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2010/03/15

地球の舳先から vol.159
フィンランド編 vol.8

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しばしの仮眠の後、ロヴァニエミに帰ったバスは、団体観光客をおろして最終目的地のツアー会社に着いた。
「ここで降りたほうがいい?それともこれからどこかへ行く?」と問うとドライバーは「君はどこへ行くんだ」と逆に聞いてきた。寝惚けた頭でも、案外と口をついて英語が出てくることに驚く。
意外と旅を続ける程度の英語なら結構喋れることにも驚く。
これはやはり幼少時に母親が算数と英語の寺子屋を自宅でやっていて、放置されたわたしが暇つぶしに壁に貼ってある「あいうえお」と「ABC」を小学校以前にマスターしたサブリミナルが効いているのか。
むかしは神童とよばれていたのだ(6歳以下まで限定)。あんなにそろばんで遊んでいたのにいまこんなに3桁のお金の計算さえできないのが悲哀である。

「今晩夜行列車に乗るから、とりあえず鉄道駅まで行く」とドライバーにいうと「じゃあ鉄道駅まで行ってあげるよ」との好意で鉄道駅まで行ってくれた。英語が喋れるとトクをするらしい!
これが、わたしがフィンランド旅行で得た一番の学習であった。
歩けば1キロほどの距離を、どでかいバスを貸しきってしまった。
チップを渡して、英語をやめてフィンランド語で「キートス(ありがとう)」と言う。

鉄道駅でもわたしの改心は変わらず、「この近くにコインロッカーありますか?」と問う。
「あそこ。でも小銭しか使えないから、持って無いならここで両替できるよ」と。
最低限の日本語でもコミュニケーション自体はできるが、英語を喋るとプラスアルファのトクをする。
そういうことなのか。そういうことなのだ。わたしはいままで、ソンをしていたのだ。
英語や現地語が喋れるということは、旅においては、クーポン券をもっているようなものだったのだ。
「10ユーロをおろしてもらったほうがいい? 食堂車に行きたいから、もう少し必要かな?」
と聞くと、「ビール1杯でもクレジットカードでOKよ」と笑顔が返ってくる。
ロヴァニエミでの自由時間は約5時間。主要な観光スポットをめぐり、市街中心部へ向かう。

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(ロヴァニエミ中心部。写真中の人間の背丈と比較してこのスケールを感じてほしい)

元旦だが、店を閉めてお祭り騒ぎということはなく、マジメに営業している店も多い。
世界最北のマクドナルドで軽食を済ませ、ロヴァニエミの街をぷらぷらした。
大きすぎる雪だるま(6メートルくらい?)。うつくしい屋台の数々。浮き立つ人々。
そこで、ひらひらしている貧弱なビラを見つけた。
「スケートリンク。時間制限なし。10ユーロ。ここから徒歩1分。」

これはなんともそそるではないか。
実は、運動音痴なわたしができる唯一唯二のスポーツが水泳とスケートなのだ。
つられて行ったスケートリンクは、ただの公園をリンクにしたような簡易的なところだった。
それでも、ちいさなテントの中には主要なサイズのレンタルシューズが置いてあり
奥のほうには雪と氷で作った小さなお城のようなアミューズメントパークもある。

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わたしはブーツを脱いで、スケート靴に履き替えた。
ただ滑る人も、アイスホッケーをする人も、入り乱れて地元の人々に混じる。
ホッケー組はむしろ、いかにそのスケート組という障害物を避けてゴールを決めるかという点に燃えており、小中学生らしき小さい子たちは巧みにスケーターの合間を縫っていく。
へっぽこスピンをしている小さい男の子もいる。こういう子が将来、フィギュアデビューするのかもしれない、と思うと、日本の「フィギュアをできるのは限られた人間のみ」という構図との差を考えてちょっと悲しくなった。
1時間、と思っていたのにリンク(というほどの大きさではない)を何往復したのか、あっという間に時間が過ぎていた。運動しているので体はあったまっているのだが、露出した顔部分は若干の凍傷気味。いかんいかん、とマフラーで覆いなおして、靴を脱ぐ。
元旦の夜、フィンランドの地元の人々と一緒に地元のスケートリンクで滑ったことは、この旅を通じて忘れられない、いかにも北欧らしいわたしの思い出になる。

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旅は、ある程度タイムスケジュールが決められてしまっている。
だから旅行するほうも、決まったポイントを「こなす」という感じになってしまいがち。
それは残念だけど、社会人たるもの、決まった日数で行って帰ってこなければならないのも現実。
そういった中で、予定表になかった偶然の出会いが、旅の色を決めていく。

表面はつめたく、中は運動後でぽかぽかしている身体をもてあましながら
わたしはまた、市街地から約1キロを歩いて鉄道駅へと戻った。

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(もちろんちゃっかりロヴァニエミの観光スポットもおさえておく。)

つづく

2010/03/15 06:05 | ■フィンランド | No Comments

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