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モンゴル旅行記 vol.2(全5回)
羽田から発つわたしの乗る飛行機が、1週間前にビジネスクラスに格上げとなった。
なんでも、予約していた首都ウランバートルで一番いいホテルが急遽取れなくなり、
1ランク下のホテルになってしまったので、それのお詫びですということだった。
「ちょっと事情が」を繰り返す旅行代理店スタッフは電話口でしつこいくらい平謝りだったが、
ホテルなんて、刺す虫が出なくて窓にガラスがはまってりゃいいのだ(案外このハードルが高い)。
むしろ、ビジネスクラスに乗れるほうが嬉しかった。
出発前は当然知らされないこの「ちょっとした事情」を、出発日にわたしは知ることになる。
新聞の紙面を飾ったそのニュースは、「小泉首相ウランバートルへ」。
当時首相だった小泉氏の電撃訪問。
当然、首相様とその御一行に、「ウランバートルで一番いいホテル」は占拠されたのだ。
そりゃ、しかたない。
なんだか、胡錦濤中国国家主席と同じ日に北朝鮮入りしたり、
小泉当時首相と同じ日にモンゴル入りしたりと、わたしの旅はいつも政治くさい。
生まれてはじめてビジネスクラスに乗ったわたしは、空港からそわそわそわそわ。
180度に倒れるドーム型の座席に、ちゃんとカラフェで出てくるワイン。
しかし高級すぎるおかげで、いつもエコノミーで出されるちいさな瓶の白ワインを1本
くすねてくるという蛮行はこの日は身を隠すことになった。
手元のボタンで背中や足の高さを調節し、あとは爆睡あるのみ。
晩に着いて1泊し、ウランバートルを出発した。
モンゴルといえど、都会なところは都会なもの。
いきなり空と草原とゲルしかない、というわけではないのだ、もちろん。
バスに乗って、だんだんと首都を離れてゆく。
だんだんと建物がなくなり、ついに視界をふさぐものがなにもなくなる。
たまに建ったゲルがお土産物屋になっていたりするが、それも明日にはここにはないかもしれない。
草原のなかに、石の積み上げられた小さな山を発見した。
地元の人々か、ジェスチャーで、その小山に石を投げろと言っている。
石を投げて、その小山のまわりを何回か回る。
どうやら、なにか旅の安全祈願的なならわしらしい、と雰囲気だけで知る。
鞍もつけていない馬を、まだすごく小さな男の子が後ろに妹を乗せて操る。
カメラを構えると、照れくさそうに、でも離れた所にいる友達を嬉しそうに呼び、
一緒に写真におさまった。
ちなみにモンゴルで移動に使われている馬は、競走馬のような外見ではない。
背丈はおとなの男性が立ったのと同じかすこし小さいくらいのもので、足もごつごつして短い。
そう、「馬」というよりも「ウマ」という感じだ。
のちに、このウマだからこそ乗っても安定感があって怖くないことを知るのだが、
競走馬のような馬に乗ると勝手に妄想を膨らませていたわたしは
長い足にも長い首にも切れ目にもさらさらのたてがみ(?)にも程遠いウマ達を見て
ちょっぴりガッカリした。失礼な話である。
つづく