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2013/05/27

地球の舳先から vol.277
イスラエル編 vol.12(全14回)

出国の日。残したイベントは軍事博物館だけである。
これは、空港と旧市街の間にあるので、最終日に立ち寄ることにしていた。
ガイド兼ドライバーのお喋りのおじいちゃんともこれでお別れだ。

朝、5つ星ホテルで(←貧乏人はこれを強調する)
やはり超豪華な朝食を取って外へ出ると、とんでもない空の色に気付いた。
「嵐が来る」と彼は言った。
「君が来る前も、1週間くらいずっと大雨だったんだ。ラッキーだったね」
最後に見たいところはないか、と言われたので、オリーブ山に連れて行ってもらった。
ここからは、エルサレム旧市街が見渡せる。(冒頭の写真)
いわゆるイスラエルのガイドブックの表紙なんかに使われる写真。

…なのだが、とにかく天気が悪いので、光景がおどろおどろしい…。
「最後の審判」ゆかりの地なので、手前側はすべて墓、墓、墓。
ちなみに第一次中東戦争でヨルダンが墓地をすべてぶっ壊したらしい。
どいつもこいつもである。

ちなみにもうひとつの山、スコープス山にはヘブライ大学がある。
ガイドはそこの出身だったらしい。思った通りの超エリートだった。
「大学の時に、学食で食事をしてたらね、3つくらい隣に女の子が座ったんだ。
 で、君が持っているみたいなそういうやつ、小さいバッグをテーブルに置いて」
…話の続きは、書くまでもない。
「小さいバッグ」は爆発し、彼はそれから一生、難聴を患うことになる。
イスラエルでは、どこで何が起きるかわからない、と彼は言った。

戦争が日常で起きるものではない、というか、日常が戦場になる、というか、
残酷なのは、ある日どこかの路線バスが爆発しても
またそのバスに乗って通勤しなければならない人たちがいるという事。
たとえ爆弾を仕掛けたやつが捕まったとしても、
事態はつねに、ゴールのない未解決事件。

あんなに混んでいた道路も、土曜日のこの日は数えるほどしか車が走っていない。
思ったよりずっと早く目当ての博物館「ラトルン戦車博物館」へ着いた。
わたしは外国へ行くと軍事博物館に行くのが趣味なのだが、なぜか
イランでもラオスでも臨時休館だった(ただし、いずれも屋外の戦車を見物して楽しんだ)。
ここは幸い空いていて、まず問答無用に悲劇のビデオを見せられるのだが
やはりメインは屋外に無造作に展示されまくっている戦車たちであろう。

 
(そんなとこに置かんでも、というのもある。)

ちなみに、この場所も第一次中東戦争の激戦地で、警察要塞だったらしい。
イスラエルはアメリカの莫大な”支援”を受けていたし、ゴラン高原でも見たように、アラブの色々な国と戦争をしては戦車を捕捉したので、実に色々な戦車がある、ということらしい。
イランの軍事博物館でも、イラク戦争の「戦利品」が展示してあったがその比でない。
そして、戦死者の名を刻んだ壁には、クリスマスの名残か、リースが添えられていた。

ここからすぐのところに、同じ地名を冠した「ラトルン修道院」がある。
時間は余っていたが、異教徒がそんなところへ顔を出しては失礼なので、…
「ワインが有名だ、行くか」 「行く」

及び腰で教会内にも立ち寄ったが、わたしが経験したいちばんの静寂だった。
緑に包まれた敷地内には確かに何か独特のオーラがある。
外で出店を広げている自称カザフスタン人に中国茶を売りつけられ
(なんで買ったのかわからない。なにかがとりついたのだと思う)
修道院の公式ショップで、すこしだけワインを覚えたわたしはうんうん唸りながら1本選んだ。
これで荷造りはやりなおしだが、どうせ空港でカバンの中身を
すべてひっちゃかめっちゃかにされるので同じことである。

こうしてわたしは空港へ向かう車に乗り込んだ。
安全で、おかしな旅だった。すこし空を見上げて、思わず「ふぅ」と溜息らしきものが出る。

…これで終わったらつまらないだろうから、
ほぼ最終回へつづく。

2013/05/27 06:36 | ■イスラエル | No Comments

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