぬと決まっている。
土地はだれかの私有地でも、そこに生える木は国のモノで、たとえそのうちの1本でも、伐採するには申請と長い審査を経ての許可が必要なのだそうだ。
途中、車は前々代(第3代)国王のメモリアル・チョルテンに寄る。
メモリアルとはいっても、3代国王のたっての願いだった仏塔を建立したものであり、墓があるとか、追悼の意味があるとかいうものではない。
ブータンの国王は国民の信頼があつく、それというのも、過去にも国王自ら国会へ権利を委譲するなど既得権益より国民の利益を重んじる姿勢が受けているとのこと。
ちょっとしたリゾートホテルのようなうつくしいホテルにチェックインすると、ゾンへ向かう。
ゾンとは、各地にある、宗教と行政が一体化した施設。僧侶のための寺院という側面も、地方行政のオフィスという側面ももつ。
首都ティンプーのゾンはもちろん規模も大きく、国王の執務室もあり、それでも各機関が入りきらないのでゾンの隣と、川を挟んだ対岸にも行政機関が立ち並んでいる。
ブータンの宗教施設は、観光客に対しシャットダウンされていることが多いのだが、その周辺では生き生きとした僧侶の姿を見ることが出来る。
またブータンはマツタケの産地でもあり、この日の夕食には大量のマツタケを振舞われたのだった。