« | Home | »

2010/03/23

地球の舳先から vol.160
フィンランド編 vol.9

0323_2.jpg

アイススケートで余った体力をしばし使い、ロヴァニエミ鉄道駅へ。
途中、世界最北のマクドナルドでフライドポテトを補給。味は変わらない。
なんらかのトラブルに備えて移動の際は30分前行動なのだが、
ここフィンランドではトラブルというトラブルがなく待ち時間が多かった気もする。
清潔なコインロッカーはガタつきもなくわたしのスーツケースをふたたびはき出し、
雪の積もったホームへ出ると、すでに列車は着いていた。
北極圏からヘルシンキまでを結ぶ長距離夜行寝台列車、通称「サンタクロースエクスプレス」。
電車が好きなのである。わたしは1等、個室シャワー付きを日本から予約しておいた。

0323_1.jpg

荷造りとごみ捨てなどを済ませ、薄着になってから列車の中を詳細に探検する。
まず個室。といっても2段ベッドにトイレ&シャワールームのついている狭いものだが快適。
最初はシャワーの存在に気付かなかった。
というのも、シャワールームの扉を開けると一見トイレ&洗面所なのである。
シャワーがついているというのはガセネタか?と思いつつ、しばらくして、洗面台の棚に小さな取っ手がついていることに気付いた。
そこを引っ張ると隠し部屋よろしく洗面台をトイレ側に格納することができ、シャワーブースが現れる。
アイディア商品ではないか!(普通なのかもしれない)

0323_3.jpg 0323_4.jpg

わたしは1等寝台だったが、相部屋の2等寝台、そしてリクライニング座席のシート、乗車券だけ購入して荷物車両で寝袋で寝ているつわものなどもいる。検令は厳格。
食堂車でビールを1杯。やわらかい光の中で、読書をする人、友人と語り合う人。
日本の新幹線が捨ててはいけなかった、情緒あふれる光景がそこにはあった。
旅というのは、効率やスピードばかり追っかけてはいけないのだ。
効率化ばかり考えると、飛行機に負けてしまうのに。列車には大事にしなきゃいけないものがある。
ふらふらと帰国日がわからないような旅はさすがにできないとしても、
限られた時間のなかで、できるだけゆっくり、動いて。
カメラのアングルばっかり気にしないで、実物の、その大きさを、雰囲気を、感じて。
そうやって街と出会えるといい。
加えて、1泊分のホテル代が浮いて寝ている間に長距離移動ができる夜行は
時間の限られたトラベラーの強い味方なのだった。

0323_5.jpg

車掌が検令に来る。
「終点じゃないから、寝過ごさないように気をつけて。5時48分に着く。」
と言って、部屋の隅のわたしの目覚まし時計に目をやってうなずいた。
「もし早く着いちゃったら、その時間までは停車しててくれるよね?」と訊くと
「いや」と彼はさも当然のように首を振った。「5時48分に着く」。
ここでわたしは、ちょっとばかりまた狼狽しそうになった。
運転手が到着時刻を断言するなんて、今まで行った国ではなかったぞ、と。
中国で「あと5分で着く」と言われてから3時間後に到着したのは別格として、
インドでだって3時間遅刻を「優秀~♪日が出てるうちに着いた~♪」と喜んだものだ。
車掌は時間を言い切り、しかもその時間はとても中途半端だった。
戸惑いを隠し、「オーケー、センキューセンキュー」と手を振る。

…旅をするには便利なのだが、この国の神経質さにすこし疲れてきていたのも確かだった。
日本への帰国の飛行機便がストライキで大変だったことは一番最初に書いたが、
「定刻」を絶対視するあまりピリピリし過ぎているような気もする。
20秒遅れると始末書を書かされるらしい山手線もしかり、だが…。
フランス人の知人が「日本は道を歩いてても電車に乗ってもあれするなこれするなって看板とアナウンスばかり。小学校か!」と言っていたのをふと思い出す。

「車窓、車窓」とワクワクしながら窓に顔をくっつけるも、夜の帳がおりて真っ暗。
すごすごベッドに入り、フィンランドではメジャーらしい、ぶどうとジンのお酒を飲みつつ
心地よい寝台の揺れのなか就寝。

朝起きると、ようやく北極圏から抜け出していた。無傷。生還だ。
インナーを1枚少なくして、当然“5時48分”にタンペレの駅で降車したわたしは
「うぁぁぁぁぁぁぁ北極圏より寒いじゃないかぁぁぁぁぁぁぁ」
と叫びながらとりあえず近くにあった地下へ続く階段を駆け下りたのだった。

つづく

2010/03/23 11:36 | ■フィンランド | No Comments

Trackback URL
Comment & Trackback
No comments.
Comment




XHTML: You can use these tags:
<a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>