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2014/01/24

地球の舳先から vol.305
ミャンマー編 vol.3

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マンダレーに着くと、空港のカウンターでタクシーの手配をしてもらった。
手数料が乗っかるのは当たり前だが、回ってほしい場所があったし、その間
荷物を車に預けたまま何時間か待っていて欲しかったので安全な業者がよかったのだ。

わたしが向かったのはサガインという地。
マンダレー空港は市街地から公共の交通機関がないにも関わらずその距離40kmという
ヤケクソに遠いところにあり、サガインは直線距離でその中間地点くらいにある。
仏教修行の中心地で、その関係からか外国人規制区域でもある。
イラワジ川を渡る大きな陸橋から見える、山に転々と輝く大きな仏塔や僧院が並ぶ光景が
まさに圧巻の一言。一帯自体が神々しいというか、ちょっと表現しきれないオーラがある。

仏教の修行をしに行ったわけもなく、目的はジャパンハートのワッチェ慈善病院
ジャパンハートというのは日本人医師吉岡秀人氏が始め今でも陣頭指揮を取る
世界で無償の医療提供を行う組織で、吉岡医師はもう長いことミャンマーで活動している。
偏差値30から国立医学部に合格したとき、「神と取り引きをした」と感じたらしく
医療を受けられない人に生涯、医療を提供し続けていくことを心に決めたそうだ。
NHKの情熱大陸でも複数回取り上げられているので、ご存知の方も多いと思う。

友人たちはよく知っていることだが、わたしは医療の道を志していて、
それはいまさら自分がこの手で切ったり貼ったりという医療では勿論無いのだが
ぜひ見学をしたいと思っていた。ちょうど集中して手術を行う「ミッション期間」
が明けた日取りだったこともあり、事前に日本の事務局に相談をして許可を得た。

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(入院病棟。家族が多く賑わっている)

野戦病院のようなところを想像していたのだが、空気が暖かくて驚く。
スタッフ宿舎、病棟、ナースステーション、果ては手術室の中まで案内をして頂いた。
2004年から、お坊さんの病院の2階部分を間借りという形で使わせてもらっているという。
日本からは医師1人、看護士4人が常駐。それとは別に、月2回の「ミッション期間」に
臨時ボランティアという形で医師を呼び、1日15~20件の手術をこなす。
外来は1日20~80件で大人も子供も無料。手術は18歳以下が治療費含めすべて無料。

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(手術室。最新鋭の機械を持ち込むのではなく、ミャンマーで持続可能なやり方を探っていくのがジャパンハートのポリシーだ。ミャンマー人看護助手の育成も行っている)

日本だと完治しなければ文句すら言われるが、医療がまったく身近でないここでは
「日本人の先生に見てもらった」というだけで感激で、少しでもよくなれば喜ばれる。
何日も何日もかけてここまでやってくる人も多いという。
もともと、生活に支障が出るまで放っておいてしまうので簡単な病気もすごい状態に
なってからやってくるし、入院となれば親戚中で来て住み込むこともあるというミャンマー人。
病院ながら家族に囲まれ、下階にはそんな家族が洗濯や炊事をするスペースも用意されている。

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炊事スペースのすぐ横のお茶屋さんで、ラペイエというミャンマー流紅茶(コンデンスミルクを極限まで入れて溶かした非常に甘いミルクティー)を飲みながら、スタッフの女性に話を聞いた。
彼女は大学生で、インターンで1年間ここへ来ており、元々は医療関連とは無縁で
NGOやNPOの活動に興味があったというのだが、ここでは日本で言う看護助手以上の
仕事もしているので、関係ない道に進むのも勿体無いような気がする、と言っていた。

自分より10歳若い彼女に、なんでもできるよなあ、という通り一遍の感想を抱きつつ、
その実、意外といくつになってもなんでもできるということも分かっている自分に気付く。
つまらない大人は、いつだっていろんなものを諦める口実を探しているだけなのだ。

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(ダウン症の男児とその両親。)

物事にはなんでも賛否両論があると思う。
たとえばミャンマーで殺害された日本人ジャーナリストは観光ビザで入国していた。
当時ジャーナリストビザなんて下りるわけもなくその行為は業界的には当然だったのだろうが、そのことによってミャンマーで活動する日本のNGOやNPOは締め出された。
ジャパンハートも例外ではなく、そのために医療を提供できない時期が続いたという。
誰かの「正義」は、所詮その人だけの正義でしかない。

わたしもまた、誰かの正義に批評を投げかけさせることが目的ではないので
お聞きした話の多くはここで晒さずにわたしの胸にしまっておく。
しかしそこで無償で働く日本人の真っ直ぐな目と、日の丸から模したのであろう
赤と白のユニフォームで誇りに輝く姿、
そして穏やかで満足げな現地の患者さんの姿は強く印象に残った。

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つづく

2014/01/24 08:00 | ■ミャンマー | No Comments

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