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2009/11/26

※現地時間11/15に、JICA事業従事の日本人男性技師が、イエメンの首都サナア北東の町で武装グループに拉致されるという事件が起きました。犯行グループは、裁判なしに4年間収監されている仲間の解放を要求している模様です。ここに記したイエメン日記は2009年9月のものであり、イエメンは日々情勢が変化する国です。過去5年間で外国人観光客を標的とした事件は数十件起きています。ご渡航を検討中の方は、外務省の情報や現地の旅行代理店と密に連絡を取り真の情報を収集すること、現地に精通しアラビア語を完全に理解する同行者、現地滞在中でも常にリアルタイムで正確な情報を入手できるルート、最低限これらが整わない限りご渡航はおすすめいたしません。

地球の舳先から vol.146
イエメン編 vol.8

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今回の旅では首都のサナア以外に、2カ所近郊をまわる予定でいた。
ひとつが山岳地帯であり、これは「奇跡の橋」と呼ばれる石造りの橋のあるシャハラへ行きたかったところを、北部の紛争勃発(激化)によりマフウィートへ変更した。
もうひとつがこれから2回にわたりご紹介する、ハドラマウト州の世界遺産都市シバームである。

確かに誘拐事件も、外国人観光客を巻き込んだ自爆テロ事件もここで起きていた。
が、出国前の現地旅行会社の事前判断では、今ならまだ大丈夫だろう、とのことだった。
しかし念には念を入れ、現地のガイドと運転手のほかに、サナアからぴったり同行する現地に精通した通訳と、武器を携行するツーリストポリスの手配をしていた。
サナアから約50分のフライトで、近郊のサイユーンまで飛ぶ。
北部にばかり注意を向けていたのだがこのシバームも、
在留邦人も渡航が禁止されている状態と知ったのは、イエメン入りしてからのことだった。

初日にサナアで入ったカフェで在イエメン日本大使館のご一行と出会い、
わたしたちの行程にシバームが入っていることを知ると、その場が水を打ったように静まり返った。
もちろん彼らには渡航を止める権利もないし、逆に守る手段を何かしら講じることもできない。
しかし、「立場的に注意を喚起する必要がある」以上のなにかを感じた。
おいおい、こりゃヤバイんじゃないか…? と、口にこそ出さないが思ったのも事実である。

その後もスーク(市場)を歩いていると、在イエメン日本人の主(ヌシ)のような人が
しきりに添乗員の立花さんと、わたしたちに聞こえないよう後ろで何かしら注意をしている。
聞こえてくるのはやはり「ツーリストポリス」「アームドポリス」といった穏やかならぬ単語である。
立花さんも、「あそこへ行くのは暫く、この一行が最後になるでしょうね」などと言っている。

ここでわたしは、実は、窮地に陥った。
なんだか、「やな予感」がしたのである。
こういう根拠のない予感ほど、厄介で、しかし的中するものである。
ひとり旅だったら、この根拠なき予感のせいだけで、シバーム行きを取り止めていただろう。
なぜならわたしにとって旅は、アドベンチャーではなく情操なのだから…。
とはいえシバーム行きは、まぎれもなくわたしがオーダーした行程のひとつであり、
行くのは全部で3人と団体行動な上、サナアからぴったり同行する通訳まですでに雇ってある。
そう簡単に、「やっぱ、やーめたっ」などというわけにもいかない。

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その日の晩は、翌日から通訳として同行する、アラビア名をもつ日本人イエメン研究者の方と
イエメン現地旅行社の社長と夕食をともにしたのだが、まるでブリーフィングそのもの。
過度な心配をしないようにと皆さん配慮してくれていたが、戦地に向かう兵士の心持ち。
韓国人が誘拐された事件は、事前に「48時間以内に外国人観光客を対象としたテロ攻撃をする」とのアルカイダからの声明が発表されていたこと。
その類の声明は、大使館等を通じて関係各所に飛び散るので、犠牲となった彼らも当然、
知っていながら行ったという無謀な状況であったであろうこと。
通訳のキクチさんも、当時イエメンにおり、この声明を大使館から受け取って、頼まれてもいないけれどサナアじゅうの日本人がいそうなホテルへ行って情報を流したこと。
なにかあればすぐに連絡をするし、現地では武器を携行したSPに日がな同行してもらえるよう手配してあること。
これだけ現地にコネクションがある状況なら、情報が入ってこなくて危機に直面するということは
まずありえないだろうということ…

聞けば聞くほど、「やな予感」を打ち消す要素のほうが圧倒的に多かったし、
同行のリツさんもその晩の話で安心をしたようだった。
やはり大使館の人間の反応を見て心配がってはいたが、わたしも「そりゃ、なにかあったときに『知ってました』じゃ済まないからねぇ」と言ったもののそれは別に見栄ではない。
ロジカルに考えれば、口から出たその言葉のほうがよほど判断力に長けている。
「やな予感がするです」だけで行程を変えるほど、わたしも右脳だけで生きてはいない。

が。その日の夕飯は、美味しかったことは覚えているが、味は覚えていない。
久しぶりに、水をやめて、炭酸を飲んだ。

や、もう。
とにかく、行くしかないのだ、と。

2009/11/26 11:28 | ■イエメン | No Comments

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