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2012/03/12

地球の舳先から vol.229
マダガスカル編 vol.6(全8回)

さて、成田の地をほとんど定刻に踏む頃には、
わたしは今回の旅を心のなかで随分整理し終えていた。

たぶん、いろんな難しいことを考えたくなかったのだ。
わたしは旅をするとき、普段は、いろんな難しいことを考えたがる。
活字になるのは一部、とわかってはいるが、勉強もする。政治、宗教、戦争、人種。
そんな、普段の旅のスタイルのテンションには、どうしてもならなかった。

ひとつには、自分が311を引きずっていて、もうひとつには、世界の側も動きすぎていた。
思えば2011年という年は、結構すさまじいものがあった。
わたしが、某SNSの日記やtwitter・Facebookなどで取り上げたものだけでも、これだけある。

1月 ジャスミン革命 米露原子力協定 尖閣衝突ビデオ流出
2月 エジプト革命 ニュージーランド大地震  タイ-カンボジア国境紛争 リビアで無差別空爆
3月 東日本大震災 福島第一原子力発電所事故
4月 アメリカ巨大竜巻 仏軍・国連がコートジボワール軍事介入
5月 ウサマ・ビンラディン死去
6月 ギリシャ財政危機 NATOがリビア空爆 米軍がイエメン南部空爆 
7月 南スーダン共和国独立 インドムンバイ連続爆破テロ ノルウェー爆破・銃乱射連続テロ 
8月 北朝鮮が延坪島砲撃 英国ロンドンでデモ イスラエルがガザ空爆 
    パキスタン・アフガニスタンで自爆テロ事件 ナイジェリアで爆破テロ事件 
9月 イスラエルで史上最大デモ インド首都で爆弾テロ 
10月 リビア・カダフィ大佐死去 タイ洪水 トルコ東部大地震 ウォール街デモ 
11月 ユーロ危機 ナイジェリア北東部で連続テロ事件 エジプト暫定内閣総辞職表明 
    イラク南部で連続爆弾テロ事件 米国がパキスタン誤爆 クウェート・ナセル内閣総辞職
12月 北朝鮮金正日総書記死去 イエメン挙国一致内閣発足  

何なのだろうか。地球が丸ごと呪われているようなこの状況は。
なかでも311の影響は大きく、東京から動かなかったわたしでさえ心身の疲労は澱のように溜まり、しかしいちいち動じることもゆるされないようなひりひりした圧力に、日々晒されていた、そんな気がする。
それでも。いや、「だからこそ」だったのかもしれない、
たぶん、わたしはもう一度「What a  beautiful world」と叫びたかったのである。
…地球の裏側で。 

わたしがマダガスカルから持ち帰ったものは、
コルカタで感じたような人の生きる逞しさでも、
真冬のフィンランドで感じたような自然の威権でもない。
ただ、太陽がべらぼうに暑くて、夜になると空にありったけの星が見えて、
人や動物や植物があたりまえに生きていながら、一方で私有地に動物を囲って保護区としたり、
中国のプランテーション建設で乾燥地帯の植物が根腐れしたりする、
それこそ必然的な現実でもあった。

地球に、無理を押しているのかもしれない。いや、間違いなく押している。
しかし、太古の原始に還ることが正義なわけでもなかろう。
わたしたちは生きていく以上、前を、上を、目指し続ける宿命にあるのだ。
その中で守れるものを守り、捨てるものを捨てていく。
それを「地球の劣化」と断罪することが、いったい誰にできるだろう?

それでも地球は廻るのだ。
そして、わたしたちは生き続けて、もしくは、生を繋いでいく。
この生き辛い(ろくでもなくはない)、素晴らしき世界を。

…いい旅だったな。
というかこのタイミングで、するべき類の旅だったのだ。
衝動は、いつだって必然。

外気温2度の成田に、フレンチスリーブの薄いカットソー1枚で降りた。
上着と自宅の鍵を入れたスーツケースはこの日ついぞ帰って来ず
わたしはマダガスカル旅の、予想外な最終ラウンドを演じることになるのだった…。

おわり。

2012/03/12 07:00 | ■マダガスカル | No Comments

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