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2013/05/17

地球の舳先から vol.276
イスラエル編 vol.11(全14回)

イスラエルに「国教」はない。
キリスト教徒もイスラム教徒もいるから、とかいうより
「近代国家として政教分離は原則だ」ということらしい。
…アメリカ的ですね。(←また言っている)

しかし国の制度やローカルルールで、宗教の影響を色濃く受けるのは当然。
「シャバット」いわゆる「安息日」もそうで、
金曜日の日没から土曜日の日没まで、労働しちゃならないのがユダヤ教。
ちなみになぜ2日にまたがるのかと思って調べたところ、
旧約聖書上「日」は24時ではなく夕方で区切るため、らしい。

シャバットになるとエレベーターが各階停止になったり(ボタンを押すという行動がダメ)
厳格な人たちは動いている救急車に投石したりするとか…(都市伝説であってほしい。
そんな宗教に果たして救いがあるのか?)

しかしユダヤ教は国教ではないし、もちろん強制でもないし、
どこぞの国のように宗教警察が徘徊して風紀指導などをしているわけでもない。
だから、別にシャバットに出歩いていたところで怒られたりはしない。

が、安息日には公共交通機関はストップする。
…わたしはこれを、本気にしていなかった。
金曜日の移動を避ける行程にはしていたが、その実「いやいやいや」くらいに思っていたのである。
しかし万が一があってはよくないので初日に時刻表をチェックしたところ
本当に1本も電車がない。ガチなのである。

タクシーは白目をむくほど高価だし、わたしはエルサレム旧市街から
3~4キロ離れた小高い丘の上のホテルを取って、ゆっくり籠ろうと思っていた。
最後の晩の贅沢で、このあたりでいちばんいい5つ星ホテルだったのだが
さらに、オーバーブッキングで部屋はアップグレードされており、
バルコニーからはシャバットを迎えた旧市街のようすが綺麗に見えた。(冒頭の写真)

さて最後の夜はいいホテルで食事をして旅に思いを馳せながらゆっくり…
などと思っていたのだが、意外と光の消えない向こうの街を見ていたら、
安息日の嘆きの壁に行ってみたくなってしまった。
ホテルに付けたタクシーと交渉してみたが交渉は一方的に決裂し(高すぎ)
「ようし、シャバットしよう!」ということで(正確には意味が違うが)
わたしは一路、旧市街を目指して歩きはじめた。

道はほとんどまっすぐだし、路面電車の線路をなぞっていけば間違いは無い。
スタンドバイミー気分で線路の上を歩き、たどりついた旧市街は、
意外なことにまさに「花金」状態で盛り上がりまくっていた。
嘆きの壁には、なにやら円陣を組んで嬌声を発している集団がそこかしこに。
完全に祭り状態である。安息日の名が泣く。
そして、我関せずで壁に向かって祈りをつぶやき続ける黒服のユダヤ教徒正統派…
さすがに、少し同情した。

旧市街を一周し、タクシーの客引きを振り切ってまた歩いてホテルに戻った。

ホテルの食事は当然のごとく豊富で、サラダだけでも20種類以上ある。
イスラエル産の赤ワインをもらって、ほとんど無事に済んだ旅の最後の安全を祈る。
となりのテーブルでは、今日エルサレム入りしたらしいツアー客の集団が
神妙な顔をしてガイドの説明に静かに耳を傾けていた。

一夜明けたら、日本へ帰る。最後の夜だった。

つづく

2013/05/17 05:28 | ■イスラエル | No Comments

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