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2009/05/01

地球の舳先から vol.121
ベリーズ編 vol.3(全6回)

ようやくやってきたベリーズシティ。
グァテマラからの陸路、公称5時間は8時間半にて(まあ優秀)。
ちなみにいかにも首都のような名前だが、首都はベルモバン。
オーストラリアの首都がシドニーに思える、と同じ感じだろうか…。
港町かと思いきや、市街におろされる。
ドコっ?!バスを降りたらそこから船で40分、というはずなのだが…。
ぶつぶつ言いながらも、また当時の居住地・キューバにはないワッフルのお店を見つけ、食べる。
もうなんていうか、食べまくる。戦時中からタイムスリップしたセツコのように。
窓側に席を取ると、…ビルの隙間から、海が見えた。
こんな近代的な街中のすぐそこから船が出ているなんて、不思議。

ワッフルで胃を満たしたわたしは船着場へ。そう、ホント「船着場」といった風情のちいさな港。
夜行バスのチケット売り場&待合室のようなところで切符を買い、船を待つ。
…と、子鬼がやってきた。
身長はワタシよりすこし大きいが、体型が三角形。下にいくほど太っている(あ、人間ね)。
やたらデカいグラサンをして、アフロの髪をすもうとりさながらのチョンマゲに結い、
葉巻のようなモノをくわえ、ラスタカラーのシャツにはばっちりボブ・マーレーのイラストが。
「…絶対、クスリやってる…」と目をそらしたわたしに、なんとなにごとか子鬼が話しかけてきた。
英語恐怖症の上にベリーズは中南米の英語圏特有の訛りの強いローカルイングリッシュ。
しかも相手は子鬼である。わたしの緊張感は極限に振り切る。
「キーカーカーへ行くのか?」
…そーだけど、なんであんたにわたしの旅程を教える必要がっ?!
「船が出る。のれ」
…アンタ誰っ?!?!?!あたしをどうする気っ?!

でもなんかここ、チョットいっちゃってる国っぽいし、この子鬼こんなビジュアルして実はバイト君?
と思いながら目をそらしたまま子鬼についていくと、子鬼は信じられないくらいの小船(なんか金持ちの人とかが買ってるような、何人乗れるの?ってくらいのプライベートクルーズみたいなのに立ち乗りでみんなスシ詰めになっている)にわたしを押し込み、なんと操縦席に立ったのである。
わたしを最後の客として、猛烈なモーター音で離れていく岸を見送りながら、周囲の乗客に
「コ、コノ船ハ、キーカーカー ヘ、行キマスカ?」
「カレは、船ヲ、運転スル人デスカ?」としきりに片言すぎる英語で確認をする。
どうやら子鬼はわたしがキーカーカーまでの切符を買ったのを見ていて、船が出る前に呼びに来てくれたらしい。
タクシーの運ちゃんも、ビザ発給係のマッチョも、バスに乗り込んできた外貨商も、みんな近年まれに見る怪しさだったけど…
うーん。案外いい国だぞ、ベリーズ。
外見で判断しちゃいけないぞ、ベリーズ。

子鬼の操縦する小船はマングローブの林を抜けていく。
エメラルドグリーンでも、蒼い青でもない、強いていうなら蛍光水色のような見たことのない色の海。
30~40分もすると、小さな島の、小さな桟橋に着いた。
全長3キロ程度の細長い小島は、砂浜のまま。コンクリートに舗装された道路はいっさいない。
石油で走る四輪車もいない。ゴルフ場で見かけるキャリーカートみたいな車だけ。
砂浜の砂地に、木を打ち込み、それを柱として家を建てている。
砂浜に杭を打っただけのテーブルで、ケバブだのビールなどを飲む人々。
鉄鎖のなかのバスケットコートでは、さきほどの子鬼が仲間とバスケに興じている。むかし、小学生も低学年のころ、自宅ちかくの草生い茂る空き地を眺めて「ここを秘密の探検基地の森にするんだ」と思ったような、手作り感のある、ほんとうに永続的に暮らしている人がいるのだろうか、と思うような、なんというか現実感のない、そんな島。

甲板をあがると、島に一歩踏み入れる床板に、こんな引っかき傷でつくったメッセージがあった。
「Welcome To Caye Caulker.
 Here,No Shirts, No Shoes, No Problem」

わたしはいっぺんでこの島の雰囲気にあてられた。
海にいちばん近い2階建て(この島では高層だ)のコテージに部屋を取り、水着とパレオだけに着替えてからはだしのまま買い出しへ。
貝と砂だけをふみつぶして歩きながら、この島にごみをポイ捨てしたら絶対に誰か怪我すると思う。
売店で買ったビーチサンダルをはき、5リットルの水(この島では、水道の蛇口をひねると海水が出るのだ)を片方の肩にかかえて、落ちる夕日を眺めていた。
また子鬼とすれ違う。お互い、すでに顔見知りだ。なんと小さい島なのだろう。
世界にはまだこんな場所が、そしてこんな生活をしている人々がいる。

とてつもなく、不思議だった。

つづく

2009/05/01 11:08 | ■ベリーズ | No Comments

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