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2010/01/06

地球の舳先から vol.151
イエメン編 vol.12(最終回)

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サッカー日本代表対イエメン代表の試合を控え、一昨日から不穏なニュースが流れている。
イエメンの武装組織アルカイダの活動激化により、米英両大使館が閉鎖され、足並みを追い掛ける形で日本大使館も業務停止に入った。
そしてその中間日の今日、奇しくもわたしのイエメン旅行記も最終回を迎える。

もう3ヶ月も前のイエメンでの日々が、いまでも目を閉じると風のやわらかさまでが鮮明に蘇る。
先日、街宣車の騒音に「アザーンっ?!」と言って飛び起きたくらいに。
(熟睡すると、覚醒時に「ココドコ」病が、たまにでる)
現地で会ったイエメン大使館、JETRO、世界食糧計画や国連、マサさんをはじめとするユニセフ、JICA(青年海外協力隊)のイエメン駐在日本人ひとりひとりの顔が思い出される。
彼らはいま、この日-イエの状況を、どう思っていることだろう。

もちろん、問題は山積みだ。しかしわたしは、今日この日にも、あえて言いたいと思う。
わたしの見たイエメンは、とてつもなく豊かな国だった、と。
狂ったような高度成長期と資本・経済原理主義に呑み込まれたわたしたちが失ってしまったものが、イエメンにはあった。

GDPは低いし、将来を見据えたら人口が多すぎて崩壊する、などの統計もあるようだが、
人々は曲がりなりにも整備された家に住み、みんなおしゃれでいいものを着ていて、
子どもたちも遊んだり働いたり、充実感溢れる暮らしをしていた。
観光客摺れしている地域もあったが、基本的にはぼったくりや物乞いも比較的とても少なく、
スリなどの軽犯罪もなきに等しいくらいだった。

それは、どこか日本に似ていた。
軽犯罪も少ない(電車の中で爆睡できるくらい)し、一人あたりの平均所得は世界最高峰。
でも、GDPで見れば成長薄ということになるらしい。不思議な話だ。
GDPという基準を離れれば、日本という国は実際、とても豊かだというのに。
島耕作が社長になったりカンガルーが死んだりするのがヘッドラインニュースになるのは、マスコミがゴミだというよりは、日本が“そういう国”だから。
自殺者が多いのは困ったもんだが、裏を返せば「今日の暮らしに困っていない」わけでもある。

「世界基準」なんて、なんていい加減なものなのだろう。
いつからGDPというもので国のクオリティをはかるようになったのだろう、などと考えると、かの国と、かの国が世界征服をするために打ち出した資本原理主義がどうしたって浮かぶのだが。

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かく言うわたしも、イエメンに着いたばかりの頃は、不思議でしかたなかった。
お金はない。飲食も十分にはない。環境、衛生に関しても世界最悪レベルの部類に入る。
それなのに、イエメンで会う現地の人々の笑顔にはいつも、余裕と幸福が浮かんでいた。
そして、外国人のわたしたちを、歓迎と感謝いっぱいに、これでもかとばかりもてなしてくれた。
後進国と呼ばれる国へ行くと、負の視線を向けられることがしばしばある。
それは、羨望まじりの嫉妬だったり、差別だったり(そしてそれは多くの場合「アジア人のくせに」ってやつである)、ぼったくってやろうという商売根性だったりするのだが、
イエメンでは逆にあたたかい腕を広げられ、わたしはその中でたくさん遊ばせてもらった。
そんな気がした。まさに自分の小ささと、心地よいアウェー感を満喫した気がしてならない。

崖の上の絶景に息を呑み、ありえない建築物にあきれながらも感心し、カート中毒のイエメン人に苦笑し、お祈りへ向かう列に顔の布を巻きなおした。
山岳地帯で、ごつごつの岩を指してガイドが「あの中に3つくらい部屋がある」と言った。
英語力不足ゆえの聞き間違いか、と思っていたらほんとうに岩の間から人が出てきて驚いた。
彼らはわたしたちと同じ地球上に住んでいるのに、
わたしたちのように自然を支配するのではなく、順応していた。
生活に合わせて自然を変えるのではなく、環境に合わせて生活をつくる。
そんな、ひとむかし(そう、「ひとむかし」なのだ)前までわたしたちが当たり前にやっていた、
原始的だけれども本質的な生活を、彼らはいまだに続けている。
ある意味で、それはほんとうに、2000年前から変わらない生活を。

しかしわたしはそのとき思ったのだ。
自然を支配し、思うが侭に発明や開発といった言葉で生活を変えていくわたしたちのほうが、
きっと彼らからしてみればよっぽど“宇宙人同然”なのではないか、と。
彼らを形容するのであればそれはきっと、「原始的」というよりは“最後の人類”なのだろう。

人間は、どこでだって、どんな状況になったって、とにかく生きていくことはできるのだ。
そして、喘ぎ苦しみながらではなく、幸福に生きようとする力があらかじめ備わっているのだと。

それが、わたしがイエメンで見た“強さ”だった。

<イエメン編、了>

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ユニセフイエメンのマサさんをはじめ、イエメンでお世話になった全ての方に感謝します。
Special thanks to Masa,and all of the Japanese&Yemeni Ive met while we stayed.

2010/01/06 01:19 | ■イエメン | No Comments

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