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地球の舳先から vol.259
岡山・山里 編 vol.2(全4回)
旅の準備で脱線し過ぎた。改めて岡山編を振り返りたいと思う。
JunkStageの面々で、百姓見習いの川口さんのお宅にお邪魔したのは先月頭。
岡山、倉敷を観光し(といってもスーパー銭湯と地ビール飲み比べ)、
山間の谷に入ったのはちょうどおやつの時間頃だった。
最寄りの駅(かつては歓楽街だったらしく、有人改札を期待していた
わたしはそのモダンな駅舎に若干の失望を覚えた)から約30分、
タクシーに揺られて、山を越え、谷間の集落へ着く。
川口さんと、奥さまが迎えてくれた。大勢で押し掛けてしまったゆえ、畳の客間だけでなく
急遽ご夫婦のお部屋をアレンジしてスペースを作ってくださったお部屋に通される。
なんだか、小さい時によく訪れた田舎のおばあちゃんの家のような雰囲気。
ここから、「食べるための壮絶な戦い」が始まった。
なにも、女7人+αで、食べ物を取り合った、という話ではない。
「畑から食卓まで」の、普段我々がスキップしているプロセスを体験するのだ。
まずは、「籾摺り」。くわしくは こちらの川口さんの記事をご参照願いたいが、乱暴に要約すると
「刈ったままの稲」を籾殻して、あのお馴染のむき身の姿にする作業である。
すりばちですって、もみがらを吹き飛ばす。
これを延々繰り返し、片手にほんのひと盛りの米がようやく出来上がる。
吹きすぎて飛んで行った米を拾う者、すりばちを押さえる役など、自然に自助精神が働く(笑)。
そのうち、某お嬢が「わたし、これ、ハマった」と言い始め、夜が更け真っ暗になってもまだ、外で籾摺りをしていた。
川口さんから、今夜の夕食のメニューが発表される。
・前菜:瀬戸内の海の幸のカルパッチョ/カボチャのマリネ ミント風味
・サラダ:小エビとカボチャ、サツマイモのマスタード和え/豆のサラダ、小麦入り
・茹で渡りガニ
・小エビとネブト唐揚げ(ネブトはこのあたりが産地の小さい魚)
・パスタ:アンチョビと間引き人参、大根のカペリーニ/渡りガニのトマトソースリングイネ
・セコンド:丸鶏の生姜煮、間引き菜と大根添え
・ドルチェ:カボチャと小豆のタルト
この、どこの格式高いイタリアンレストランか、と思うようなメニューを、
肉・魚類以外はすべて、川口さんの畑のものから頂いて作るのである。もちろん、収穫から。
それぞれ、「野菜班」「魚班」「火起こし班」に分かれ、野菜班は籠と鎌を手に畑へ。
実に色々なものが植えられている。稲から、豆類、野菜、ハーブ、枝豆や生姜まで。
そして、「間引き菜」といって、人参や大根を育てる間、間引きを兼ねてその若い菜っ葉を
食べるというのには驚いた。これがまたサイズ的にも、サラダにうってつけなのだ。
こうして収穫してきた野菜がこちら。
サラダのドレッシングは、自家製マスタードとヨーグルトを和える。
この発想もなかったのだが、オイリーになりがちなドレッシングを非常にヘルシーに
押さえられるし、酸味がパリっと効いて美味しいので、帰ってからも私の十八番となった。
台所では川口さんが黙々と魚をさばき、魚班がそれを刺身用に切ったり
揚げ物の下準備をしたりする。
とことんまでオーガニックな川口家は、揚げものもエキストラバージンオリーブオイル!
なんとも豪勢な話だが、洗い物をして思ったのだが、この油はほんとうにべたつかない。
川口家では、洗い物は基本的にお湯で、ときにミカン水を使うくらいのものなのだという。
外にはかまども設置されており、火起こし部隊が時間をかけてようやく火を起こした。
大きな寸胴で、鶏まるごとに豆やもち米、ぎんなんなどを詰めた蔘鷄湯を蒸す。
普通の家庭用オーブントースターの中ではパンが焼かれている。
この記事の冒頭写真のパンは、川口家でふつうのトースターで焼いたもの。驚き!
料理が好きという川口さんに「民宿でもやったらどうか」と提案してみたのだが、
「自分たちが生きてくのと、商売にするのじゃ全然違ってね~」との事。
そういえば川口さんは、「(プロの)農家」ではなくあくまで「百姓」という点にもこだわっていた。
ようやく、なにもないところから原材料(というか「畑」)が「料理」の形になって
見えてきた頃は、結構に疲れ切っていた(笑)。
しかし手をかけてみんなで作った料理の味は抜群である。
川口さんが贔屓にしているという芦屋のお店から取り寄せたワインも大変美味しく、
産地もあまりお目にかからないものも多く、どんどんワインが空いて行く(笑)。
また、日本酒も1升空けたのだが、どれも品質がいいのか、ちゃんぽんの割に悪酔いしない。
黙々と作業を続けていたので、「いまさら」ながら自己紹介が始まり、
川口さんの奥さまが、今回参加した女子3名の大学の先輩ということも判明し
また、以前は相当な僻地トラベラーだったということで大いに盛り上がった夜は更けていった。
お風呂を交代で使うのも、林間学校的。
こうして、「食べること」に時間のほぼすべてを使い、良い疲労で床についたのは
いつもよりずっと早い0時とすこし過ぎのことだった。
つづく
[…] 手作業で営まれる食卓を私も昨年体験させていただきましたが、その過程は食の有難さを痛感すると同時に「これ毎日とか無理…!」と悲鳴をあげそうになるほどのストイックさでした。 […]
[…] yuuさんが書いて下さっていましたが、皆さん、夕食の準備が終わった頃には将に「疲れ切って」いました。 直接の原因は、以下の3つです。 […]