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2008/11/24

地球の舳先から vol.100
番外編

先週からお届けしている、世界の宿泊事情シリーズ。
大仰なシリーズ名の割に国が微妙すぎてあまり参考にならないとかの意見もちらほら。
続きを書こうと思っていたのですが、この連載もとうとう今回で100回目。
という節目なもので、今回はシリーズをお休みして旅について書きたいと思います。

また、JunkStage編集部の桃生さんという方から
「ユウさんの文章は雑誌の『Number』みたいですね」と言われました。
これは初めてではなく、よくNumberっぽいと言われるので褒め言葉だと勝手に受け取っていたら
「このストイックなまでに小見出しを排除した堅すぎる文章…!(怒)」ということらしいので
今日はフランクに、そして小見出しなど使って書いてみます、ハイ。
初めての試みなので、多分に逆効果と思いますが、周年行事と思ってご容赦ください。

■地球はホントに丸いのか?■

わたしには、信じられないことが沢山あります。いや、沢山でてくるようになった、という方が正しいか。
たとえばわたしは月面着陸の映像はいまだに水中で撮った合成映像だと思っているし、地球外に
星やら惑星やらがあるなんて信じていません。だいたい、ナンなんだよ、「何億光年」とか。
…などと言ったらJunkに新しく参加された天文学者の阿部さんに罵倒されそうですが、
なんかそういう「概念」が、よくわからないし信じられないのです。
それはもしかしたら、貧しかったり寂しかったりすることなのかもしれません。
ついでに、というかこちらが本題なのですが、こんだけ旅をしても「飛行機」が信じられません。
だいたい鉄のカタマリが空を飛ぶとか、普通に考えてあり得なくないですか。
十何時間飛行機に乗ったら気温が数十度違う異国の地にいて、朝が夜になっているなんて、
「何億光年」くらいいかがわしいと思いませんか。わたしはそう思います。
着陸態勢に入り、あり得ない色の海なんかが見えてくると、腹さえたちます。
おまけにそこでは、人々が違う顔をして違う言葉を話し、違う生活をしているのです。ばかりか、
おんなじ生物のくせに何万年も戦争を繰り返し殺し合ってばかりいるなんて、進化論に反してます。
きっとこの世界は、実はどらえもんのような人(ネコだっけ)が支配していて、
「空を越えた」ことにして、違う世界との橋渡しを4次元でしているのだと思います。
そう言われたほうがよっぽど、納得できると思いませんか。
ただ、旅に出るたびに思うのです。
この、落差というだけではない世界のここまでの国による差は、
4次元ポケットでも持ち出さないと不条理すぎるし理解できないし、意味がわからない。
何よりそれをこの目でみた自分が“楽になれない”んです。

■内政干渉という言葉■

わたしは最近、内政干渉という言葉をおぼえました。
わたしは日本人です。実はほんの500ccだけイタリア人の血が混じっていたりするのですが、
ガイジン顔の母親に対し皇太子様みたいな父親(※あくまで顔の話)に似て
「ワー可哀想ユウちゃんはお父さんに似ちゃってー」と物心つく前から言われて育ったわたしは
「なんでぇ、ガイジンかぶれしやがってよぉ」と思いながら育った日本人なのです。
自衛隊は尊敬していますし国民の休日には国旗を出しますが右翼ではありません。家が軍隊なだけです。
生まれも育ちも日本人ですから、海外へ行くといろいろと考えます。
北朝鮮で怒ったりとか、インドで同情したりとか、東ティモールですさんだりとか、します。
でもおそらくそういう感情の機微すら、自分の心の弱さなのではとある日思い当たったのです。
現実を受け入れられない、肯定できない。だから怒ったり泣いたりする。
それは理解の放棄にほかならないのではないのか。そう思ったのです。
そして、海外へ行って怒ったり泣いたりするんだったら、行かないほうがいい、と思ったのです。
でもわたしの足は止まりませんでしたから、代わりに怒ったり泣いたりしないことにしました。
存在の耐え難い不信さのカタマリである「飛行機」という物体に乗って、数時間すれば別世界。
そうやって海外を転々とするうちに、頑張らなくても怒ったり泣いたりしたくならなくなりました。
思考を停止させることを覚えたのです。かんがえない。見る。おしまい。
かわりに、ノートを大量に消費するようになりました。そこにも事実しか書き留められていません。
「2週間前、爆撃があった。人がたくさん死んだ。○○○さんのおじさんも死んだ。」とか、
「北朝鮮の労働党像前のマンションの建物名は、『百戦百勝』。」とか。
考えるのは、日本に帰ってからでいい。その国の地を踏みながら考えるとろくなことないんです。
だって、勝手すぎるじゃないですか。なんとでも言えるんです。口でなら。
間違ってるとかひどいとか、人権侵害だとか行き倒れるとか。
おまえに言われたかねーよ、って話ですよね。ブッシュかよ、って話です。
そして口で何を言おうと、自分の心がすっきりするだけで、なんにもなりません。
だから、なんにも言わないことにしました。言わないし、思考も停止する。目だけ動く。
そしたらそれを「内政不干渉」っていうんだ、とある人に最近聞きました。
ただ、そこで何かを感じ、怒り、泣く人が、良くも悪くもきっと世界を変えていくんだと思います。
わたしはただの傍観者です。それ以上はなにもできない、と思っています。それがわたしなのだとも。

■世界に関する逸話■

国民性という言葉があります。
持って生まれたものではないと思いますが、環境を含めればたしかに大いに影響を及ぼすでしょう。
それはわたしが「ワー可哀想ユウちゃんはお父さんに似ちゃってー」と言われながら
ガイジン顔の母親と、完全にガイジンな祖母のもとで育てられて歪んだのとおなじようなもんです。
“タイタニック”の話があります。
船が沈みそうな船長は、なんとかして乗客を避難ボートに乗せて脱出させなければいけない。
対アメリカ人には「生き残ったらヒーローになれるぞ!」と言い、対ドイツ人には「法律で決っているから逃げて下さい」と言い、対日本人には「みんなが逃げてるから逃げて!」と言う。
“一度死んだおじいさん”という話もあります。
おじいさんが死んで天国へ行ったら、天国にも地球があり、そこでも国が分かれていたけれどもそれぞれの国が自分の得意なことをやっていた。
そこではアメリカが政治をし、フランスが料理をし、ドイツが警察をし、日本はといえば下僕だった。
悲しんだおじいさんは地獄へ行ってみたところ、そこでは逆に最悪の配置がされていた。
イタリアが警察をし、イギリスが料理をし、日本は何をしていたかというと政治だった。
まあこんな話が日本で多く語られることからもわかるように、日本人は愛国心がありません。
サッカーの試合などで日本人が血管を浮かび上がらせて「ニッポン」と繰り返し君が代を胸に手を当てて熱唱している姿を見たりすると、逆にどうしちゃったんだとか思いますよね。
戦後「日本は駄目で最悪で醜悪」とあれだけ繰り返されればそれも当然だと思います。
否定されて育てば、卑屈になる。作家の宮本輝は著書『草原の椅子』のなかでこう書いています。
 ―たしかに日本人は他の国々の人々と比べると、なにかにつけて狭量だ。
  他人の得た賛辞や幸運に対して嫉妬深く、調子に乗ると分相応な振る舞いから外れて尊大になる。
  悪しき権力や暴力に立ち向かう勇気が欠落していて、すぐに徒労を組みたがる。
  長期的展望にたつことが出来ず、短絡的に突き進んですぐに捨て鉢になる。
確かにそうです。書いていていやになるくらいその通りなので、ここまででやめました。
自分を自慢したい時、そうはいわず真逆のタイプを持ってきてその人を批判する、とか。陰湿極まりない。
パリに何十年も住んでいる人が、こんなことを言っていたのを覚えています。
「日本人はなんでそんなに胸がないの? ってパリジェンヌに言われたら、
 相手のおなかを指差して『妊娠してないからよ』って返すくらいでないと!」

■旅を続けます。■

さて、ここまで書きましたがそれでもわたしは戦闘能力を有しない日本人です。
きっとだからこそ次の舳先を求めて旅をつづけるのでしょう。
どこかが欠落していない人間はものなんか書かない、といつだか言って怒られたことがありますが
自らの国に誇りを持ち満足していれば旅になんか出ないのではないでしょうか。
わたしは仕事で旅をしたくありません。いえ、仕事は「出張」であって旅ではないのです。
ときになにかを埋めるため、ときになにかを忘れるために、わたしはいかがわしい「飛行機」に乗ります。
旅に出て自由になれるとは思いません。むしろ水分が抜けて帰ってくる場合が多いです。
それでもわたしは、次の舳先をさがしています。
いまは「飛行機」のせいにしているけれども、足と船で一周したとしてもやっぱりわからないであろう
“地球の丸さ”の不思議。
その不思議を解明したくて旅に出ても、より一層の不思議を持って帰ることになるのが毎度のオチです。
この終わりなき旅を、いったいいつまで続けるのでしょう。
そうそう、わたしの好物はフライドポテトです。2日に1回はフライドポテトを食べますが
フライドポテトというのはどこの国にもあって尚且つあまり味の変わらないものです。
世界を旅していたら、国を変わっても変わらないものも見えてきます。
それは売春だったり戦争だったりしますが、フライドポテトもそのひとつです。
国によって違うからこそいいものもあります。その代表選手はビールです。
わたしの旅のいちばんの楽しみのひとつは、その地国産のビールを飲むことです。

つまりわたしはやっぱり、戦闘能力のない日本人なのです。

2008/11/24 03:08 | □番外編 | No Comments

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Comment & Trackback

JunkStageで僕の講演会を開催して頂ければ、地球の丸さだけではなく、少なくとも太陽系の存在と大きさぐらいは納得して頂けるんじゃないかと思います。ユウさんには難しそうですが。。ちなみに、2009年は「世界天文年」です。
http://www.astronomy2009.jp/

>SOLAさま
ひっそり更新したはずがさっそくコメントを頂きひやひやしてます!笑
来年のJunkのイベントでは是非講演会、組み込ませて頂きたいです。
8月だと思いますが・・・ご帰国のご予定は・・・。

Posted at 2008.11.28 11:45 PM by admin
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